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第60話 浜比嘉襲撃、第2幕

警察の身代わり作戦によってソードの浜比嘉襲撃は失敗した。

だがソードの中には、全く別の方法で浜比嘉に迫る者たちがいる。

その情報を掴む日本警察。

浜比嘉襲撃、第二幕の始まり。


 5月28日、午後16時、宮崎空港。


 駐車場に停まった観光バスの車中に、浜比嘉青雲の姿があった。傍らには喜屋武尚巴と麻理子、更に5名の宮崎県警警察官、そして安藤刑事と武藤刑事がいる。


 そして最後部の座席には中竹真也と榊次郎に挟まれて、黒主来斗が座っていた。


 観光バスのそばにはマイクロバスが2台、1台にはテレビニッポンの小鉢プロデューサーらテレビクルー、そしてPCLからひとり、狩野ひろみが来斗専属のスタイリストとして同乗している。


 もう1台には観光バスのふたりと同様、黒主来斗が信頼するPCLの精鋭が乗っている。そのメンバーは自衛官や警察官、学生もいたが、共通しているのは全員が格闘に長けているということだ。


 そんな中、麻理子と尚巴を前に浜比嘉は複雑な表情を見せている。


「しかし麻理子ちゃんたちが来るとは思わなかった。電話でも言ったけど、叔父さんは過激派に狙われてるんだ。危険なんだぞ?」

 心配する浜比嘉をよそに、麻理子はそんなことお構いなし。

「大丈夫よ叔父さん!私これでも空手6段よ?尚巴さんは5段だけど。それよりね、私たちがここまで来れたのは、武藤さんたちのお陰なの。警視庁のサットさんを運んだ自衛隊の飛行機をもう1機飛ばしてくれたんだから」

 ニコニコの麻理子を苦笑いの尚巴が諌める。

「麻理子、あれは俺たちのためじゃないぞ?俺たちはあくまで叔父さんの傍に付き添う役目!主役は黒主君じゃないか」

「尚巴君、それにしたって私のために黒主君の家まで直談判しに行ってくれたんだろ?それがこの結果に繋がった。因果律ってやつだ。結果には必ず原因がある。理論物理学の基本だ」

「やだ、叔父さん学者さんみたい」

「む・・むぅ?」


 浜比嘉たちの話を聞いていた武藤が口を挟む。


「教授、おふたりに来てもらうと決めたのは安藤さんと私なんですよ。この作戦は元々警察庁の立案で、その発動は我々に任されていた。つまりプランBと言えばいいんでしょうね。大規模な警護体制ではないからこそ敵を欺ける。そのためには身内すら、警察幹部すらこの計画はご存じないんです。そこになぜか色々と知ってる姪御さんご夫婦が現れた。置いてくるわけにもいかないんですよね。情報漏洩には1ミリの隙も許されない、ってことで」

「はぁ~、なるほどそういうことでしたかぁ。と言うことは麻理子たちがここにいるのは・・・たはっ!こりゃ俺のせい!!」


 浜比嘉は麻理子たちを巻き込んだ原因が他ならぬ自分だと悟って、額をパチン!っと叩いた。


「しかし、おふたりが揃って空手の達人っていうのは出来すぎですけどね」


 そう言って笑う武藤に、安藤も加わる。


「ところで麻理子さん、私はずっと前からあなたを知っているような気がしてならないんだが、私の顔に見覚えはありませんか?」

 麻理子は首をかしげながら、まだ伝えていなかった事実を明かした。

「いえ、今日が初めてですけど、実は私、時間が戻った瞬間にビルの屋上から飛び降りるんです。だからこれまで何百回も死んでて、もしかして、一番最初のとき・・」

「あっ!あの飛び降りのお嬢さんか!!あの最初の日、私が現場に急行したんですよ。あの日は黒主君の事件もあったからそのまま1日中仕事で、その後も私は黒主君の事件に付きっきりだった・・・そうですか、あのお嬢さんが、あなたなのか」


