第57話 ソード対日本警察 浜比嘉襲撃
浜比嘉襲撃に執念を燃やすソード。
情報戦はついに直接的な戦闘に発展する。
ソードに囲まれた浜比嘉だったが・・
5月28日、午前10時、宮崎市内。
浜比嘉を乗せた宮崎県警の警護車は、空港からバイパスを経て国道10号線を北上していた。そして警護車の数キロ圏内には、情整の情報収集部隊が展開している。車両による遊動部隊である。
そのうちの1台がソードの通話を捉えていた。
「有馬さん、これでしょ?沖縄と近い周波数の、このピーク」
「あ~ん?そうやねぇ、やっぱアンカバーか。芸のない連中やね」
電波のピーク電力が表示されたモニターを眺めながら、有馬が傍受を開始する。
「オッケービンゴ!!沖縄とおんなじ隠語だ、山田車に情報共有!固定に本庁報告依頼出せ」
宮崎県警本部に拠点を構えた情整固定部隊は有馬車の報告を受け、送られた情報を分析している。
情整部隊長の木本が、モニターを見ながらぶつぶつとつぶやく。
「沖縄より通話量が極端に少ないが、隠語が共通している。これで間違いないな。警護車からの報告じゃ追尾している不審車両は見当たらないようだ。距離を置いているのか」
木本は顔を上げ、県警に指示を出した。
「一端警護車を止めてください、通話の変化を見ます」
指示は即座に警護車に伝わる。
「警護イチ了解、最寄り駐車場に入ります」
警護車が休憩を装ってコンビニの駐車場に入り、わずかな時間停車する。
「通話認知!内容“S停止”、警護車の停車を伝えている模様。今通り過ぎた車がそうだ!」
「警護イチ了解、容疑車両視認しました。グレーのマツヤマRX78、4名乗車、ナンバー不明」
「有馬車了解、先行山田車、了解か?」
「山田車了解、マツヤマRX78、グレー、後方より接近中。あ、停車しました!ナンバーは宮崎500に****」
-上手くいった、だが沖縄の状況を考えればソードの追尾が1台とは考えられない。
「沿線各員に指示をお願いします!警護車の前後で停車中の車両、私の合図で動き出した車両をマーク!」
木本の指示は県警が配置した覆面パトカーと沿線に配置された警護要員に伝えられた。
山田車から報告が入る。
「RX78の通話認知!内容は“待機”」
-やはりか。よし!
「警護車、移動開始!警護要員は私の合図を待て!」
山田車の報告。
「通話認知、内容、“S移動”!」
「今だ!動き出した車両をマーク!」
木本の作戦によって、新たに5台の不審車両があぶり出された。RX78を含め6台である。木本は宮崎県警警備部長にソードの制圧を申し出た。
「部長、警護車は西都市に向かっていますが、ヒムカの位置を知られますから、このまま追尾させるわけにはいきません。それに、この6台のソードがどこで仕掛けてくるか分かりませんし、追尾の他に襲撃部隊の存在も考えなければ。それと宮崎に向かっているソードについても、各県警機動隊に宮崎入りを阻止するよう指示をお願いします」
「分かった。すぐ各県警に連絡しよう。それと、この6台の制圧地点は、国道10号から分岐する、ここだ」
制圧地点は、北上する国道10号と西都市に向かう国道219号との分岐点の手前に決まった。あらかじめ近辺に配置されていた宮崎県警機動隊が向かい、対象車両を待ち受ける。
そこに、RX78が近づいてきた。
道路を封鎖する機動隊車両に気付いたのか、RX78はスピードを落とす。
有馬車から緊急情報の報告が入った。
「通話認知!緊急緊急!!対象は銃火器所持、戦闘を開始する模様!!」
木本が叫ぶ。
「情報共有!対象は銃火器所持、銃撃戦に備え!!」
情報は瞬時に警護車と機動隊に伝わる。機動隊隊長は銃器の使用を許可、機動隊員は盾を構え、腰を落として身構えた。
RX78がスピードを上げる。同時に助手席から自動小銃が突き出され、隊員に向かって乱射してきた。RX78は正面から突破する考えだ。隊員たちも銃撃で応戦するが、突っ込んでくる車には敵わない。
「前列待避!装甲車両前へ!!」
隊長が叫ぶと同時に前列隊員が退き、装甲車がRX78の行く手に立ち塞がった。状況を理解したのか、RX78はドリフト音を上げながら止まり、車首を後方の警護車に向けた。浜比嘉が乗る警護車に突っ込むつもりだ。
「各員発砲を許可!警護車に向かわせるな!!」
機動隊員の銃撃でRX78の後部ガラスは割れ、そこから自動小銃の乱射が始まった。
山田車が更に情報を捉えた。即座に報告が入る。
「通話認知!RX78とは別の車と推定!全車で警護車を包囲、銃撃する模様!!」
ソードは浜比嘉の追尾を諦め、襲撃に切り替えたのだ。
浜比嘉が乗った警護車に、RX78含め6台のソードが迫る。
「装甲車2台回頭!警護車に向かえ!!」
-だめだ、間に合わん!!
