7 時は過ぎ、学園でのこと
私も十三歳になり学園に入学しました。もちろん騎士科ですことよ。同じく騎士を目指す女の子が十二人もいて、毎日楽しく過ごしております。はい。
ただ、騎士科では学年を取っ払った合同授業日がありまして、そこでやつと顔を合わせるわけですよ。
やつ?
あれですよ、あれ。八歳の時に難癖付けてきたジェイスター第二王子殿下です。
あの決闘のことはどこからか漏れて、騎士を志し始めた女子たちから第二王子は厳しい目でみられました。女子どころか女性たちから総スカンだったようです。
というのも、やつは反省しなかったんですよ。あの後も私が訓練所に顔を出すと、難癖付けてきて周りが場を整えてやつと一勝負。というのがこの五年の流れとなりましたね。
で、やつは私に勝てなかったんですよ。毎回勝負するものは変えていたのに。
さすがに相対しての勝負は国王から禁止されたので、直接打ち合わないものでやっているんだけどさぁ。
弓……まずは使えるようになってからと決まってから練習期間を十日ほど置いてから、的あてをやりました。
槍……最初は投げる距離を競いました。次に的を正確に突けるかを競ったよ。
短剣……これも的あてでした。
馬術……単純に速度を競うのから障害競走までいろいろと。
剣……藁、麦わらを束ねたものを切る……十歳の子供にやらすなよ……それでも直径十センチくらいの束を半分くらいまで切りましたけどね、私。やつはそこまでいかなくて私の半分ぐらいだったかな?
などなど。もちろんこの勝負は一度だけでなく何度かやりましたよ。
あっ、でもこの一年は平穏に過ごしたのよ。やつ……第二王子が学園に入学したので。
で、話しは戻るけど、只今その全学年の合同授業です。
あっ、そうそうなんで合同授業があるのかというと、学園卒業後どこかで同僚となる確率が高いじゃない。なので、すこしでも先に顔合わせを、ということらしかったです。
一番最初の時は私を見つけてそばに来ようとした第二王子は、いい笑顔の第一王子とうちの一番上の兄(兄は騎士科だけど第一王子は騎士科ではなかったはずなのだけど?)に捕獲されて離れたところに連れていかれた。
翌月の合同練習ではうちの二番目の兄に捕まって兄の友人たち(?)に囲まれて訓練していた……のよね。
三か月目、合同は合同だけど男子と女子に分かれての訓練で……。
なにやら上の方々の意図を感じなくはないけど、快適に過ごせているので良しとしましょう。
そんなこんなで、一年から三年までの三年間はあっという間に過ぎていきまして、私は四年生になった。兄たちは卒業してしまったから、第二王子からのウザ絡みを覚悟していた。
が。
「お兄様、アリスト様に絡んで迷惑をかけないでくださいね」
「ルナリア、お前は兄を何だと思っているんだ」
「私の護衛に理不尽に絡むヘタレの困った兄ですわ」
「なっ! ヘ……ヘタレ……」
淑女科一同がなぜか合同授業の見学にいらして、ルナリア王女が第二王子に物申しているのだけど?
「というかなぜベルゲール伯爵令嬢のことをア、アリストなどと呼ぶのだ」
「ええ~、そんなの、当たり前じゃないですか。アリストリア様がかっこいいからですわ。見てくださいまし、アリスト様のお姿を!」
淑女科の皆様がキラキラという目をしてルナリア王女の言葉に頷いている。
「緩くウエーブを描くブロンドを首元で一つにまとめられていて。
涼やかな眼差しはサファイアブブルーで。
すらりとした立ち姿に、出るところはしっかりと出て締まるところは締まっているボディライン。
普段の立ち居振る舞いだけでなく、困っている方に手を差し伸べる様子のなんと麗しいことか。
勝手にいろいろ拗らせていらっしゃり、素直に手を差し伸べられない方々と比べることのほうが、烏滸がましいのではなくって」
第二王子だけでなくなにやら胸を押さえる男子学生が多い気がしますが、ルナリア王女が私の隣に立ち手を差し出しました。私は王女の手を恭しくとり、左腕へと導いてエスコートの体制をとります。
「ねっ、皆様方。この様にナチュラルにエスコートできる方を、推さずに何を推すというのですか!」
王女の言葉に令嬢がたから拍手が沸き起こりました。
「皆様方もよーく肝に銘じておきなさい。照れを感じるのはわたくしにもわかりますわ。ですが、あと数年で……いえ、最上級生の方々はあと数か月で御卒業です。それなのに未だに婚約者のエスコートから逃げ回っていらっしゃると、お聞きした方がおりますわ。
皆様、卒業後はどうなさるおつもりですの。ご結婚したくないのでしたらこのままでもかまいませんが、家庭を持つつもりなのでしたらちゃんとお向き合いくださいませ。
時間は有限ですのよ。たどたどしくてもいいのです。一緒にいればいつしか慣れるものですわ。
それでも訓練を理由に向き合う気が無いのであれば、婚約者を開放して差し上げてくださいまし。
そうでなければ愛想を尽かされますわよ。そうなってからでは、何もかも遅いのですわ。
お兄様も、あと二年で改善されないようでしたら、それなりの審判を下すとお父様、お母様が申しておりましたわ。
よくお考え下さいましね」
騎士科の男子に向かってそう言った王女。高学年ほど唇をかんで俯いてしまっている。俯いていないのは、婚約者との仲がいい者たち。低学年は……キョトンとした顔をしているものが何人かいた。
Q 学園に入学する年齢になったアリストリアたち。騎士科の脳筋がゆえにいろいろ拗らせている男子が多数いる模様。さて、王女の叱咤激励で彼らは変わることが出来たのだろうか?




