06
キ、ギキィ!?
……グルルゥ…
目を見開き、焦る素振りを見せる猿。
反対に、犬は俺を視界から外さず、喉を震わせている。
「さぁ、どうする?丸見えだぞ?」
ゆっくり、一歩ずつ距離を詰める。
するとキメラは、
腰を引き、足を後ろに少しズラした。
やっぱりか。
「クカカッ…また逃げるのか?」
一歩。
「この状況で?
そっちの犬の方がよっぽど賢いんじゃねぇか?」
もう一歩。
キメラの体が、ピクリと跳ねる。
猿の大きく開いた目が、犬を見る。
歯を剥き出し、
低く、喉の奥が揺れる。
当たりだな。
「どうした?逃げねぇのか?」
あと、一歩。
「お前の、唯一の特技だろ?」
キメラが…いや、
猿が、跳んだ。
来た。
喉が鳴り、僅かに口元が歪む。
───猿が、嗤った。
キメラの視線がズレる。
その瞬間。
リリベルの方へ───。
「…あ?」
空気が、凪ぐ。
ふわりと浮かんだ足。
締め上げられた首。
ギャ……
キュ…ゥ…
リリベルの手が、キメラの首に食い込んでいる。
……速い。
けど、まだ見えるな。
アレが飛び掛かった瞬間、表情を一切変えず、二つ同時に締め上げやがった。
「……あ」
リリベルが首から手を離し、目を伏せた。
…あぁ、見てんのに気付いたのか。
地面にへたり込んだキメラは、はくはくと口を動かしている。
「やっと、止まったな。」
体が跳ね、目を見開くキメラの心臓に、剣を突き立てる。
今度は、静かだった。
「これでよし、と。」
キメラの首からドアノブを外し、ドアへと嵌め込む。
「ありがとなリリベル、助かった。」
……?
「どうしタ?そんなマヌケ面して。」
「…ま…ぬけ?」
リリベルは、ぽかんとしたままペタペタと顔を触り出した。
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫…テオドア。」
「テオでいイって。大丈夫なら行くぞ?」
小さく頷くリリベルを背に、俺はドアを開けた。




