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配神が支配する異世界で【クズカメラ】に転生した俺 ~「お前は配信向いてないからw」と追放された華の無いヒロインをSランク冒険者にプロデュースしようと思います~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第三章 歌う魔術師ディヴァリア・スカルド

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ディヴァリアの本領発揮

 さて、昨日の会食から一日が経った。

 そして、例のダンジョンの中にいるのだが――。


「気のせいかバド・バズたちと一緒なのだが」

「オレも気のせいだと思いてぇぇぇぇえ……」


 俺たちは頭を抱えていた。

 だってそうだろう。

 余裕綽々で塔の前に移動して、転移したと思ったら最悪中の最悪組み合わせだったからだ。

 戦力であるクロとニシカだけがいない状態で、俺とディヴァリア、炎上三人組が一緒なのだ。


「この組み合わせじゃ進むのも難しいし、バド・バズ三人組だとろくでもない炎上をしそうで配信的にもマズい……」

「うるせぇ! こっちもテメェらじゃ身の安全が確保できねぇ!!」


 俺とバド・バズは一通り言い合ったあとに溜め息を吐いて黙りこくった。

 こんなの無駄なエネルギーを使うだけだ。

 とりあえず、ダンジョン内部を観察しよう……。


 天井の高さは充分にあり、横幅も数人が並んで歩けるくらいだ。

 床や壁はシンプルなレンガ造りっぽくなっているが、たぶん材質は特殊で壊れにくいものだろう。

 この説明だけだと平凡に思えるが、灯りのために壁に点々と魔力球のようなものがロウソク代わりに置いてあって、それなりに配信映えする作りとなっている。

 まるで俺が考えたような感じだ、さすがミミル。


「こちらの戦力を再確認しよう。俺は進化できるがまだ不安定だ」


 チラッとディヴァリアに視線を向けると、渋々とだが説明をしてくれた。


「私はまだ実戦をしてないから……戦えるかわからない」


 それを聞いたバド・バズは大笑いしたあと、次はこちらだと言わんばかりに大声で説明をした。


「オレは知っての通り、すべてを斬り裂く攻撃一辺倒の物理アタッカーだ! エロガ・パーは何人も通さぬ壁! オッツ・ボネールは生きとし生けるものを灰燼に帰す魔術師!」

「うす」

「そ、そうよぉん」


 自信満々に頷くエロガ・パーと、何か珍しく恥ずかしそうにしているオッツ・ボネール。

 俺はついツッコミを入れてしまう。


「おまえら……戦えたのか……」

「戦えるよ!! 冒険者なんだから当たり前だろう!!」

「いや、いつも炎上配信で失敗して戦う前に逃げてなかったか……?」

「うぐっ、痛いところを……」

「ちなみに配信を付けているんだが――」


<不安すぎる組み合わせ>

<配信システム終わったな……>


「というコメントが来ている」

「いちいちコメントなんて読まねーよ!」


<いぇーい、バド・バズくん見ってるー?>

<見てないから三流配信者のままなんだゾ>

<コメントは大事だからなぁ、売れっ子は大体見てるし>

<そういえば、クロとニシカはどうなったんだろう>

<言えないんだな、これが>

<別の配信の状況を伝える――つまり鳩行為をすると即BANされるようになっている>

<さすがに配神代理が絡むと恐ろしいな……>


「つまり、俺たちだけの力で進むしかないということか……」


<応援だけはしておく>

<配信システムが消える前にアカウントが消えたらシャレにならんしな>

<ヤマダがんばえ~>

<このPTはバランスがヤバすぎるだろ>

<ディヴァママ次第じゃないかな?>

<ぶっつけ本番か~……>


 コメントが杞憂してしまうのもわかる。

 配信システムがかかっているというのもあるが、ディヴァリアはその魔術をまだ一回も配信で見せてないからだ。

 そんな状態でバド・バズたちと組んでいるなんてヤバすぎる。

 俺だってそう思う。

 けど――。


「ここで立ち止まっていても何にもならない。進むか」

「お、おいヤマダ。待っていればクロとニシカと合流でき――」

「スタート地点なんだから、常識的に考えて一番後ろの方だろう。さすがにそこまで二人が見に来てくれるかどうかは怪しい」


 バド・バズは嫌でも納得してしまったのか、文句がピタリと止まってしまった。


「ディヴァリアとオッツ・ボネールが後衛、バド・バズとエロガ・パーが前衛で。カメラは俺が地上から、ピクシーは空から俯瞰すればリスナーが同時に見ても楽しめるな」

「か、勝手に命令するな」


 そう言いつつもバド・バズたちは言うとおりの配置になり、進んでいく。

 ぶっちゃけ、誰が考えても同じような結論になるベターな隊列だ。

 早く指示するかどうかという違いだけだろう。


「まぁ、そう緊張するなよ。こういうのは最初から強い敵が出たりはしない。まずは肩慣らしでスライムとかゴブリンとか、そういういかにもなザコモンスターでウォーミングアップさせてくれるものだ」


