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9 変わる気持ち

 学園に戻りちゃんと治療をしてもらった。包帯を解いて傷口を見た校医に上出来の処置だと褒められた。


 で、今回の合同練習の報告で件の二年生はきつめにお叱りを受けたようです。それでなくても私が怪我をしたことに青ざめていましたからね。

 班のリーダーであるジェイスター第二王子と五、六年生も叱責されたと、あとで聞いた。監督不行き届きだとか。


 この班として最後の合同授業の時に、二年生に謝られた。私はニッコリ笑うと父直伝のアイアンクローをおみまいしてあげた。涙目になった彼に「何のための班行動か、わかったよね。次は君が庇う立場になりなさい。ああ、でもこういうことは起きないに越したことはないさ」と言った。彼はコクコクと頷いていた。


 うん、これが班行動をさせた理由なのだろう。上級生には下級生への目配り、下級生にはひよっこでも出来ることがあるのだと自信をつけさせる。


 さて、最後の合同授業は何事もなく済んだ。魔物を狩って戻り、演習場に班ごとに並ばされた。


「さて諸君、これで今年度の合同授業は終わりだ。年齢差は経験の差でもある。一、二年生はひよっこどころか卵の殻を尻に着けた状態だというのがわかっただろう。上の学年もこのことを糧として、これからに生かしてほしい。次に会う時には立場が違うかもしれないが、この学び舎で共に学んだ仲間だということを覚えていてほしい。

 では、解散」


 騎士科の主任教師の言葉で、授業は終わった。だけど、なんとなく去りがたく皆は班ごとに動かずにいた。


「えーと、あのさ、今日はこの後、各学年とも授業は無いだろう。班の解散会というか、お疲れさま会というか、そういうのをしないかい」


 六年生が提案し、やはり同じように去りがたかった下級生たちが賛同して、キラキラした目を私たち四年生と五年生に向けてきた。第二王子が頷いて「それなら食堂にいこう」と言ったので、私たちは移動をすることにした。

 私たちが歩き出すと、他の班も同じように歩き出したから、考えることは一緒だったのだろう。


 食堂に着いて各々飲物を頼み、軽食と焼き菓子も受け取って席に着いた。飲物は果実を炭酸水で割ったものが人気で、皆はそれを選んでいた。

 果実水は今の次期に良く採れるシトロンが人気だ。私は個人的には夏が旬のネクタルが好みだ。シトロンは冬に採れるものだが酸味が強く保存がきくので一年中楽しめる。飲物とする時は果汁を絞り水や炭酸水で薄めてはちみつを加えるのが一般的だ。


「あ、あの、先輩方、今までありがとうございました」

「一緒の班になれて光栄でした」


 一年生が感謝の気持ちを伝えてきた。この言葉を皮切りに二年生、三年生も感謝の気持ちを伝えた。特に三年生の女子は私と一緒で気持ち的にも安心できたと言ってくれた。四年の男子が先にこの班で過ごせて良かったと言い、次は私の番。


「先輩方、お疲れさまでした。立場が変わってもこの(よしみ)でよろしくお願いします」


 簡潔に言ったのに、何故か班の皆から凝視された。しばしの沈黙の後、五年生がコホンと咳払いした。


「えー、学年を超えた班という活動はとても有意義だった。それにこの皆だからやれたのだと思う。みんなありがとう」


 第二王子が口を開こうとしたら六年生が止めて先に言った。


「頼りになるからと五年生にリーダーを押しつけた、ふがいない私を立ててくれてありがとう。楽しい班活動だった」

「最終学年をすごく楽しめた。これは君たちのおかげだ。本当にありがとう」


 皆の視線が第二王子へと向いた。


「私は……君たちが思うような立派な人間じゃない。現に班を纏められず班員にけがを負わせてしまった。あれは私の采配ミスだ」


 件の二年生が「あれは僕が」と言いかけたけど、周りに止められた。王子の言葉を遮るのは場合によっては不敬罪になるだろう。


「そんな私についてきてくれて、本当にありがとう。皆と活動したこの半年のことはいつまでも心に残っているだろう。次年度は同じ班になれるかどうかはわからないが、もし同じ班になったら、その時はよろしく頼む」


 真顔で言ったけど照れているのか耳が赤くなっていた。


 そのあとは軽食をつまみながら談笑をして、皆と別れた。教室へ戻ろうと歩き出したら「ベルゲール嬢」と声を掛けられた。呼びかけたのはジェイスター第二王子。


「少し話がしたいのだが今、いいだろうか」


 私は頷くと第二王子のあとをついて歩いて行った。着いたところは演習場に向かう小道。ここは校舎からも演習場からも同じくらい離れている。それに今日はもう自主練のために来る者は居ないだろう。


 王子は立ち止まり私のほうを向くと頭をさげた。


「今までのこと、本当に申し訳なかった」


 突然の王子の行動に目が点になる。何も言えずにいると頭をさげたまま王子は言った。


「許してもらえるとは思っていないが、謝罪だけでもさせてほしい」


 真摯な言葉に王子の気持ちに変化があったのだと悟る。


 いや、本当はこの学年になってからわかっていた。ルナリア王女に最初にくぎを刺されて以降、王子が私に絡んでくることはなかった。

 同じ班になってからは、普通に接していた。


 だけど時折、王子の視線に、眼差しの中に秘められたものに、私は気づかないふりをしていただけだった。


Q 気持ちが変わったのは誰でしょうか?

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