第62話 黒幕の正体
バスを襲ったソードのバイク部隊。
武藤ら警官とPCLの精鋭、そして尚巴と麻理子が迎え撃つ。
クロスライトはソードのメンバーに語り掛けるが、来斗の目前に現れたのは・・
ソードの襲撃は一時収まり、両者は膠着していた。
電動門扉は動かず、浜比嘉がヒムカに入るには隙間を塞ぐバイクを乗り越えるしかない。だがその瞬間は格好の標的だ。情報では、おとりの警護車を襲撃したソードは自動小銃で武装していたらしい。
-バスの男は拳銃だった。こいつら銃を持ってないのか?ってことは、こいつらは主力ではない?
-そうか、だから4名の警官隊でも押さえられるし、突っ込んでくるヤツはバイクで特攻か。
-しかし銃を絶対持ってないって確証はない。切り札に温存してるのかも。
-それなら応援が来るまで、そこまで持たせれば。
そう思案する武藤の目の前に数名が歩み出て、双方の間に入る。
中竹真也と榊次郎を引き連れてソードに相対する少年。
黒主来斗だった。
「黒主君、危ないぞ!その人たちと後ろに下がって!」
警戒する武藤だが、それには真也が応えた。
「大丈夫です。やり方は過激ですが彼らもPCLなんです。来斗君を傷つけることはありませんよ。僕たちの役目も、来斗君が闘いに巻き込まれない為の護衛なんですから」
真也の言うとおりだった。先ほどのバスの中、ソードは来斗に銃口を向けなかったのだ。
来斗はソードの一団に語り掛ける。
「皆さん、クロスライトです。先日のテレビ番組の中で、僕が皆さんにお願いしたメッセージは、届いているんでしょうか?・・」
来斗は4日目への希望を語る番組の中で、PCLと共に、特に過激な思想を持つソードもこれからの世界を変える人類の希望だと伝えていた。
今また、来斗はソードの目の前でそれを語る。 その後ろでは、小鉢が興奮していた。
「カメラ!ちゃんと撮ってるか?さっきの戦闘も撮ったな?今だぞ今!さくらちゃん日本語実況!しほりちゃん英語でテキスト実況して!中丸、局に連絡しろ!配信だって、クラウドに上がるからすぐに取って世界配信だって言え!」
ソードに語り掛ける来斗の姿が、救世主クロスライトとして世界に降臨する。
「・・お願いです、僕の目の前にいる皆さん、僕の考えを理解して欲しい。僕と共に、これからの人類の未来を見つめませんか?」
心酔するクロスライトが目の前で直接メッセージをくれた。それに、お願いだとも言っている。
ソードの面々に陶酔を含んだ静寂の時間が流れる。だがその静寂は、ひとりの男の大げさな拍手で破られた。
「ひぃゃあーーっはっはぁ!ご演説、さいっこうでしたぁああーーっ」
手を打ちながら叫ぶのは、ソードの中央でバイクに跨がる小柄な男だった。男はバイクを降り、フルフェイスのヘルメットを取りながら歩み出る。
その男の顔を、来斗は知っていた。
「う、上村・・・か?」
男は来斗の同級生、上村由羽だった。
上村は最初の5月28日に武藤弘志らと来斗を虐め殺し、次の28日には来斗に殴り殺された。更に次の28日に自分の父親が来斗の母を殺害し、来斗に瀕死の重傷を負わされている。
「上村、お前、しゃべれなくなったんじゃ?それにそのバイク、中学生なのに」
「はぁっ?そんなのいつの話だよ!確かにお前に殺されてしゃべれなくなったけど、あれから何回死んだと思ってるんだ?もう死ぬことなんて怖くないんだよ!」
道につばを吐き捨て、上村が来斗を見据える。
「それにお前さぁ、こんな世界だぞ?中学生がバイクに乗ったごときで咎めるヤツなんて、いると思うのか?」
上村は後ろを向き、来斗の言葉に揺れるソードに問い掛ける。
「どう?クロスライトなんてこんなヤツ。ただの口が上手い中学生なんだ!ほら、僕を見てよ、ソードでも注目の若手筆頭株!裁いた人間も数え切れないよ」
右腕を胸に当てて吠える上村は、その残忍な裁きで一目置かれていた。
「4日目なんてないんだ。この3日間で人生完結!ねぇ、そうでしょ?この考えを否定するヤツはみんな犯罪者だ、みんな裁いてやろうよ。ほら、僕たちでさ!」
上村の言葉はそれなりの説得力を持っていた。ソードたちに動揺が広がる。
「上村君!」
声を掛けたのは武藤だった。武藤には、どうしても知りたい疑問がある。
「武藤だ。武藤弘志の父親だ。ひとつ教えてもらえないか?君たちはここを、この場所をどうやって知った?」
宮崎というキーワードは浜比嘉から漏れた。だが、そこから先に何があるかは漏れていないはずなのだ。しかも浜比嘉教授の身代わりは極秘のはずだった。
「あぁ、弘志のお父さんですね。聞いてないんですか?そうですかぁ・・教えてもらったんですよ、弘志に。弘志は、俺の親父を追い掛けろって言ってましたぁ~」
「な・・ひ、ひろしが、ソード?」
「そうです、あいつもソードですよ。元々は来斗に殺されて恐れて、そしてクロスライトに感化された、ただのPCLでしたけどね」
-ソードの要員がどれほど居るのか掴み切れてはいなかった。だが、まさか弘志が・・しかも弘志が、俺を追えと言った?
武藤の頭の中で、弘志の顔が浮かんでは消えた。
「以前、僕は弘志に、あなたの息子に従うだけのクズだったけど、今は違う。ソードの中では僕の方がずっと上なんだ!僕の言うことはなんでも聞きますよ?あいつ、警察官の息子の、ひ・ろ・し・君は」
-弘志は気付いていたのか。もしや安藤さんとの電話を聞かれた?しくじった。警察官の俺から情報が漏れてこの事態を招いたなんて!
武藤の肩が震えている。歯ぎしりの音さえ聞こえる。
「それにもう、ソードの主力にも連絡しました。すぐに九州全域からここに集まりますよ?あいつらも最初から僕の言うことを信じればいいのに、拳銃1丁しかくれなかったし・・」
そこまで言うと、上村は不意に胸を張り、空を見上げる。
「でも・・今回のことで僕がソードのトップに立つ、かもしれないなぁ」
陶酔に浸る上村をよそに、来斗が小鉢を見やる。
「小鉢さん、いいですか?これから僕が前面に出ます。その光景をしっかり撮って、世界に同時配信してください。お願いします」
頷く小鉢に背を向け、来斗は一歩前に出た。
「世界のPCLの皆さん、この光景が見えていますか・・・」
「なに勝手に喋ってんのさっ!みんな、もうこんな奴、やっちゃおうっ!!」
上村が吠える。それを合図にして、バイクの一団が襲いかかって来る。その攻撃が向かう先には、来斗もいた。
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