6 王宮騎士団との訓練にて
なめ腐った態度の近衛騎士たちが一掃され、少し武骨だけど絶対ケンカ売っちゃ駄目な人たちが王家の方々の警護をするようになりました。それでも少しは配慮されたのか見目がそこそこ良い感じの人が多いです。
でも、何よりも王妃様の周りにいらっしゃる女性騎士の麗しさといったら……。ああ、私もいつかかの方々の一員になるのだと、俄然やる気が溢れてきました。
八歳になると王宮騎士団の訓練に参加できるようになりました。基本は女性の騎士の方々との訓練です。皆様私にすごく良くしてくれます。どうやら女性騎士の登用に私が一役買ったことがバレているようです。
学園のほうは来年度から騎士科に女性の入学を認めることになるそうです。早速騎士の家系の方が何人か希望していると聞いています。
とっても喜ばしいことですね。
さて、本日は男性の騎士の方も交えた訓練に初参加しております。父や兄たちが張り切っていたんですよ。私にいいところを見せるために。
ついでに学園の騎士科の方々もいます。彼らは所在無げに一塊になってきょろきょろと周りをみていますね。
上の兄ディトリアスも今年学園に入学したので彼らと一緒に来ていますが、私と同じように学園に入る前は訓練に参加したことがあるので涼しい顔をしていますね。
なのですが、これはどうしましょうかね。先ほどから私はウザ絡みされています。相手をしないでおこうにも、それが許される方ではないのでどうしましょうね、これ。
絡んできたのは私より一つ上のジェイスター第二王子。兄のお下がりのシャツとパンツにショートブーツ姿の私を見て、一瞬ぽかんと口を開け、そのあと怒涛の勢いで絡んできたんです。
なんか早口で喋っているし、話していることがあっちこっちに飛んでいくので、何を言いたいのかさっぱりわかりません。
気が付いた父がそばに来て殿下に話したのですが、なぜか顔を赤らめて父へと抗議しているみたいです。
いえね、気が付けば兄たちに殿下から引き離されていたんです。さりげなくね。
そんな中、殿下は私を……いえ、女性を侮辱することを言いました。
「女なんだからおとなしくしてろ!」
はっ?
それって、この三年間の王妃様や皆様の努力を、わかってないということですか?
女性は守られるべきだから、男に並び立とうとするなということですか?
王族なのにその視野の狭さですか。
第二王子殿下は国王になる兄(第一王子)を守るために騎士になると聞いているのだけど?
そんな視野の狭さで何を守るっていうのさ!
「お前、今、なんと言った!」
「あら、心の中でつぶやいたつもりが言葉にしていましたか」
わざとニヤリと笑いながら言ってやった。第二王子の顔が引きつった。
「不敬であるぞ」
「あら、どこがでしょうか? 私の言葉よりも殿下の言葉のほうがありえないでしょう。何のために王家の主導で女性騎士を登用していると思っているのですか。女性が騎士になることに利点しかないのに、それを理解しないで『女なんだからおとなしくしてろ!』と言うなんて。私たち女性を馬鹿にしています」
「そ、そんなつもりでは……。じゃなくて、お前は伯爵令嬢だろ。それなら騎士になる必要はないだろう」
「それって、私のことを馬鹿にしているのですか。我が家は騎士の家系です。伯爵家だろうが騎士になるのに関係ありません」
「いや、お、お前には向いてないのでは」
「はあ~? どこまで馬鹿にするつもりですか? 私、これでも近衛騎士のお姉さま方から筋が良いと言われているんですよ」
「それはお世辞だろ」
私は手にはめていた手袋を脱ぐと殿下へと投げつけた。
「お姉さま方を馬鹿にしないでください。そんなに言うのでしたら私の実力を見せつけてやります」
殿下は呆然と落ちた手袋を見ていた。が、我に返ると手袋を拾って言った。
「いいだろう。そんなに言うのなら相手をしてやる。私が勝ったら騎士になろうとするなよ」
「いいでしょう。殿下こそ、負けたら謝罪とこれから私がすることに口出ししないでください」
止めようと……したのでしょうね、父も兄も。ですが騒ぎを聞きつけた王妃様がいらっしゃり、私と第二王子の決闘が許可されました。
使うものは摸擬剣どころか棒の先に布を巻き付けたもの。少し厚みがあるので綿でも入っているのでしょうか。怪我をさせないための配慮なのでしょけど、第二王子は扱いづらそうです。
訓練場の真ん中で向かい合う私と第二王子。周りは私が負けると思って、心配そうな目を向けてきます。
結果は……ふはははははー。私の圧勝でした。第二王子が振り下ろした棒を避け、空いた胴に打ち込みましたよ。
呆気にとられた様子の周りの大人たち。第二王子も呆然としたのち、我に返ると私に突っかかってきた。避けるなどありえないとかなんとか。
それに対し王妃様が。
「ジェイスターこそ何を言っているのかしら。賊が避けないわけがないでしょう」
「ですがこれは訓練で……」
「訓練? これは決闘でしょ。あなたがアリストリアを侮辱したことに対しての抗議よね」
「ですが、尋常な勝負を……」
「あなたにそれを言う資格はないわ。大体女性の騎士についてはわたくしと陛下が許可を出したことよ。それを志すアリストリアにありえない言いがかりをつけたりして。これが王族、それも我が子の発言かと思うと悲しくなるわ」
第二王子はぐっと言葉を詰まらせて、反論を封じられたのだった。
Q ジェイスター第二王子がアリストリアが騎士になることに難癖付けてきました。王子はなぜこのような行動をしたのでしょうか?




