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「…リリベル?」


俺は少し背を丸め、痛む体を庇うようにハッチに近づく。

踏み出すたびに床を跳ねる水音が、やけに大きく聞こえた。



「開けるぞ。」



ハッチを開け──



…開かねえ。




壁みてぇに、重い。


「おい、聞こえてるか?返事しろ。」



何か、あったのか?

いや、聞こえてねぇだけだ。


…そうだろ?

緊急ハッチだ。安全じゃねぇはずが…


扉を叩く。


返ってきたのは、



……鈍く、こもった水音だけだった。




そんな…はずは、



ロックは、外した。

開かないはずが無い。


さっきより強く引っ張る。

…押すんだったか?


手が痺れて感覚が無い。


いや、なんで焦ってる。

リリベルは敵だ。

何かあったとしても──。



…チッ。



…こんだけやって、動かねぇってことは。



やっぱりそうか。


扉の隙間から見える金具が、噛み合ってない。



金具に剣を引っ掛ける。


眉根を寄せて、目を閉じる。

剣を持つ手に力がこもる。


その全ての力を抜くように息を吐き



──剣に、全体重を掛ける。



「…ッグ…ァ」


息が漏れる。

鋭さを帯びた痛みが全身に鈍く広がる。


頭に血が上る。

倒れ込む力も、剣に乗せる。



…ミシッ。


金具が悲鳴を上げ、


ガンッ!!


水が噴き出し、その勢いでハッチが開く。


噴き出す水が、俺を後ろに倒す。



──その時。


視界に白が映った。

水と一緒に流れ出てきた、重く冷たいそれが鳩尾部分にぶつかる。


反射的に、それを抱きとめる。

衝撃で骨が嫌な音を立てた。

突き刺すような痛みが全身に広がる…感覚はするが、今はどうでもいい。


腕の中のそれが、力無くだらりと垂れた。





「…あ?」




…冷たい。



「リリベル?」


肩を、軽く揺さぶる。



「…おい、起きろ」


水の音がやけに遠いな。



「…おいって、起きろよ。」


なんで、起きないんだ?



「水…抜けたぞ?」


リリベル…






………息、してない…?




瞬間。

全身が粟立ち、手が震える。


なんで。

緊急ハッチだろ?

おかしい。

何で水が…


……?



……俺、が入れたのか…







…いや、今はそれじゃねぇ。


リリベルだ。


胸に手を当てる。

呼吸は、していない。

だが、


まだ、生きては…いる。


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