ロージーのたからもの
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冬の童話祭2026参加作品です。
2026/1/24
[日間]童話〔その他〕 - すべて
[日間]童話〔その他〕 - 短編 にランクインしました。ありがとうございます。(2026/1/25追記)
「ん?」
木漏れ日が溢れる森の小道を散歩していたロージーは、茂みの中で何かがキラリと光ったような気がしました。
「なんだろう?」
ロージーは足を止めてしゃがみ込むと、茂みの中の光に向かってそっと手を伸ばしました。
「このへんかなぁ?」
ロージーは右手をもぞもぞと動かして、茂みの中を探し始めました。ロージーの指先に少し湿った土と葉っぱがカサカサと当たります。
「あっ!」
しばらくすると、ロージーの指先に土や葉っぱとは違う、何か冷たいものが当たりました。ロージーは腹ばいになると、もっと奥ま手が届くように茂みの中にぐいっと腕を入れました。
「う~ん、どこかなぁ?」
ロージーは指先で地面を少しずつ撫でるように探していきました。すると、ロージーの指先で何か硬い物が転がりました。
「あっ!」
お目当ての物を見つけたロージーは腕を肩まで茂みの中に入れました。ロージーは手のひらでぱたぱたと探るように地面のあちこちを叩きながら、さっき指先に触れた冷たい物を探し続けました。
「あった!!」
ロージーは手のひらに当たった冷たい物をぎゅっと握り締めると、服を破かないように、そーっと腕を茂みから引き抜きました。ロージーが腹ばいのまま右手を開くと、ロージーの手のひらから白っぽいものがぽろっとと転がり落ちました。ロージーは体を起こしてその場に座ると、自分の手のひらから転げ出た物をもう一度拾いました。
「いしかなぁ?」
ロージーが拾ったのは土にまみれた白っぽい色をした石でした。ロージーは座ったまま、自分の拾った石を木漏れ日に透かしてみました。
「うわ~きれい・・・。」
石は木漏れ日が当たるとキラキラと輝きました。ロージーはぽかんと口を開けたまま、自分が拾った石に光が当たる様を見つめていました。
「ロージーっ!」
がさがさと落ち葉を踏み鳴らしながら、一人の少年がロージーに駆け寄りました。ロージーに駆け寄って来たのは兄のローレルでした。
「にいさま!」
ロージーはパッと笑顔を浮かべて立ち上がると、ローレルにぎゅっと抱き着きました。
「ロージー、怪我はない?」
「うん、ないよ。」
「はあぁ~良かったぁ~。」
ローレルはロージーを見つけてほっとしたのか、ロージーをぎゅううっと抱き締めました。
「ロージーが急にいなくなったから、兄さまは心配したんだぞ。」
「うん・・・ごめんなさい。」
「次は気を付けような?」
「うん。」
ロージーはローレルに抱き着いたまま頷きました。
「ねえ、にいさま。」
「何、ロージー?」
「にいさま、あのね。ロージー、いいものみつけたの。」
「そっかぁ~ロージーはいいもの見つけたんだね。」
「うん、にいさまにもみせてあげる!」
ロージーはローレルから体を離すと、手のひらを開いて手の中の物を見せようとしました。
「ロージー、ちょっと待って。」
ローレルは両手で優しくロージーの右手を包み込みました。
「兄さまはここでロージーが見つけた『いいもの』を見せてくれるのも嬉しいけど、今日はお庭で待っている姉さまと一緒に見たいなぁ。姉さまも『そろそろロージーが散歩から戻って来る頃かしら』って、お庭で待ってると思うよ。」
ローレルはロージーが右手を開くのを止めたのを確認すると、ロージーの頭を撫でてながら姉の待つ庭へ一緒に戻ろうと提案しました。庭の方が、森の小道よりもロージーが見つけたいいものを無くした時に探しやすいとローレルは思ったのです。
「えっ、ねえさま、おにわにいるの?」
「そうだよ。さっきお庭で本を読んでたよ。」
「ロージー、おにわにいく!」
ロージーはぴょんとその場で跳ねると、森の出口に向かってぱたぱたと走り始めました。
「ほんと、ロージーは姉さまが大好きなんだから。」
ローレルは苦笑するとロージーの後を小走りでついて行きました。
「ねえさまぁ~。」
庭に戻って来たロージーは、ガゼボで本を読んでいる少女に向かって走り寄りました。そこにいるのはロージーの大好きな姉、フローラです。
「まあ、ロージーったら。」
自分の側までやって来たロージーの姿を見ると、フローラは目を見開き、読んでいた本で口元を隠しました。ロージーの服は泥だらけで、髪の毛には木の葉や草が沢山くっついていました。白かったはずのエプロンドレスは、茶色くなっています。
「ねえローレル。あなた、散歩中にロージーの何を見てたの?」
「え?」
フローラは冷たくローレルに声を掛けると立ち上がってロージーに近寄り、ロージーの髪についた木の葉を取り始めました。ローレルはフローラの行動を見て、ようやく姉のフローラの意図を理解しました。そんな二人の様子に気付くことも無く、ロージーはフローラに話し掛けました。
