第53話 ソード対日本警察 情報戦
那覇空港へ向かう浜比嘉青雲だったが、警護する警察と共に、巧妙な追尾を受けていた。
追尾するのはソードの要員たち。
用意周到な隠蔽工作を図る彼らだったが、日本警察はその動きを察知していた。
「マルタイに動き、1号車、2号車はマルタイの前後に配置、目的地は那覇空港」
5月29日、午後2時。浜比嘉が運転する車はその前後を沖縄県警の警護車に挟まれ、那覇空港へと向かった。
「S、移動、P2台」
浜比嘉の家は恩納村の国道58号沿いにある。そこはリゾートホテルが建ち並ぶ、沖縄屈指の観光地でもあった。そのホテルの一室から双眼鏡で浜比嘉邸を見張る男がいる。浜比嘉邸に張り付いていたのは警察だけではなかったのだ。
男は無線機のマイクに向かって状況を報告し、そして息をついた。
「とりあえず俺の仕事はここまで。次は車の連中か」
浜比嘉の車は石川インターで沖縄自動車道に乗った。相変わらず警護車2台が張り付いているが、浜比嘉の車列を追い越す車両や、浜比嘉の車列に追い越される車両の中にも、浜比嘉を監視する者たちがいた。
「S、西原J通過。P変わらず。32」
「32は離脱、14が追尾。18は後方で待機」
「32了」
「14了」
「18了」
一度浜比嘉の車列に接触した車は、二度と近寄ってこない。警護車の警察官に気づかれないためだ。
ソードの追跡監視部隊だ。
「こちらゼロ、全ナンバー、SはAPに向かう。APバイパスは40と21がAPまで、AP手前で離脱」
「40了」
「21了」
「こちらゼロ、AP1からAP10はSの行き先を確認し、同乗しろ」
「AP了」
沖縄県警本部屋上。
「田尾さん、全帯域アンカバー認知状況と記録データを送信します」
「チェック。全国にデータ送信。私のサインで本庁速報作成、送信しろ」
「了解」
警察庁情報整理課、情整と呼ばれるその組織の要員が、県警本部屋上に陣取ってソードの通信を傍受していた。
彼らの任務は、テロリストが活動に使用する電波を探し、その活動を事前に察知することにある。
「しかしこのソードの連中って一般人なんだろ?ホントにそうか?この追尾の連携、手慣れ過ぎじゃないか?」
「確かに、この通話内容からだと浜比嘉教授の動向は自宅から那覇空港まで完全に把握されています。高度に訓練されてますよね」
「あぁ、これはコメントに入れといた方がいいな。万にひとつってこともある」
チームの指揮を取る田尾主任は早速コメントを作り、本庁に宛てて送信した。
・対象は改造無線機による電波を使用。
・追尾連携に高度なスキルあり。
・那覇空港に対象が潜伏、少なくとも10名。
・浜比嘉教授到着後に接近する人物に注意。
・以上から対象は一般人ではないものと推定。
・対象を構成する組織の候補、国際テロリスト集団、自衛隊、米軍、警察も可能性を排除しない。
このコメントに、警察幹部は動揺を隠せなかった。
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東京都某所会議室。
「ソードの情報収集は成功しています。全国各地で電波を捉えていますが、やはり浜比嘉教授がいる沖縄と黒主来斗がいる東京で活動が活発化しています。また、全国のソードが集結するとの情報も、確度は低いですが入っています」
情整・相沢課長補佐の説明に耳を傾けるのは、警察庁長官、警視総監ら警察のトップたちだった。
「浜比嘉教授にあっては、本日午後の航空機で那覇に到着するボウの主要メンバーと打ち合わせの模様です。ソードはその動きを追って、ヒムカの場所を特定する可能性があります」
「それはまずいぞ、連中がヒムカの存在に気づけば次の3日間で先手を取られる」
「そのとおりだ。それとこの報告にあるとおり、ソードは一般人ではないようだ。防衛省上がりか米軍関係者か、それとも某国の工作員か」
「それはある。普通のPCLにもそういう関係者はいるし、警察官も有り得る」
警視庁の遠山が声を上げる。
「お言葉ですが、それを前提とすれば、警備体制の構築が不可能になります。身内を信じなければ隊の結束は保てません。ましてや同じ釜の飯を食った仲間を裏切るとは、到底」
「うむ、そうだな。あくまで普通のPCLの話だ。ソードのことではないよ。だが、その可能性が排除できない以上、警察官の身上把握は厳としなければ」
これには遠山も頷く。そこで情整の本間課長がまとめに入った。
「ソードの標的は浜比嘉教授ですが、一連の動きから最終目的地を探っているものとみられます。すぐの襲撃はないでしょう」
本間が全員の顔を見渡す。その様子は自信ありげだ。
「ボウの藤間教授、竹山教授はそのまま。3名の打ち合わせは沖縄県警本部の一室で、夜の会食には私服警官を張り付ける。我々の電波情報と私服警官の視認情報でより多くのソード要員の面が割れるでしょう。防衛省などとの情報共有はこちらから繋いでおきます。長官、これでよろしいでしょうか?」
警察庁長官は大きく頷いた。
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つづく
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