 武藤が”そんなまさか”という顔をする。


「しかし女性とはいえ、ビルから落ちる大人ですよ?誰がどうやって助けたんです?」


 武藤の疑問は当然だった。


「あ、それは俺が」


 尚巴は麻理子を助けるに至った経緯と、それからずっと助け続けていることを話した。


「つまり、今日の朝も俺たちは麻里子を助けて、今ここにいるんですよ」


 武藤と安藤が顔を見合わせる。


「そ、それは・・何というか」

「そりゃすごい、落ちてくる人間を空中で受け止めるとは。空手の達人だから出来たのか、いや、それほどに強い絆があったのか・・何にしてもすごいですよ、安藤さん」


 言葉を失う安藤に対して、武藤は最大の賛辞をふたりに送った。


「よし!ではそろそろ行きましょう、ヒムカへ!」


 武藤の声を合図に、バスは宮崎空港駐車場を出た。



 車中、安藤がこれまでの経緯を説明している。


「午前中、偽装警護車部隊は国道10号を北上し、西都方面へ分岐する前に追尾していたソード20数名と接触、銃撃戦になりました。これは機動隊とSATが制圧に成功しています。その後警護車はそのままヒムカに向かっていますから、ソードがすでに襲撃を諦めている、という可能性も否定はできません」

 浜比嘉が問い掛ける。

「では、もし私が普通に乗っていても、無事にヒムカに入れたってこと?」


「・・いえ」


 安藤の声が重いものを含んだ。


「ソードの銃撃で警護車は大きなダメージを受けました。車内に入り込まれての乱射です。警官2名が撃たれ、うち1名は重体です。身代わりのことはもちろん秘匿されていますから、襲撃は失敗、とソードは思っているでしょう。ですから・・」

「そうでしたか。私の身代わりに・・申し訳ないです」

 俯く浜比嘉の肩を、安藤がポンッと叩く。

「警察官に危険は付きものです。それに使命を果たしてのことですから、誇りこそあれ無念はないんですよ。それは私や武藤さんも同じです」

 安藤の言葉に武藤も大きく頷いている。ふたりの表情に、浜比嘉はホッとした。

「ただ気になるのは、追尾と襲撃を同じ連中がやったってことです。つまり、襲撃専門の部隊がいなかったということ。ソードの組織力を考えると襲撃部隊の不在は不自然。更に宮崎県外からも入ってきている可能性が高いんですよ。つまり、午前中は襲撃部隊そのものが間に合っていなかったという可能性もあるんです」

「なるほど、宮崎県外から・・鹿児島とか熊本とか?大分だってそうですね」

「陸路の場合ならどこからでも。それと、各地から航空機で入ってる可能性もある。まぁ航空機で大人数は目立つので、ごく少数が宮崎入りして合流、ってとこでしょうけど」


 バスは国道と県道を乗り継ぎ、大回りしながら西都市に向かっている。土地勘のない県外のソードは追尾できないという判断からだ。


「とにかく、ソードはまだヒムカの存在や場所を知らないんです。だから今回、なんとしても教授を秘密裏にヒムカまで送り届けたい。場所が割れていると最悪の場合、教授ではなくヒムカへの直接攻撃ということも起こり得ますから」

「じゃ安藤さん、他のボウのメンバーはどうなんでしょう、危なくないですか?」

「もちろん厳重に秘匿された行動を取っていただいています。もう宮崎入りされていますが、浜比嘉教授には教授にしか出来ないお仕事がありますよね?他のメンバーは教授のお仕事の後でもいい、ということです」

「はぁ、つまり実験開始に間に合えばいい、ということか」

「まぁ、実際は30日の朝までに、ということになるでしょうか」


 膨大なデータとパラメータの入力手順を踏めるのは、それを瞬間記憶している浜比嘉だけだ。そしてその入力の検証にも多くの時間が必要だった。


「しかし不思議だ。ソードはなんで宮崎のこと知ってたんでしょうねぇ」

「それは、ソードの情報収集能力も大したもんだってことですよ。例えば・・」

「武藤さん、それ以上は、もういいでしょう」


 安藤はそれとなく武藤の言葉を切った。


 浜比嘉が催した心尽くしの酒宴、そこに藤間綾子が持ち込んだ焼酎の銘柄や言葉の端々から情報は漏れた。

 警察はそう分析していた。だが漏れたものは今更仕方がない。それより浜比嘉にいらぬ心配をさせてはならない、それほどに浜比嘉は重要な存在なのだ。


 “ピピッ”


 そのとき、武藤と安藤が付けているイヤホンに情報が入った。情整から支給された専用の端末だ。ふたりは顔を見合わせて頷いた。


「皆さん、情報が入りました。これまでと違う暗号を使う部隊を確認した、とのことです。何かあれば、必ず私たちの指示に従ってください!」


 それがソードとの攻防、第二幕の幕開けを告げる合図だった。



つづく


お読みいただいて、ありがとうございます。

毎日1話の更新を予定しています。

よろしくお願いいたします。

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