「ねえさま、あのね。ロージー、いいものみつけたの。」
「良かったわね。ロージー、姉さまにも見せてくれる?」
フローラはロージーの髪についた木の葉を取る手を優しく動かしながら、答えました。
「うん!ロージー、ねえさまとにいさま、いっしょにみせてあげるね。」
ロージーは胸を張って今までぎゅっと握り締めていた右手をぱあっと開くと、手のひらの上の物をフローラとローレルに見せました。
「これ、おひさまにあてるとキラキラするの。」
「キラキラするの?それは素敵ねぇ。」
「光に当てるとキラキラするのか?ロージー、いいものみつけたな。」
「うん!」
ロージーは姉さまと兄さまにも喜んでもらえたのが嬉しくて、満面の笑みを浮かべてフローラとローレルに頷きました。
「ロージーの宝物ね。」
「たからもの?」
フローラは微笑んでロージーに言いましたが、「宝物」の意味が分からかったロージーは首を傾げました。
「ロージー。宝物というのはね、とっても大切な物のことよ。姉さまに見せてくれたこの石は、ロージーの宝物かしら?」
「たからもの・・・うん、これ、ロージーのたからものにする!」
「ロージー。宝物をお部屋に持って行くのなら、泥を落としてからにしましょうね。ついでに、ロージーもお着替えしていらっしゃい。」
「うん、わかった!」
ロージーは宝物となった石を持ったまま、水場に向かって走って行きました。
「ローレル、あなたも着替えた方が良くってよ。」
ローレルはフローラに言われて初めて、自分が森の中で泥だらけのロージーに抱き着かれたことを思い出しました。
「そうだね、姉さん。僕も着替えて来るよ。」
バシャバシャという水音と「ロージーがきれいにするのっ!」と言い張るロージーの声を聞きながら、ローレルも部屋に着替えに戻りました。
ロージーの着替えが終わった頃、フローラがロージーの部屋にやって来ました。
「ロージーは宝物を入れる箱を持っていなかったでしょう?これに入れておくといいわ。」
フローラはロージーが宝物を入れるための、きれいな箱を持って来てくれたのです。
「きれい・・・。」
ロージーは箱をくるくると回して箱を眺めると、箱の蓋を開けました。
「ねえさま、ありがとう!」
「どういたしまして。ロージーの宝物、大事にしてね。」
「うん、だいじにする!」
お庭ではねえさまの服が汚れないように、ロージーはフローラから少し離れていましたが、今はもう綺麗な服に着替えたロージーです。ロージーは遠慮なくフローラに抱き着いてお礼を言いました。ロージーは自分で刺繍したハンカチに宝物の石をくるんでから、ねえさまに貰った箱に宝物をしまうことにしました。
次の日。庭のガゼボの椅子に腰掛けたでロージーは、足をぶらぶらさせながら宝物の石に光に当てて眺めていました。
「んふふ~。」
ロージーは宝物がキラキラと光る様子を見てご機嫌です。そこへ、いとこのルシアンがやってきました。
「ロージー、何やってんの。」
「たからものをみてる。」
ロージーはルシアンの方を見ることも無く、宝物をじーっと見つめながら答えました。ロージーに見向きもされなかったルシアンはむっとしました。
「ふ~ん、宝物ねぇ。」
ルシアンはそう言うとずかずかとローズに近寄り、ローズの手から宝物を取り上げました。
「なんだ、ただの石ころじゃないか。」
ルシアンはガゼボの床に石を投げつけると、靴のかかとで石を踏みつけました。ルシアンが靴で石を踏みつけた時に、ルシアンの足の下でバリっと音がしました。ルシアンは満足気に自分の足を除けると、ロージーの宝物は砕けて粉々になっていました。
「こんなくだらないものが宝物なんて、ロージーはまだまだ子供だな。」
「だめぇぇぇぇ~っ!」
椅子から慌てて立ち上がったロージーはルシアンを突き飛ばすと、粉々になってしまった自分の宝物に駆け寄り、宝物の上に蹲りました。ロージーの勢いにルシアンも尻餅をつきました。
「ロージー、そんなところで何丸まってるんだよ。さっさと起きろよ。」
ルシアンは気を取り直して立ち上がると、尻の汚れを叩いてロージーに声を掛けました。ルシアンの言葉にロージーは顔を上げましたが、ロージーは自分の腕と身体でルシアンに壊された宝物を必死に守っていました。ロージーの目から涙がじわっと溢れてきます。
「うわああああ~ん。」
ロージーは大きな声を上げて激しく泣き始めました。二人の様子を見守っていた大人達はロージーを守るべく動き始めました。ある者はロージーからルシアンを引き離し、ガゼボからルシアンを連れ出しました。またある者は家の中へ駆け込むとロージーの母親を呼びに行きました。あいにくロージーの母親は用事があって出かけていたので、母親の代わりに姉のフローラがロージーの所へやってきました。
「ロージー、どうしたの?」
いつもはフローラが呼ぶと嬉しそうに返事をするロージーですが、ロージーはガゼボの床に座り込んだまま、涙をぽろぽろと流しながら泣きじゃくっていました。ロージーの目の前には粉々に砕けた白っぽい石が落ちており、フローラは何があったのかを察しました。