隊長がそう思った瞬間だった。頭上に轟音を響かせて、自衛隊輸送ヘリが現れた。
「あれは・・新田原からか、自衛隊、来てくれたか」
輸送ヘリは轟音と爆風で威嚇し、更にヘリの開口部からソードの車両目掛けて射撃を加えている。
「総員!ヘリの着陸を援護、こちらも一斉射撃だっ!!」
輸送ヘリからの射撃と機動隊の一斉射撃でソードの6台は警護車に近づくことが出来ない。その隙に輸送ヘリはソードと警護車の近傍に着陸した。
輸送ヘリの胴体が開き、そこから走り出してきた部隊が即座に精確な射撃でソードの車両を撃ち抜く。
部隊員が着ている制服は警視庁精鋭部隊、SATだ。
自衛隊は日本を守る最後の砦と言える。しかしその備えは常に災害と外国の脅威に対するもので、国内の治安維持は警察の仕事だった。だからこそ、PCLの過激派案件にも自衛隊は関与できない。しかし、警察官の輸送だけならば可能。
防衛省トップの決断だった。
ソードの車両からも銃撃が続く。SATに劣らぬ精確な射撃だった。やはりソードの要員にその道のプロが関与していることは間違いない。だが、SATと機動隊に囲まれては、いくらソードが手練れでも勝ち目はなかった。6台の車が警護車を囲んではいるが、防戦一方だ。
「くそっ!くそっ!!お前ら援護しろ!!」
ソードのひとりが銃撃の隙を突いて車を発進させるが、すかさずSATの集中攻撃を受け、車はハチの巣になる。
「うがぁああああ!」
頭をかがめた男の腹を、ドアを貫通した銃弾が貫く。
「くぅっそがぁああああ!!」
男が力を振り絞ってアクセルを踏み込むと、車は警護車の横っ腹に突っ込んだ。衝撃で警護車のバックドアが開く。
「ドアが開いた!誰か突っ込め!!浜比嘉を殺せっ!!」
運転席から叫ぶ男の声に押され、ふたりのソードがわずかに開いたバックドアから銃を乱射した。警護車の中で悲鳴が上がる。だが同時に、ふたりはSATにとっても格好の標的となった。
容赦のない、精確な銃撃がふたりを貫いた。
「あぁあーっ!あぁああーーっ!!」
車で警護車に突っ込んだ男は仲間が撃たれるのを目の当たりにし、逆上して運転席を飛び出した。そして警護車のドアに銃撃を加えてこじ開ける。
「はぁーまぁーひぃーがぁああーーっ!!」
そこに、浜比嘉青雲の姿はなかった。
「は?なんで?なんで浜比嘉は、いない?」
警護車は、浜比嘉を乗せているように偽装していたのだ。
浜比嘉青雲に背格好のよく似た警察官まで用意して。
「俺たちは・・最初から騙されていたのか」
腹からの出血がひどい。男は銃を下ろし、天を仰ぎ、膝をついた。
後ろを見ると、仲間たちはすでにSATと機動隊に囲まれている。
ヒムカの攻防、第一幕は日本警察の勝利で幕を閉じた。
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つづく
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