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配神が支配する異世界で【クズカメラ】に転生した俺 ~「お前は配信向いてないからw」と追放された華の無いヒロインをSランク冒険者にプロデュースしようと思います~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第二章 聖なるガンハンマーの担い手ニシカ

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貴族の屋敷破壊配信

「しゃー! おらー! もっと破壊しろー! 芸術は爆発だー!!」


 俺はノリノリでニシカに指示を出しながら撮影をしていく。

 映っているのは、大貴族ロレンスの屋敷がガンハンマーで崩壊していくシーンだ。

 ニシカはこちらをチラチラと見てくる。

 たぶん『本当にこんなことをしていいの……?』とでも言いたげだが、もうやってしまっているのだから止まれない。

 俺はカンペで〝やれ〟と出す。

 ニシカはヤケになっていつものロールプレイを開始した。


「はいィー! 愚民の屋敷を破壊するのは楽しいぞい!!」


<配信の最初からクライマックス>

<こんな配信見たことねぇ>

<普通はやらないだけだろwww>

<これだけ大きいなら結構な貴族の屋敷か?>


「その通り! ニシカは破壊活動に忙しいから俺が答えよう! 前回、荒らしコメントが書き込まれたのを憶えているな! ここの大貴族ロレンスの冒険者カードが使われていることが判明し、数々の侮辱と共に『死ね』と書かれていた……つまり命を奪うという敵対宣言だ! それなら同じように、こちらも打って出たということだ! 自己防衛!」


<なる……ほど?>

<こえー>

<でも侮辱されたら決闘というのは普通だしな>

<自然鎮火なんか、あてにしちゃだめよ>

<屋敷まで破壊は草>

<あの書き込みは『お前の家を燃やしてやる』とまで言ってたからしゃーない>

<あれ? 何か屋敷の中から人が出てきたぞ>

<そりゃ誰かいるだろ>

<誹謗中傷の大貴族ロレンスか?>

<それにしては風格が重装騎士すぎる>


 ズシンズシンと重厚な足音を響かせながら出てきたのは、重厚な全身鎧を着た大男だった。

 ヘルメットのバイザーをカシャッと上げて素顔を見せてきたが、どうやら貴族ではないらしい。


「貴様らぁ! ロレンス様の留守を狙って何たる狼藉(ろうぜき)!! この重装騎士ラカンが成敗してくれる!!」


 どうやらメチャクチャ怒って青筋を立てているようだが、事情は知らないらしい。

 まぁ、配信者とパートナーが一心同体のように、主人と部下も一心同体ということでいいだろう。

 再びチラチラと不安げに見てくるニシカに対して、〝やれ〟とカンペを出す。


「ぐ、愚民よー!! 余の前に立ちはだかったことを後悔するがいい!!」

「頭でもおかしくなったのか!? 立ちはだかるも何もいきなり屋敷を襲ってきたんだろうが!?」


 たしかに事情を知らない人間からしたらとんでもないのだが……よし、ゴリ押そう。

 再びチラチラと見てきたニシカに対して、〝やれ〟とカンペを見せつけまくる。


「ええい、もう知ったことかー!! (こうべ)を垂れよ! 我が名はニシカ・ド・ラクロワ! ラクロワ王国の第五王女にして、龍の血を受け継ぎし聖なるガンハンマーの担い手!!」

「ニシカ・ド・ラクロワ!? 第五王女だと!? なぜこんなところに……いや、しかし、ガンハンマーを使いこなせないとは聞いている。このオレの自慢の全身鎧には通じ――」


