20
言っている意味が、わからねぇ。
リリベルもだ。
パチ、パチとブーツの留め具を外す音が響く。
開いたブーツの隙間から、白い毛が覗く。
あぁ。まぁ、そうだろうな。
出てきたのは、白い獣の足。
リリベルは、スカートの中からナイフを取り出す。
…最後は、お前か。
リリベルはその場で数回跳ね、消えた。
瞬間、俺の左下に白が走る。
後ろに仰け反り、刃を避けた。
「…ッ」
脳が、揺れた。
足が、後ろへ数歩ふらつく。
マズい、次が。
反射的に剣を取り出し、刃を受け止め───。
剣が、弾かれて飛ぶ。
手に力が…
振り抜けてしまったリリベルは、体勢を崩す。
隙。
もう片方の剣の柄に手を掛け──
止まる。
理由もなく、力を抜いた。
リリベルを目で追う。
リリベルは、体勢を整え跳んだ。
…遅えな。
肩を押され、地面に強く背中をぶつけた。
息が出来ねえ。
胸が…。
腹に乗り、ナイフを振り上げる。
…終わりか。
来るだろう衝撃に、目を閉じる。
ハハ…何してんだ、俺。
小さく息を吐く。
……………来ない。
腹の上から動いた気配は無い。
遅え。なにしてんだ。
……あ?
目を見開いた。
俺は、重い腕を無理やり持ち上げ、
頬に伝う涙を拭う。
その時。
静かに、呟くような声が響いた。
「…どうして、反撃してくれないの。」
その声が、今にも壊れてしまいそうで。
「…大、丈夫か?」
ただ、それしか出てこなかった。
「私は、ソフィアなのにっ。
殺さなきゃ、いけないのに…」
…手が、足りねぇな。
「なぁ…お前、名前は?」
無理やり体を起こす。
震える目を、覗き込む。
「…お前は、どっちで…呼ばれたい。」
リリベルが小さく息を飲む。
「私…。私の名前…は……」
震える青い瞳が、俺の目を捉える。
「…リリベル。リリベルが、いい…」
その声は泣いていた。
「あぁ、わかった。
…リリベル。もし、よければ…。」
視界が歪む。
「俺と、一緒に…来ない、か……?」
体が落ち、意識が回る。
…ま、て。まだ…
体が浮いて、揺れる。
まだ…おちないでくれ…
視界が、暗くぼやける。
──瞬間。
風が、ふわりと頬を撫でる。
赤が、視界を舞った。
「やぁテディ。死んだかい?」
ここに来る前も聞いた、腹の立つ声。
だが。
「リリベルを、頼む」
その言葉が、届いたのかは分からない。
確認する前に、意識が深く沈んでしまった。
読んでいただき、本当にありがとうございました。
テオドアが高熱で倒れてしまったため、
ネリネの約束は、ここで終わりとなります。
この後に、
リリベルが組織に入り、日常を過ごせたかもしれない
――そんな「可能性の未来」のお話を、おまけとして置いています。
ただの日常の一コマですが、
もしよければ、覗いていただけたら嬉しいです。