 俺がこう考えるのにはワケがある。

 普通のダンジョンの作りがそうだというのもあるし、この塔の管理者はミミルだ。

 アイツは知的で冷静な奴。

 ダンジョンとしてのセオリーもわかっている。

 あれ、急に前を歩いているバド・バズとエロガ・パーが立ち止まったぞ。


「おい、どうした?」

「あ、あああ……」


 震える指で道の先にある部屋を指差していた。

 そこには見覚えのあるモンスター――バジリスクがいた。

 以前、クロと必死に攻略した塔のボスモンスターだ。

 それがなぜか開幕からザコとして配置されているのだ。

 しかも――ザコのように大量配置されている。

 3,4,5……物陰もあったりして完璧には把握できないが、とにかくいっぱいだ。

 幸いなことに、まだ相手に気付かれていない。

 バド・バズもさすがにヤバすぎて声が出なかったのだろう。


(よーし……そのまま音を立てずにいったん下がるぞ……)


 前衛二人に目で合図をすると、コクコクと頷いてくれた。

 バジリスクの集団に気付かれたら一巻の終わりだからな……。

 そのまま下がろうとしたのだが、後衛のオッツ・ボネールが大きく息を吸い込んでいるのが見えた。

 おいおい、冗談だろ――。


「ッッッきゃー!! バジリスクー!!」


 ホラー映画さながらの悲鳴が響き渡り、バジリスクが一斉にこちらを向いた。

 オッツ・ボネールにツッコミを入れる時間すらもない。

 逃げるか? いや、ここまで一本道で逃げてもスタート地点の行き止まりへ行くだけだろう。


<全滅確定……>

<バド・バズPTはコラボしたら死亡フラグだな>

<この先グロ注意>


 コメント欄もオワタムードだ。

 たぶん俺だってリスナーならそう思う、この場にいてもそう思う。

 同接だけはグングン上がっていくのは皮肉だろう。

 前衛のバド・バズが死を覚悟して叫ぶ。


「くそっ、ただで死んでやるものかよ! せめて一矢報いてから――」

「そうだな!! 撮れ高を狙ってから死にたい!!」

「おめぇの頭配信しかねぇのかよ!!」


 炎上野郎にツッコミを入れられてしまった。

 だが、配信以上にこの世界で尊いものなんてないだろう?

 この場合、何が一番撮れ高になるか?

 決まっている。


「ディヴァリア! 歌ってやれ! お前の魔術の詠唱を!!」

「えっ!? で、でも……変な声の私なんかが……こんな状況で……」

「こんなに美味しいシチュエーションなんだぞ!! あらあらを付ければどうとでもなる、今までの配信から学んだだろう!!」


 ディヴァリアはハッとしたあと、表情が切り替わった。

 配信者としてのスイッチが入ったのだ。


「あらあら、そうでしたね」


<あらあらキター!!>

<ディヴァママがんばー!!>

<同接がメチャクチャ上がって登録者数も増えてるな>

<ピンチはチャンス>

<声、好きです>


「私の声が嫌いな人だけじゃなくて、逆に好きだと言ってくれる人もいる。世界って、そういうことなんですよね。だから私は歌える」

「うおい!? 何でも良いから早くしてくれぇ!! もたねぇよ!!」


 前衛の二人がバジリスクの攻撃を一発ガードして吹き飛ばされているが、一発耐えられただけでも充分にすごい。

 それで時間稼ぎの役目は果たせた。

 もう彼女の詠唱は始まっていたのだから。


「光届かぬ場所に居る幼芽(スピラ)、耳の女神(ギュズヤ)が水をやり、森羅万象すべてを照らす太陽(ソール)が輝きをくれた。根張る存在となっても、ずっと忘れずに歌い、称えよう。嗚呼、我が()の名は――【根源の白(フヴィートト)】」


(シは詩、史、始、死、氏、志、私、指、思などに多重呪文対応しているのか? この世界では辿り着きにくい、随分と高度な概念を織り込んでいる)