 ニシカは小さな身体で大きく飛び、クルクルと縦回転を加えながらガンハンマーを振り下ろした。

 重装騎士は胴体にガンハンマーを受けたが、このくらいの衝撃なら耐えられると思いニヤッとした。

 しかし、同時に耳をつんざく大爆発が起きた。

 打撃と魔石爆発による衝撃が合わさる完璧なタイミング、まさにガンハンマーの真骨頂。

 その絶技の前には重装甲など意味を成さない。

 重装騎士は地面に埋まり、ピクピクと身体を痙攣させながら気絶してしまった。


「ふはは! たった一撃! 装填された魔石が余ってしまったな!」


 ニシカの黄金の鎧は熱を受けて輝いていた。

 その姿は幻想的で、神話の英雄のようにも見える。


<す、すげぇ……>

<ニシカちゃん、こんなに強かったんだ>

<いや、でもバド・バズのときは弱かったから努力して強くなったんじゃね?>


「ど、努力など余がするはずない! 最初から最強無敵の聖なるガンハンマー使いなるぞ!」


<はいはい>

<裏でコソ練確定>

<どんなキャラかわかってきたわ>

<強がり可愛い>


「うるさい! お前らもガンハンマーで処刑してやるぞ!!」


 撮れ高もあって同接も高くなり、登録者数も増えてきている。

 大貴族様が留守だったのは残念だったが――。


「こ、これはいったいどういうことだ!? 私の屋敷が破壊されているだと!?」


 おっと、噂をすれば何とやら。

 豪華な馬車でご帰宅してきたな。

 そこから降りてきて驚いている悪役面の中年男が例の大貴族ロレンスで、その後ろに控えているのは美人メイドのイベルか。

 あんな可愛いメイドさんを(はべ)らせているとか絶対に悪だな……間違いない……!


「屋敷が破壊された理由? はっ、自分の胸に聞いてみるんだな!!」


 俺は自信満々に大貴族の方を指差した。

 正義は勝つ!


「えっ、いや……本当に心辺りが無いのだが……」


 え?

 いやいや、しらばっくれているだけに違いな――何かメチャクチャ表情がキョトンとしているな。

 まさか本当に心辺りが無い?

 だが、それなら無実の罪で屋敷を破壊してしまった俺たちは……。

 やばい、冷や汗が出てきた。

 誹謗中傷に対しては頭に血が上りやすくなって脊髄反射してしまった……。


「そこにいるのはニシカ様ですか……? ああ、それなら仕方がない……この私――ロレンスは屋敷を壊されても文句が言えない立場だ……」


 おっと!! やったぜ!! 都合良く自供してくれるようだ!!

 ビックリさせるな、はよ吐けや!!


「私は国の意向に従って、あなたのようなまだ若い方を婚約者にしなければならなかった。しかし、親子ほども年が離れているあなたを愛することはできない……。頭を悩ませていたところ、ニシカ姫はよほど嫌なのか演技をしてくださり、こともあろうか情けない私はそれに乗ってしまったのだ……責任をあなたに押しつけるような形で……」

「ロレンスさん……」

「本当に申し訳なかった、ニシカ姫。あなたに復讐されても文句は言えない……」


 あれ、何か二人して和解ムードに入っている?

 そもそも、こんなにも悔いてる人が誹謗中傷なんてするのか?

 しかし、この大貴族の冒険者カードで書き込まれてるのは確認してるしなぁ……。

 一応しらばっくれてるだけかもしれないし指摘しておくか。


「大貴族ロレンス! お前の冒険者カードでニシカへ誹謗中傷の書き込みが行われている!」

「なんと!? それは本当ですか!?」

「ああ、つまり犯人は――お前だ!!」


 あ、やべ。

 指先がズレた。

 そういえば頭に血が上ってこの国まで急いでやってきたから、身体に油を差していなかったな……。

 無関係なメイドさんの方を指差しちゃったよ。


「ふふふ……バレてしまったようね」


 え?

 何かメイドさんが白状し始めたけど、真犯人ってことぉ!?

 ど、どういうことなん?


『ヤマダ様、誹謗中傷の件の調査が完了しました』


 あ、ミミルからの通信が俺にだけ聞こえてきた。

 というか調査ってまだ完了していなかったのか……てっきり使用された冒険者カードの特定だけで終わったのかと……。


『冒険者カードを使ったギルドの現場を調査したところ、メイドのイベルが目撃されました。その場で雑談配信を行っている者もいて、偶然映された証拠も――と必要ありませんでしたね。ヤマダ様の目には全てお見通しだったようです。さすが我が主人、世界を造り変えた配神、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 話が終わったのか一方的に通信が切られた。

 えーっと……つまり……どういうこと?


「そこのクズカメラに見破られたのなら仕方がない! そう、ニシカ姫……いいえ、這いずり虫以下のニシカスのところに書き込んだのはこの私――イベルよ!」

「な、なぜメイドの君が!?」


 大貴族ロレンスも身内の白状にメッチャ驚いてる。

 見破っていたらしい俺も驚いてる。


「私は……ロレンス様を密かにお慕いしておりましたのに、そこの泥棒猫に横取りされるなんて許せませんでした!! それだけでも憤死ものなのに、あまつさえニシカスはあなたを振ったのですよ!! 許せない、百回殺しても許せない!!」

「えぇ……」


 ロレンスは大貴族らしからぬポカンとした表情で口を開けていた。

 メイドからの恋心に関しても何も知らなかったようだ。

 もしかして不幸体質なのか?

