12 ─リリベル視点─
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
耳痛い…
さっきまで静かだった廊下が一気にうるさくなる。
唐突に鳴り響くサイレンに、耳を塞ごうとした。
──その手を、強く引かれた。
「チッマジか!走るぞ!リリベル!」
体が、ガクンッと傾く。
だめっ!
足が、もつれて!!
「……あ!!!」
体が前に落ちる。
ぎゅっと目をつむった。
瞬間。
横に強く引き寄せられ、テオの硬い胸にぶつかる。
「っぶねぇ!大丈夫か?」
「…うん。」
どうして、
ガシャンッ!
あ。シャッターが
…私の、せいだ。
「ごめんなさい…。」
怒られ──「いや、俺が悪かった。ごめんな。」
「…どうして。」
また。
分からない。分からない。分からない。
どうして謝るの…?
どうして。
頭が回る。
息が出来ない。
…意味が分からない。
「…った。行くぞリリベル!」
「…テオ? …!」
お腹に衝撃。
ふわっと足が浮いた。
えっ、抱え…なんで
足冷たい…?
…水?
テオが壁についてる小さいドアを開け、その中の空間に私を押し込むように入れる。
何、ここ。
暗いし、狭い。
ガコン。
何の音?
その時。
テオの口もとが緩く結ばれ、
「リリベル。そん中で出来ることないか探してくれ。俺はこっちでやれること探すから。」
微笑みながらそう言った。
テオは?
そう言おうとした。
でも、できなかった。
声、辛そう…だった?
ドアが閉められ、一気に暗くなる。
轟々と鳴り響く水の音が少し小さくなった。
どうしよう……あ。
……出来ること、探さなきゃ。
暗い…けどちょっと見える。
立てはしないけど少し余裕あるし、奥にもちょっとだけ行ける。
…冷たい。
水、入ってきてる。
何かできることは…
しゃがみながら、壁や床を手で触りながら探る。
すると、手に何かが当たった。
何、これ?棒…みたいな
上に何か文字がある。
《……排水……ー》
「はい…みず?」
何て読むんだろう
排は…排除?排除は消すことだから。
水、消す?
あ、これ動きそう。
棒を動かそうとした手が、ぴたりと止まる。
私、何…してるんだろう
─
『ソフィア。
今回は、偶然良いものが手に入ってね。
なかなか試せない複合獣達のデータが取れる滅多に無い機会なんだ!もし、複合獣が君に手を出すことがあれば別だけど、
──君は、手を出してはダメだよ。』
『はい。』
『じゃあもう一回確認だ。君の役目は?』
『監視範囲外の監視と…』
─
「被験体の処理…」
そっと棒から手を離す。
手、出したらお仕置き。
壁にもたれて、
離した手で、丸くなるようにひざを抱えた。
ひざに頭を置くと、頬に水が当たる。
「…寒い」
……あ、そうだ。
ポケットの中から飴を取り出し、ぎゅっと握りしめる。
あれ?さっきはあったかくなったのに…。
そっと手を開くと、飴が水に浮かんで転がる。
だめ。どっか行っちゃう。
慌ててポケットに飴をしまう。
……………苦しい…。
耳に水入ってくるのうっとうしい。
上、向かないと口に水入るのに…
体重い…
空間が水で満たされて、もう空気…来ない。
……もう…いいや。
体を、水に預ける。
ッドン!
壁に何かが勢いよくぶつかるような音。
…てお?
どう…したんだろう?
あ、そっか。実験…。
…そういえば、
なんであの時、笑ってたのに辛そうな声だったんだろう…。
どうして、テオは怒らないんだろう…
どうしてテオは…
…どうして。
そっと手が伸びる。
…カ、チャン…
ゆっくりと、棒が降りた。
…ぁ…私…
遠くで激しくベルが鳴る。
…うるさい。
もう、どうでもいい。
意識が水に溶けた。




