配信が消える日
「それじゃあ、ママとものみんな。おつかれさマーマ~」
<おつかれさマーマー!!>
<おつかれさまでちゅ!!>
<お疲れさママァァアア!! この配信のおかげでギルド長を一週間がんばれるよぉぉお!!>
<……うちのギルド長じゃなように祈る>
今日のディヴァリアの配信も無事に終わった。
初配信からかなり慣れてきて同接も安定、登録者数も伸びている。
「お疲れ様、ディヴァリア」
「あらあら、ママって呼ばないの? ヤマダさん」
「呼ばねぇよ!」
すっかりと喋ることへの抵抗も減ってきているように見える。
そうなると、ようやく次の段階という感じだろうか。
「なぁ、ディヴァリア。そろそろダンジョンで――」
俺がそう言いかけたとき、突然の地響きが襲ってきた。
こっちの世界ではほぼ経験しない地震だ。
何事かと思ったが、すぐに原因がわかった。
チラッと窓の外に巨大な何かが生えてきているのが見えたのだ。
「な、なんだアレは……」
揺れも収まり、少しだけ冷静になって観察した。
塔だ。
それも以前クロと登った登録者数100万人以上限定のダンジョンに類似している。
「場所は中央広場の方か……? こんな街の中にダンジョンがいきなり出現するなんてレアケースすぎるな……」
「あ、あらあら……」
配神をやっていた俺でさえ驚いているのだから、ディヴァリアなどは放心状態だ。
たぶん、大半の住人もそうだろう。
そんな中、声が聞こえてきた。
家の中までかなりクリアに届いているので、魔術的なものだろう。
『皆様、お騒がせしました。配神代理として、暫定的なダンジョンを建てさせていただきました』
その声はミミルだった。
さすがにどういうことか聞きたいので連絡を取ろうとするも繋がらない。
この大ごとに、バド・バズたちが実況配信を始めて不安煽りで同接を稼いだりもしている。
なかなか混沌とした状態だ。
『突然ですが、配信者様方への挑戦状として攻略企画を立てさせていただきます』
「攻略企画だと……?」
『内容は簡単。6人の配信者をダンジョンの中に招くので、協力してクリアしていただくだけです』
「たしかにわかりやすくてシンプルだな……。けど、こんないきなりで参加する奴はどれくらいいるんだ?」
『クリアできなかった場合、全世界の配信システムを停止させていただきます』
「なっ!?」
俺は焦って再びミミルに連絡を取ろうとするも、やはり繋がらない。
さすがにミミルとの付き合いは長いので、自らの意思でこんなことをするとは考えにくい。
誰かがミミルになりすましているのか?
いや、配神代理の権限はミミル本人しか扱えないようにしてある。
もしミミルを倒して権限を奪い取る――というのは、ミミル自体がかなり強いために難易度が高いだろう。
それなら誰か上の人間がミミルを脅したのか?
……いや、それも配神代理としての立場はある意味国王よりも偉いので、現実的ではないだろう。
弱みを握って……というのもあまり思いつかない。
聞こえてくるバド・バズの配信では『配神代理ってことは、黒幕は配神だな!!』とか言っているのだが、配神の俺は何も知らない。
濡れ衣だ。
情報源を確認しないで断言するのはやめろって。
『参加していただくのはクロ・クロウリィ――』
今の配信者界隈で人気ナンバーワンだから当然だな。
『ニシカ・ド・ラクロワ――』
こちらも人気急上昇なので理解できる。
『ディヴァリア・スカルド――』
「あらあら、なんで私が?」
「たしかに話題にはなってきているが、それでも並び的にはおかしいな。何か法則があるのか? 残りの三人でわかるかもしれないな」
「もしかしてヤマダさんがパートナーだった相手……?」
「いやいや……まさか……?」
さすがにそれはないよな。
いや、ないはずだ……。
ミミルの招待メンバー発表に注目が集まる。
『最後の三人はバド・バズ、エロガ・パー、ええと……その……オッツ・ボネール』
「なんでだよ!!」
たぶん俺の叫びは全世界のリスナーと一致しただろう。
すごい一体感を覚える。今までにない何か熱い一体感を。
『開始は明日の朝です。他に予定がある場合はキャンセルして頂いても構いませんが、その場合は代理は認められないので減ったメンバーだけで攻略してい頂くこととなります』
「配信システムがかかってるんだ、ほぼ強制だろこんなの……」
『では、攻略をお待ちしております』
そこでミミルの説明は終わった。
ディヴァリアが心配そうな表情で見てくる。
「あらあら、どうしましょうか……」
「そうだな……明日まで時間があるんだから、他の配信者とも相談するのがいいかもな」
「というと……?」
「事前コラボだ」




