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第16話 ヨハネの四騎士 1

 

 溢れるネオンの瞬きが色を変えて街を照らし、酔客があふれる、六本木、外苑東通り。


 高層ビルの谷間を高級外車の列が並ぶ。


 だが、その夜だけ、或る一角で"何か"が街の呼吸を変えた。


 白い稲妻のような影が、


 六本木通りの交差点に静かに立った。


 その者は、秘密結社、メンゲレの息子が東京に送り込んだ、殺しの特務工作員プロフェッショナル


 第一騎士──白い馬の騎士シュタール・ロータ


「獣の封印者(Beast-Sealer)」


 白磁のように無表情な顔。


 まばたきが極端に少ない。


 全身に「整形の痕跡」がある。


 メンゲレの"双子整形法"を受けた生き残りの系譜に連なる男


 右目は人工虹彩で、視力はなく生体反応計測器として作られている


 白い軍服ではなく、白衣に近いコート


 清潔、無音、匂いすらしない


 動物の血だけは激しく嫌悪する


 白磁の肌。


 無音の歩み。


 六本木交差点の信号の前にたむろしていた半グレ集団の前に、ロータは立っていた。


 半グレたちは退屈しのぎに彼にちょっかいを出す気になったようだった。


 ロータを取り囲んで笑う。


「おい白いの、パン屋のコスプレか?六本木舐めんなよ、兄ちゃんよォ」


 ロータは返事をしない。


 視線すら向けない。


 ただ一点、夜空を見ていた。


「テメェ、無視すんじゃ──」


 半グレが拳を振り上げたその時、その男の首が、ゆっくり横を向き……そのまま舗道の上に倒れ込んだ。


 誰もロータが触れたところを見ていない。


 だというのに、半グレの喉元には、"抉られたような穴"だけがあった。


 ロータの武器、不可視の遺伝子共鳴ナイフが喉を裂いたのだった。


 動脈血が噴水のように噴き上がっている。


 残った連中が青ざめるより早く、背後で光が弾ける。


「おい、なん……」


 そこには、赤銅色の巨躯が立っていた。


 第二騎士──赤い馬の騎士ルカ・アウゼン


 半グレの断末魔の痙攣を、楽しそうに眺めていた。


 流暢な日本語で、倒れた半グレの仲間を挑発する。


「なに怯えてんだよ。ほら、闘えよ?"戦争"好きなんだろ?」


 だが半グレ達は闘えない。


 立てない。


 よろよろと腰から崩れ落ちる。


 ただ視線を向けられた"だけ"なのに。


 赤い騎士の周囲の空気は"闘いのフェロモン"に満ちていた。


 そこへ、影の中から痩せた女が歩きだす。


 第三騎士──黒い馬の騎士イザベル・エーヴァルト


「……あなたたち、栄養状態が悪いわね。飢餓の匂いしかしない」


 彼女が吐息をフッと半グレ達の耳元に漏らした瞬間、


 頽れていた半グレ達は一斉に、沸騰した動脈血を嘔吐し、


 膝を抱えて痙攣を始めた。


 出血によって、体循環を維持する血流が落ち、生体内の体液平衡バランスが瞬く間に崩壊を始めたのであった。


 最後に──、


 誰も気づかなかった方向から


 突然"蒼い影"が現れた。


 第四騎士──蒼い馬の騎士ヘルマン・グルーバー


 舗道で転げまわる血反吐を吐く半グレに歩み寄り、手をかざ


 痙攣していた半グレのひとりが動かなくなった。


 苦しまず、暴れず、ただ静かに"呼吸が停止した"。


 残った半グレも、すぐにあとを追って、同じように動かなくなった。


 四人がいつからそこにいたのか、


 誰も分からない。


 四騎士は、六本木の雑踏を歩き去っていった。


 彼らは道行く人々を避けるようにすり抜け、誰も存在に気づかない。


「実につまらぬ人間共、そして、実につまらぬ街だ……」


 ロータは、むなしそうに目を閉じた。


「次は拠点ランデヴーポイントに来いと、案内が来ている」 


 ヘルマンが呟いた。





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