第59話 宮崎へ
尚巴と麻理子はPCLの教祖的存在、クロスライトと対面を果たす。
武藤と安藤、ふたりの刑事と共に彼らは宮崎へ向かう。
そこには、PCLの精鋭となったふたりも・・
いかにもという風貌の大柄だが、意外にも柔和な笑顔で麻理子に話し掛ける。
「いやあ失礼!しかし勇敢な奥様だ。ご主人、大変じゃないですか?」
「え?ま、まぁ」
「あなた、なに言ってるわけ?」
「ご、ごめん」
若いふたりを前に、小太りと凶暴は思わず頬を緩めた。
「いや、本当に失礼しました。私たちは警視庁の警察官です。こちらは安藤刑事、私は武藤と言います」
「え?刑事さん?私てっきりヤクザ・・」
「おい!麻理子!!」
「はっはっは、いいんですよ。こんな見た目ですからね。実は私たち、黒主来斗君とは縁がありまして、一応警護という形でここに来たんです。ですけどね、来斗君はPCLの教祖的存在というだけで、PCLの過激な連中、ソードって言うんですが、そいつらとは全く無関係なんですよ」
「え?過激派とは無関係って、じゃあ黒主来斗に浜比嘉教授の襲撃を止める力はない、ということですか?」
「いや、そうは言っていません。先ほども言いました、彼は教祖的なんです。ですから彼が然るべき場所で然るべき時に声を上げれば、過激派のソードと言えど話を聞くはずなんですよ」
「然るべき場所、それって」
「ええ、浜比嘉教授がいる宮崎です。それで、これからあるルートの航空機で宮崎まで飛ぶんですがね?」
麻理子が即座に反応する。
「私たちも連れてって!ください!!」
驚くほど大きい麻理子の声に武藤は思わず言葉を止めたが、安藤をちらりと見やると話を続けた。
「ええ、浜比嘉教授がそこまで話したあなた方であれば、連れて行くのもやぶさかではない。それどころか、私たちの立場では本来、あなた方を拘束しなくちゃならないんですから。ねえ、安藤さん」
武藤の横で安藤も頷いている。
「俺たちを拘束?ですか?」
「ええ!なんせあなた方おふたりは・・・国家機密をご存知だ」
「国家、機密・・・」
尚巴と麻理子が顔を見合わせる。
「まぁとにかく!来斗君にもこの話をしなきゃならない。あと、この家で来斗君にべったりとくっついてる連中にも」
「え、なに?なにがべったりなんですか?」
「マスコミ、ですよ」
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5月28日、11時頃、黒主家のリビング。
安藤刑事はここまでの経緯を来斗に話していた。安藤と武藤には既に宮崎の状況も入っている。偽装警護車がソードの追尾を受けているとのことだった。
「・・ソードが浜比嘉教授の目的地情報を入手した可能性が報告されたんだよ。それでこの作戦が発動された。偽装警護車を囮にして浜比嘉教授は別ルートで目的地に向かうんだが、そこにもソードが現れるとしたら・・」
「つまり、そこに僕が同行してソードを説得する。そういうことですね?」
安藤に応える来斗に、武藤が話を繋いだ。
「あぁそうだ。宮崎にはすでに各県のソードが入り込んでいるようだが、ソードの全容は未だ不明だから、あらゆる可能性を考えているんだ。そしてこの特殊任務は君の協力が前提なんだよ。それで安藤さんと私が任された。なにしろ私たちは君を最初から知っているし、警察内で君の力を一番認めているのは、私たちだからね」
「それで、浜比嘉教授のご親戚も同行する、というのは?」
来斗が尚巴と麻理子に目線を送る。
「う~ん、このふたりははっきり言って偶然なんだが、このふたりがいることで浜比嘉教授も相当安心するんじゃないかなぁ」
「でも、とっても危険ですよ?僕も危険ですけど、僕にはPCLの仲間がいます。彼らは強い。でもソードもすごく強い。おふたりは危ないんじゃないですか?」
来斗は目線を落とし、親指の爪を噛んだ。ふたりを本気で心配して緊張している証拠だ。だがすぐに噛むのをやめ、ポケットから取り出した小さなヤスリで親指の爪を整える。
自分たちに対する来斗の心配に気付いて、麻理子は微笑む。
「大丈夫よ来斗君。私、空手6段だし、それと私、死ぬベテランなの」
「俺、琉球空手5段、って言うか、麻理子って俺より段位が上だった?」
「あら、言ってなかった?」
「くぅ~、空手じゃ先輩かぁ」
こんな時でも平常運転のふたりに、皆の顔がほころぶ。
「へぇ、おふたりとも強いんですね!おふたりがいれば浜比嘉教授もきっと安心なんだろうな。死ぬベテランってよく分かんないけど」
ヤスリをポケットに仕舞いながらそう言う来斗に、安藤が優しい口調で問い掛ける。
「どうだろうか、来斗君、さっき話した計画で宮崎に行くというのは」
「ええ、そうですね」
来斗は自分の後ろにいる小鉢たちに目をやった。小鉢は悶えるように身をよじっている。
「PCLのメンバーと、小鉢さんたちが一緒なら」
「やたっ!さすが来斗君だぜ!!さくらちゃん、しほりちゃん、行くぞ宮崎!!準備だ準備!」
「よし、決まりですな。では、世界への配信は小鉢さんたちにお願いしますよ!」
世界中のソードに訴えるため、安藤と武藤は最初から小鉢たちマスコミを利用するつもりだったのだ。
「では、我々も準備といきましょう」
安藤が腰を上げる。
「ええ、では今日の朝SATを飛ばした方々に、もう一機お願いしましょうか!」
武藤も声を上げた。
「ああ、そうだ」
安藤が来斗に向き直って声を掛ける。
「その、来斗君が言うPCLのメンバーだがね、警察のPCLがもう、羽田に連れて行ってるよ」
-そっか、榊さんと真也君、ひろみさんもかな。あとは・・
来斗の脳裏に、信頼する数名の顔が浮かんだ。
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つづく
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