褒められてニマニマ
しばらく塔を登ったあと、休憩タイムとなった。
ディヴァリアとニシカはお互いに競い合い、ぜぇはぁと呼吸を乱しながら倒れている。
まぁ、醜い争いだが道中は楽になるし、撮れ高的にもオッケーだろう。
女性二人が息を乱してるって、雰囲気的にちょっとエッチぃし。
そんな中、渋い声で話しかけられた。
「ヤマダ様、ご挨拶が遅れました。わたくし、執事長のシルバと申します。以後、お見知りおきくださいませ」
「あ、ご丁寧にどうも。クズカメラのヤマダです」
それはいつの間にかニシカの側にいたCランクサポート種族〝プチヨロイ〟だった。
名前の通り小さい鎧姿のカメラ機能を備えた種族……というか、ゆるキャラのような頭身をした姿と言った方がわかりやすいだろうか。
成人男性の膝下くらいの可愛いサイズで、二頭身の黄金フルフェイスヘルメットの奥には眼光だけが見えるのだが、ゆるキャラっぽいので迫力はない。
「俺の後釜としてニシカのサポーターをしているのか? 大変だな……頑張れよ……」
「ハハハ、正直いつも爆風に巻き込まれるので大変ですな」
たぶん、爆風に巻き込んでも平気そうな頑丈さで選ばれたのだろう。
執事長と名乗ってそれっぽいのは、ニシカがガチのお姫様というのもありそうだ。
「爆風に関してはわたくしが死にそうになるだけで済むのですが」
「……死んでなくてよかったな」
「ヤマダ様だったら~、というのろけ話を毎日聞かされるのだけは耳タコですな」
「ん? のろけ話……?」
何かよくわからないことを言われた気がしたので、深掘りしようと思ったのだが――突如ガンハンマーをぶん回してきた絶叫ニシカによって遮られた。
「わーわー!! 急にどうしたのかなぁぁぁあ、シルバぁぁぁああ!!」
「おっと、失礼。鳩行為をしてしまいまし……ぐえぁっ!?」
シルバはガンハンマーによって飛ばされた。
頑丈そうな鎧なので平気だろう、たぶん。
ニシカは気まずそうにしながらポツリポツリと呟いてくる。
「えーっと……ヤマダ……久しぶり……」
「急にどうした」
「いや、だってさ、ちゃんと二人きりじゃなかったし……」
口調が完全にオフモードなのだが、それはそれで配信的に面白いのでカメラが回っていることは黙っておこう。
そんなひどい! と思うリスナーはいないはずだ。
ニシカの素は大体が知っているし。
「あれから元気にしてたか?」
「うん……サポート種族もシルバを選んで、暇を見つけては配信してるし……」
「そうだな、結構配信してるしな」
「なっ!? 見てるの!? 私の配信を!?」
「フツーに見てる」
ニシカは頬を赤らめて、両手で顔を覆い隠してしまった。
そんなに恥ずかしいのだろうか。
それと同時に視界の隅にディヴァリアがジト目を向けてきているのも見えたが、そちらは気が付かなかったことにしよう怖い。
「あの、その……私の配信はどう……? 面白い……?」
「いいんじゃないか、頑張りが伝わってくる」
「そ、そう……よかった」
ニシカはニマニマを隠そうとしているが、隠しきれていない。
二頭身鎧のシルバがニュッと現れて発言をする。
「ニシカお嬢様は、ヤマダ様にご心配をおかけないようにと努力していましたからね。それが報われてよかっ――むぐぐぐうう」
シルバは、ニシカの手によって口を強引に押さえ付けられていた。
「はぁ!? 別にヤマダのことなんて気にしてないんだからね!」
<ツンデレ乙>
<やっぱりヤマ×ニシでしか得られない栄養素がある>
<てぇてぇ>
<今だ! チューしろヤマダ!!>
何やらコメント欄もヒートアップしているようだ。
そして、ニシカがそのコメント欄を見てしまった。
「えっ、配信中なの……?」
「そりゃダンジョンの中だから配信は続けてるだろ」
ニシカは数分間フリーズして放送事故を起こしたあと、キリッとした表情で言った。
「ふぅーははは! 先ほどまでの言葉は余の戯れ言だ! 騙されたなヤマダ! コメント欄! バーカバーカ!! 今後、このことについて何か言ったら真っ平らのぺしゃんこにぶっ潰してやるからな!!」
<真っ平らなのはニシカの胸定期>
<街で見かけたら速攻で逃げよ>
<吟遊詩人なので未来永劫ヤマ×ニシを歌い続けます>
「この愚民共ーッ!!」
相変わらずニシカとリスナーたちは仲が良いらしい。
良いことだ、うん。