 独特な声から詠唱される魔術は、まさしく歌姫が奏でる旋律。

 それに呼応するかのように魔術が発動し、目に見えない存在が興起するかの如く白い炎が現れ、収縮していく。


 この世界における魔術と配信は似ている。

 魔術師からしたら〝小さき精霊〟から〝偉大なる神〟に至るまでリスナーであり、詠唱によって呼びかけて奇跡という高評価やスパチャをもらうようなものだ。

 力を貸してもらう存在に良い影響を与えられるなら、それは魔術の出力に大きな差が出る。

 誰よりも珍しい声で耳目を惹くディヴァリアが、恥ずかしがらずに真に詠唱できたのなら、それは信じがたい破壊をもたらすだろう。


 膨張、凝縮を経て〝白〟はバジリスクたちに向かって放射された。

 凄まじい速度・範囲の攻撃をバジリスクたちは避けられず、直撃させられていた。

 だが、バジリスクはあの塔のボスでもあったので、かなりの耐久を誇る。

 それでもディヴァリアの魔術はぶち抜いていた。

 白い魔術が当たった表面を消し飛ばし、身体の裏側だけが残るという状態になっていた。

 バジリスクの〝中身〟がボドボドと落ちていて、とても配信に乗せられそうにないので即座にカメラを別方向へスッと移動させた。


「ぐ、グロい……威力も範囲も何もかも……」


 さすがに俺もここまでとは思わずポカンとしてしまっている。


<すげえええええええええ!!>

<あのバジリスクの集団が一瞬でやられるとかウソだろ>

<やばすんぎ>

<こんな魔術見たことない>

<小生、魔術研究家。これは炎属性のようでもあり、しかし拡散が少ない。特殊である>

<聞いたことのない詠唱、何に力を借りたんだ>

<これは魔術というより〝魔法〟の領域に達しているか……?>


 コメントのリアクションを見て、さすがに俺も無言でいるわけにはいかない。

 パートナーなのだから。


「ふ、ふふふ……今までは声にコンプレックスがあって、全力で詠唱できなかっただけだ!! やはりディヴァリアは才能があったな!!」


 バド・バズとエロガ・パーも状況を飲み込めていないようだったが、なぜかオッツ・ボネールだけは誇らしげにしていた。

 同じ魔術師なのでわかるところがあるのだろうか?

 でも、コイツそんな性格だったっけ?


「あらあら……コホンッ、ケホケホッ」


 まずい、ディヴァリアが咳をしている。

 詠唱に力を入れすぎて、喉を酷使しすぎたのかもしれない。

 魔力を込めた声というのは、とてつもなく力を使うのだ。


「ディヴァリア、水を飲んで休憩しよう」

「はい」


<喉は配信者の命>

<お大事に>

<えー、つまんねー。咳した程度で休むって根性ねーなー>


 同接が増えれば増えるほど、こういう心ないコメントも出てくる。

 まだ配信文化が浅いから仕方がないとはいえ、胸糞悪いものだ。

 一応、注意しておくか。


「コメントで咳した程度で休むなと言っているのがいるが、配信者や魔術師にとって喉というのはとてもデリケートなもので、酷使しすぎると一生直らない病気になってしまうこともある」


 知識不足で心ないことを言ってしまうというのは、この世界では仕方のないことなのだろう。

 そうやって少しだけモヤモヤしていると、バド・バズがこちらのコメント欄を覗き込んできた。


「へー、コメントってこんなバカなことが書かれてるのか。今まで見てこなかったから知らなかったぜ。いいか? 身体張って配信してるのはオレたちだ、くだらねぇ外野がうだうだ言ってんじゃねーぞ!」


<バド・バズなんかに言われて草>

<さっきのコメントした奴はマジで恥ずかしい>

<バド・バズ以下という最底辺争いの称号>

<普段見ない名前だったし、ディヴァリアのことも知らない奴なんだろう>

<ちょっとだけバド・バズの株が上がった>


「おっ、わかってる奴もいるじゃん」


<でも炎上配信をするからプラマイゼロの評価>

<つまらない炎上配信さえなければなぁ……>


「は? やっぱりコメントなんてもう見ねぇー!!」


 配信的にうまくオチが付いたようで、コメント欄が草で埋まっている。

 良い感じになってくれてよかった。


 だが、俺は少しだけ先ほどの戦いで引っかかっていることがあった。

 バジリスクは本来、石化光線を放つものだ。

 可能性としては同士討ちを避けたり、ザコ配置されているものは石化光線を使えないというのもあるかもしれないのだから、ほんの些細な違和感だ。

 それでも……この件ではなく、何か全体的に違和感があるような気もする。

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