第19話 ヨハネの四騎士 4
― 着地、撤退。そしてCIAへの激怒 ―
ロータのエア・ホースは、もはや飛べる状態ではなかった。
夜風に煽られるだけの“白い残骸”。
そのとき、無線に割り込む声があった。
『ヨハネ黙示録四騎士部隊。
任務を一時中断。六本木ナマズ・ビルへ帰還せよ』
ユリア・フォン・ハーケンの冷たい声だ。
「撤退……?」
イザベルの声には明らかな不満が滲む。
「ロータが損傷している。……撤退、推奨」
ヘルマンの静かな助言が落ちる。
「撤退だぁ!? ふざけるな。まだ殺し足りねぇ!」
ルカが吼えた。
その怒りを断ち切ったのは、ロータの叫びだった。
「ルカ!! 撤退だ。今すぐだ!!」
普段、決して声を荒げないロータが怒鳴った。
ルカでさえ黙らざるをえなかった。
ロータは壊れた計器を見ながら言った。
「アパッチのフライトコード……CIAブラックセクション。
今回の襲撃は、CIAによる“我々への攻撃”だ。
御子神龍雅だけでなく、MSOそのものを排除対象に入れている」
「つまり……CIAは私たちすら敵?」
イザベルの目つきが鋭くなる。
「諸元照合──確定。
CIAは、MSOにも、御子神龍雅にも敵対。
ミッション……崩壊中」
ヘルマンの分析が淡々と響く。
ルカは歯を噛みしめ、ハンドルを叩いた。
「クソッ……!
CIAの野郎ども。X2500を独り占めにしたくて俺たちまで殺りにきたってわけか……!」
「だから一度引く」
ロータは短く言う。
「状況を整理しないまま進めば、全滅する。
これは命令だ、ルカ」
「……チッ。分かったよ。地上に降りる」
四騎士のエア・ホースは高度を落とし、多摩川沿いの廃倉庫へ次々と着地した。
ロータの機体は爆風の残骸と化し、鉄くず同然になっていた。
降り立ったルカは、空を睨みつけ、唸った。
「覚えてろよ……CIAのクソども。
俺たちを殺そうとした借り──必ず返す」
イザベルは怒りを隠さず、指先を震わせていた。
「CIA……次に会うときは、“恐怖の味”を思い知らせてあげる」
ヘルマンだけは、ロータを見つめていた。
「ロータ……“内側”に禍々しい因子。……処置、急務」
ロータは疲れた声で答えた。
「……後でいい。まずは帰還だ。
計画を練り直す」
ルカがエンジンをかけ、ロータを後ろへ乗せる。
黒・赤・蒼の三機が前を走り、
四騎士は陸上モードで首都高速へ駆け上がっていく。
撤退──
しかしそれは敗走ではない。
復讐と真実へ向かう、“反転の第一歩”だった。




