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16 ─テオの夢─


あと少しで、終わる。


「…悪魔め。」

足元に転がっている奴らの1人は、それだけ言って死んだ。

 

「悪魔…か。テメェらよりマシだろ。」


はあ。

服が、血で濡れて重い。

むせ返る匂いが気持ちわるい。


さっさと次に──。


ギッ


床の軋む音。

まだ、いたのか。


振り返り、眉根を寄せる。


薄汚れた白い髪に、ボロボロの服。

アザだらけの小さい体が震えている。


あぁ、こいつも。


そう思うと、ため息が零れた。

ナイフを持つ手に力を込め、一歩近づく。


「……き、れい…」


は? 何が…。



小さい体が発した、その言葉に俺は動きが止まる。

…そいつの青い眼が、真っ直ぐ俺を見据えていて。


「…お前、俺に言ったのか?」

思わず、そう聞いた。


そいつは、ただ小さく頷き、

…グゥと腹を鳴らした。


「…クッカカカッ!お前…!」


俺は、腹を抱えて震えるそいつの前でしゃがむ。


…これしかねぇか。

途中で盗ってきた、緑と赤の紙に包まれたチョコを取り出す。


「おい、顔上げろ。」


ビクッと体を震わせ、ゆっくり顔を上げたそいつの口に、チョコを突っ込む。


「これやるよ。うめぇだろ?」


その澄んだ青い目が、見開かれ段々とと丸く輝いていく。


…あいつの青より

こいつの方が、ずっと綺麗だ。


「お前、名前は?」


「名前…リ、リ…けほっ」


「リリか。覚えとく。」

なんか、聞いちまった。


そろそろ行くか。

立ち上がり、背を向ける。


「連れてって、くれないの?」

後ろからそう聞こえ、思わず振り向いた。


連れてく?


「お前…俺が怖くねぇの?」


「こわい…? きれい、なのに?」

息が、詰まった。


…そんな、当たり前みたいに言うなよ。


「…クッカカッ…お前、やっぱ…。

…いいぞ。でも、今はまだ無理だ。いつか、また会いに来てやる。」


だから。


「その時もまだ、一緒に来たいって言うなら

…そんときは、連れてってやるよ。」


そいつは、嬉しそうに顔を緩める。

その様子に、俺は目を細めて。


「約束だ。これ、もう一個やるからちゃんと覚えとけよ。」


「…やくそく。」

俺が渡したチョコを、ぎゅっと持って呟く。



「じゃあ、またなリリ。」


いつか、また。

俺は、リリを置いてその場を離れた。



でも、いつかは来なかった。



『テディ、お前に頼まれてた少女なんだが…


──引き取られた先で亡くなったそうだ。』




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