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配神が支配する異世界で【クズカメラ】に転生した俺 ~「お前は配信向いてないからw」と追放された華の無いヒロインをSランク冒険者にプロデュースしようと思います~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第二章 聖なるガンハンマーの担い手ニシカ

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俺のパートナーになれ

「えーっと、もしもし……そこのお嬢さん。森の中でクマさんと出会っちゃいますよ?」

「へ? クマ? ここらへんってクマは出ないよね?」


 しまった。

 ノリで話しかけてしまったけど、この世界だと森のくまさんとか伝わるはずもない。

 俺は別にコミュ強なわけではないので、次に何を言おうかとフリーズしてしまった。

 野郎相手ならともかく、王族の女性相手だし少しは緊張する。

 そうしていると、ニシカの方がハッとして表情を強気に切り替えてきた。


「愚民よ! 余に話しかけてくるとは良い度胸だな!!」

「いや、さっきまで普通に喋ってたよな? 何なら泣きべそかいてたよな?」

「ぎゃー!? 見られたー!?」


 どうやら見てはいけないものだったらしい。

 ニシカは泣きはらした目でガンハンマーを構えてきた。


「殺す……のは可哀想なので、丁度良い感じに頭を殴って記憶を消し飛ばして……」

「ストップ!! そのサイズの鈍器で殴られたら普通にスクラップになる! というか、別にお前の敵じゃない。むしろ味方になりにきたんだ!!」

「そう言って取り入ってくる貴族は五万と見てきた……。どうせ貴方も……って、その声はどこかで聴いたことがあるような?」


 これはもしかして、クロの配信で知っているパターンか。

 まぁ、あの配信は物凄い拡散されてたし、この界隈に飛び込んでくるならお姫様でも知っているか。


「クロ・クロウリィの元パートナー、クズカメラのヤマダだ」

「ほ、本物!? いや、喋るクズカメラなんて他に見たことないし、やっぱり声も本物だー!! 握手してください!!」

「あ、はい」


 手の平返しがすごい。

 けど、ファンだったらこうなるのも当然か。

 ふふ……俺も罪な男になっちまったもんだぜ……。


「クロ様のサイン……いや、さすがにそれはおこがましい……クロ様の手を患わせるだなんて……!!」

「って、俺のファンじゃなくてクロのファンか」

「あ~、ヤマダにも多少リスペクトはあるかも」


 格差がすごい。

 しかし、クロのおかげでそれなりに印象は良いようだ。

 それなら話は早い。


「俺はクロの次に育てる配信者を探していたんだ。ニシカ、俺のパートナーになってくれないか?」

「……それをさっき配信で失敗した私に言うか」

「たしかに……アレはひどかったな」

「それなら――」

「でも、光るモノもあった。俺はクロにも劣らない才能をニシカから感じている」

「うっ、クロ様の名前を出されると弱い……。話だけなら……」

「それじゃあ場所を移そう。さすがにダンジョン近くの森の中じゃ落ち着かない」

「どこへ?」


 ふっふっふ、実はクロの配信でかなりお金が入ったので、多少は取り分としてもらっておいたのだ。

 報酬なしでもいいかなと最初は思ったのだが、さすがにお金が必要となるときも来る。

 現に、今から行く小さな家もその金で買った物だ。

 さすがにクズカメラの身体と言えど野宿はきつい、錆びる。


「俺の家で話そう」

「これは悪徳貴族が女性を家に誘って手込めにするアレだ……!?」

「何でだよ。クズカメラが何をどうするっていうんだ」


 そもそも、俺は前前世の自分周りの記憶が曖昧だから男か女かもわからない。

 一瞬だけヒトカメラになったときも、中性的な身体でどちらでもなかった。


「クロ様に誓える!?」

「余裕で誓えるよ」

「それなら行く」


 ……お、俺を好きな人間ってこの世にいるのだろうか?




 ***




「何もないところだがくつろいでくれ」

「……本当に何もない」


 街の中にある小さな一軒家。

 このファンタジー世界基準では、質素だが割としっかりした作りとなっている。

 木造だが、別に火を使ったりするわけでもないし問題ない。

 クズカメラなので食事用の火もいらないしな。

 というか、生活に必要な物がなにもない。


「クズカメラだからベッドも必要ないし、台所もいらない」

「客人用のテーブルと椅子があるだけマシかも」


 ニシカはその椅子に腰掛けながら、何もない室内をキョロキョロと物珍しそうに見回している。

 小さな俺は、もう一つの椅子の上に乗っかりながら聞いてみた。


「そんなに珍しいところがあるか?」

「あ、いや、普通の人の家って初めてだから……」

「普通の人じゃないけどな。というか、愚民って言わないのか?」

「あ、あれは……人前ではああやって話すだけで……」

「意味がわからない。なんで素だとそんな感じなのに、人前だとあんな暴虐めいた王っぽい喋りになるんだ?」

「それは……私が嫌われ者の第五王女じゃなきゃいけないから……」


 ニシカはそのまま無言になってしまった。

 どうやらあまり話したくないことらしい。

 まぁ、本人が話したくないのなら無理に聞くというのもダメだろう。

 だが、俺が何よりも優先するのは配信界隈を盛り上げることだ。

 そのためにニシカが欲しい。


「ニシカ、自分を偽るのは別に悪いことじゃないぞ」

「え?」

「ロールプレイってやつだ」

「ロール……プレイ……?」


 Y○utubeの配信者、主にVTuberがキャラや設定を作って配信することは多い。

 別にそれは悪でも何でもないし、最近では受け入れられてきている部分もある。


「演劇でも、普通の人が悪役になりきって誰かを楽しませるとかするだろう。配信者がそういうことをしても問題ないということだ」

「でも、最初の配信は失敗して……」

「俺がその失敗を成功に変えてやる。だから、俺のパートナーになれ。ニシカ」


 俺は『自分を信じろ』と手を差し出す。

 ニシカの視線は左右に揺れ動き、逡巡しているようだった。

 それでもゆっくりと震える手をこちらに差し出してきた。


「クロ様を育てた貴方を信じてみる」


 俺は小さなクズカメラの手で、力強く握手をした。

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