「ロージー。何があったのか、姉さまに教えてくれる?」
「ル、ルシアンが・・・。」
ロージーは泣きじゃくりながらも、なんとかフローラにさっき起こったことを話しました。
「ありがとう。辛かったのに、ロージーはちゃんとお話しできてえらいわね。」
フローラはハンカチでロージーの涙と鼻水を拭くと、優しくロージーを抱き締めて頭を撫でました。ロージーはフローラに抱き締められたまましばらく泣きじゃくっていましたが、やがてフローラの腕の中で眠ってしまいました。
ロージーが目覚めたのは、ガゼボではなく自分のベッドの中でした。ロージーは泣きながら眠ってしまったのです。
「ロージー、少しは落ち着いた?」
ロージーのベッドの脇にある椅子に腰掛けて本を読んでいたフローラは、冷たい水で濡らしたハンカチでロージーの顔を優しく拭きました。
「ねえさま・・・ありがと。」
冷たいハンカチで顔がしゃきっとしたロージーはフローラにお礼を言いましたが、ルシアンに宝物を壊されたことを思い出したロージーの目には涙が浮かんでいました。
「ロージー。これを見て。」
フローラはロージーに浅い箱に入った物を見せました。ロージーは箱の中の物をじっと見ていましたが、はっとして顔を上げてからフローラの方を見ました。
「ねえさま。これ、ロージーの?」
「ええ。形は変わってしまったけど、ロージーの宝物よ。」
フローラはロージーに向かって優しく頷きました。
「ねえ、ロージー。ロージーはこれ、どうしたい?」
「どう?」
ロージーは首を傾げました。
「姉さまの言い方が分かりにくかったわね。この箱の中に入っている物を、もう壊れてしまったからいらないって捨ててしまうのと、形は変わってしまったけど宝物として大事にしまっておくのと、ロージーはどっちがいい?」
「う~ん。ロージー、しまっとくのがいい!」
ロージーは少し考えてからフローラに返事をしました。
「ロージーの宝物としてしまっておくのね。」
「うん!」
「でも、このままだと宝箱にはしまいにくいわねぇ。」
「ふくろにたからものをいれてから、ロージーのたからばこにしまう!」
「それはいい考えね。それなら、姉さまと一緒に宝物を入れる袋を作りましょうか。」
「いいの?」
「ええ。姉さま、ロージーならきっとそう言うんじゃないかなぁと思って、端切れとリボンも持って来たの。」
フローラはそう言うと、後ろのテーブルに置いてある箱を見せました。
「うわぁ~いっぱいある!」
「ロージー。どれでもいいわ。好きなのを選んでね。」
「うん!」
ロージーは迷いながらも箱の中から気に入った端切れとリボンを選ぶと、その日一日かけてフローラと一緒に宝物を入れる袋を作りました。
「できた!!」
「ロージー、頑張ったわね。さ、宝物をしまいましょうか。」
「うん!」
ロージーはフローラに宝物の欠片を袋に入れてリボンをかけてもらうと、そっと宝箱の中に袋をしまいました。
「ロージー。宝物は大切にしないとね。」
「うん・・・わかった!」
ロージーの笑顔を見て、フローラはホッとしました。
次の日、ルシアンが庭にいるロージーの所にやってきました。ルシアンの手には何やら小さな箱が握られています。
「あんな石ころよりも、こういう物を宝物って言うんだよ。これ、ロージーにやる。」
ルシアンは自慢げに持って来た箱を開けました。中にはロージーの宝物に似た白い石のついた綺麗なブローチが入っていました。
「ロージー、いらない。」
ロージーは箱の中をちらっと見ると、キッとした目をしてルシアンに答えました。
「は?これは王宮御用達の店でしか買えない代物なんだぞ!」
「ロージー、たからものもってるからいらない!」
ロージーは席を立つとルシアンからさっと離れました。
「ルシアンなんて、だいっきらい!」
ロージーはそう言ってルシアンに向かって大きく舌を出すと、後ろを振り返ることなく家の中へ入ってしまいました。
「ロージー、なんでだよ・・・。」
ブローチの入った箱を握り締めたまま、途方に暮れたルシアンは、ひとり庭に取り残されたのでした。
何とか企画開催期間内に投稿できて良かったです。
別ジャンルになりそうですが、ロージーを取り巻く人々の物語も書けそうな感じがしてきました。ご希望の方、いらっしゃいましたら是非是非お知らせ下さい。
あとは拙作の宣伝になりますが、ご賞味頂ければ幸いです。
・小説家なろう公式企画 冬の童話祭参加作品集↓(こちらはシリーズのリンクになっております)
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・小説家なろうチャレンジ企画『お題で飛び込む新しい世界』「戦記」参加作品
新人補給兵マールの一日(2話完結の連載、完結済です)
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・現在連載中の作品
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今回も最後までありがとうございました。