 この人視点だと、何も知らずに屋敷を破壊実況されて、いきなりメイドが他人を誹謗中傷していて愛してるとかヤンデレをかましてきているのだ……。

 かなり同情してしまう、そして屋敷破壊してスマン。


「今、目の前でニシカスを殺すので少々――」


 イベルはニシカに近付いて行くが、さすがにただのメイドの素手と、黄金鎧+ガンハンマー装備じゃ差がありすぎる。

 ニシカに反撃されて終わりだろう……と思ったのだが、直後にメイドが何かの薬を飲んだ。


「――ごろずので少々お待ちをォォォオオオ!! この進化の丸薬でェェェエエ!!」


 進化の丸薬?

 直後、メイドのイベルは緑色の肌のムキムキマッチョマン……もといマッチョガールになった。

 バケモノのような筋肉の膨らみでメイド服が破けているが全く嬉しくない。

 突然の事態に驚き、ニシカにも隙が出来てしまった。


「これが!! これがジャマ!!」

「あっ!?」


 筋肉メイドは、ニシカのガンハンマーをはたき落とした。

 まずい、ニシカは対モンスター戦はある程度やったが、対人戦となると初心者だ。


<ヤマダ!! コメントを見ろ!!>

<お前が助けるしかない!>


 助けるといってもクズカメラの俺じゃ――


<クロちゃんとダンジョン行ったときに翼が生えたり、人になったりしただろ!>


 ああ、そうか……進化の秘玉だ……!

 やるしかない!

 コメントにいるニシ風の黄金龍団、おまえらに感謝する!


<ヤバい、パンチがきてるって!!>


 筋肉メイドの強烈な鉄拳が、ニシカに届くまでにどうにかしなければならない。

 距離的にヒトカメラじゃ間に合わないし、トブカメラでもまだ怪しい。

 それならもっと早い進化……!!


「Bランクのネコカメラだ!!」


 俺は走り出すと同時に輝きだし、身体が猫の形へと進化した。

 猫特有のしなやかさをバネにして、疾風の如く走り抜ける。


<ネコカメラっていうからには猫なのか?>

<オレたちの視点からじゃ前足しか見えねぇ>

<でも、猫でアレと戦えるのか?>


 そこは心配ご無用!

 一瞬で筋肉メイドの足元に到着して――


「Aランクのヒトカメラだ!!」


 俺の身体は人型になり、筋肉メイドのパンチを間一髪で受け止める。

 無防備なニシカの顔面に直撃すれば大変なことになっていたな……。


<ヤマダつっよ>

<そりゃダンジョンボスのバジリスクを押さえ込めるパワーだからな>


 自分ではあまり考えていなかったが、どうやらそれなりの腕力があるようだ。

 ここは可愛いメイドさんには申し訳ないが――。


「ウゴゴゴゴ……ニシカス殺す……悪いのは全部ニシカス……私は全人類(みんな)の正義代行をしているだけ……!! 配神もきっとこのためにコメント機能を付けたらしいし……! ロレンス様も喜ぶはず! それに悪のニシカスを死ぬまで殴ったら最高に快っ感っ……!!」


 ……やっぱりコイツは殴っても良い気がしまくってきた。


「俺は世の中で許せないモノがある……それは誹謗中傷をする奴だぁー!!」


 筋肉メイドの顔面に全力パンチを決めてやった。


「ウゴァーッ!?」


 バケモノは馬車まで吹っ飛び、鼻が折れた顔面を凹ませながら、地面へと崩れ落ちていた。

 どうやらまだ息の根が止まっていないようだ。

 まだやる必要がある。

 そこで後ろからニシカに掴まれた。


「もういい、もういいから!! 私は殺したいとまでは思ってないから!! だから、そんな怖い顔しないで!!」


 自分からは見えないが、どうやらニシカを怯えさせるような形相になっていたらしい。

 なぜかミミルの声のようにも感じられ、言葉が心の深いところに突き刺さった。

 俺は深呼吸をしてから、聞こえているかわからないが筋肉メイドのイベルに向かって叫んだ。


「再び誹謗中傷をしたら、これでは済まないからな。憶えておけ」

「そ、それでしたらご安心を」


 何も知らない大貴族ロレンスさんが話しかけてきた。


「この国では身分証としても使われる他人の冒険者カードを不正利用することは重罪となっているので、彼女は牢獄へと送られます」

「そうか。それじゃあ、今回は一件落着だな! さぁ、帰るぞニシカ!」

「あ、うん――じゃなくて、わかったぞ! 側近よ!」


 何か良い雰囲気にして、屋敷をぶっ壊してしまったことをうやむやにしたのであった。

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