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第51話 ふたりへのプレゼント

披露宴が終わり、ひとときの幸せな時間を過ごす尚巴と麻里子。

そんなふたりに、浜比嘉星雲は重大な事実を告げる。それは、死の運命に囚われた姪へのプレゼントだった。

そしてまた、時は戻る。


 5月29日、午前0時半。


 披露宴を終えた尚巴と麻理子、そしてふたりの親族は控え室に集まっている。佐久間たち3人は当然のように新郎新婦の友人たちの二次会に連れ去られていた。3人とも午前の便で東京に帰るというが、この調子だと帰りは午後便になるだろう。


 尚巴と麻理子はもう一泊することになっている。先祖への報告、つまり墓参りや親族一同での会食が予定されていたからだ。


「尚巴くん、麻理子ちゃん、お疲れ様」


 ふたりに声を掛けてきたのは、浜比嘉青雲だった。


「叔父さん、今日は本当にありがとう、叔父さんと叔母さんが全部手配してくれたんでしょ?」

「あぁ、いいんだよそんなこと。あ、春子おばさんがやったのは着物選びだけだぞ?」


 そう言った青雲は肩をすくめて姉の春子の姿を探したが、運良くそばにはいないようだ。


「しかし尚巴くんの挨拶には恐れ入った。これからずっと、ずっと助けるって、なんとも頼もしい婿さんだ。いや、もっと早くふたりはこうなるべきだったな!」

 今度は尚巴が肩をすくめる番だった。

「いや、浜比嘉さん、麻理子は別格の幹部候補だったんで、俺みたいな落ちこぼれが話し掛けることも難しいっていうか」

「何言ってるの?尚巴さん、私はずっと前から尚巴さんのことが気になってました!」

「ホントか?全然分からなかったぞ?そうか、東大卒の麻理子が琉大卒の俺のことをなぁ」

「えぇ、だって私の直近の上司じゃない、一応」

「一応?なんかそれ!琉大を舐めてもらっちゃ困るぞ?」

「琉大の壁なんか、私は舐めたことありません」

「物理的にじゃないわ!!」


 アルコールが残る二人の他愛ない会話を微笑みながら見ていた青雲だったが、思いついたように話し出した。


「そうだ二人とも、これからずっと続く3日間の話なんだけどな、それはもう、どうしようもないって思ってるだろ?」

 尚巴と麻理子は揃って青雲の顔を見る。

「浜比嘉さん、もちろん二人とも4日目があればって思ってます。でもそれはやっぱり、なぁ?」

「えぇ、叔父さん、私は明日の夜中にまた時間が戻って空中にいるのよ?どうしようもないって思ってる。こうして助けてもらって結婚までできた。それで十分だと思わなくちゃならないのに、もし4日目があるならって、やっぱり思っちゃう」

 青雲は深くうなずいた。

「そうだろう、私は結婚もせずもうこんな歳だ。だから麻理子ちゃんは自分の子供みたいに思えるんだよ。春子おばさんもそうだ」


 青雲はふたりを見つめながら話を続ける。


「だからね、二人にだけは教えておくよ。叔父さんの仕事は知っているかな?」

「理論物理学者、物理学界のエース、だった?」

「ははは、エースは冗談だが、叔父さんは物理学者で、この3日間の現象を研究しているんだ。それでな、実は仲間のひとりが画期的な理論を思いついてな、この3日間のループを破れるかもしれないんだよ」


 青雲の言葉に、ふたりは息を呑んだ。


「この事はまだ絶対に公表できない。世界の政治経済、宗教もこの3日間が全てとして成り立っているだろ?その行動原理の元が・・」

「クロスライトの予言、PCLですね」

「そう、そこに4日目があるかもってなれば世界は大混乱だ。だから二人とも、この事は絶対に漏らしちゃいかん。でもな、今これを二人に教えるって事は」


 青雲は真っ直ぐに尚巴を見つめた。


「尚巴くん、お願いだ。麻理子を絶対に落とさないで欲しい。分かるだろ?もし麻理子の救出に失敗した3日間が最後の3日間だとしたら・・」


 尚巴と麻理子は顔を見合わせた。


「そうか、新田なんかアマゾンに行ったって言ってたからな。時間が戻らなきゃ新田はアマゾンに行きっぱなしになる。もし麻理子を救出できなかったループが最後の3日間なら、麻理子を助けるチャンスはもう、ない」


 尚巴は緊張に震えた。


「尚巴さん、そんな顔しないで」


 強張る尚巴の顔を麻里子が心配そうに見つめる。

 そんな麻里子の顔を見て、尚巴の腹は据わった。


「麻里子、必ず助けるさ。でももし、もしも一瞬遅れてやばいってときは」

「やばいってときは?」

「俺も飛んで麻理子を捕まえる。そして麻理子だけは助けるよ。俺が下になればいいんだ」

 麻理子は青ざめた。

「駄目!!そんなことしちゃ!」


 麻理子は叫ぶと、尚巴の胸に顔をうずめて泣いた。


 尚巴は青雲を向き直る。


「浜比嘉さん、このことを俺たちに教えてくれたって事は、その研究はもう完成してるってことですか?」


 青雲は少し俯いたが、尚巴の目をまっすぐ見直した。


「ああ!あと何回か繰り返したらきっと完成する!世界がびっくりするぞ?」


 その言葉に、尚巴は力強くうなずいた。



 5月30日の夜、時間が戻る直前。


 尚巴と麻理子、そして佐久間、伊藤、新田の5人と、彼らの行動に感化された数名が会社のフロアに集まっていた。メインで動くのは久高チームの4名、他はトラブルに備えてサポートしてくれる。麻理子を捕まえた尚巴と佐久間を支えるのに、伊藤と新田だけでは力不足だったから、ありがたい申し出だった。


 尚巴が皆に声を掛けた。


「みんな、集まってくれてありがとう。時間が戻ったらどうせみんなここにいるんだけど、やっぱりあらかじめここで構えていた方がいいと思うんだ。イメージがしやすいしな。それに麻理子も」

「はい、私はここに立つわ」


 麻理子は窓際に立った。あとわずかで麻理子は掻き消え、この窓の外を落ちていくのだ。


「みんな、いいな!あと5秒!!」


 そして時間が戻る瞬間、麻理子が叫んだ。


「助けて!あなた!」


 麻理子の姿が消えた。


「戻った!!」


 佐久間が叫んだ。同時に尚巴が窓に突進する。


「助けるっ!おまえ!」



 今回も尚巴たちは麻理子を助け出した。人数が増えた分、窓ガラスを割って麻理子を掴まえてしまえば、引き上げるのも容易だった。


「はぁ、はぁ・・・」

 麻理子は青白い顔をしていたが、少し微笑んでいた。


「ぷぷぷっ!!」

 突然、新田が吹き出した。


「喜屋武さんったら、助けるおまえぇー!だって!!」


 暗かったフロアに、明るい笑い声が響いた。



 尚巴と麻理子の奇跡のような結婚。それから数回の3日間が過ぎ、ボウによる会見が行われた。


 そこで示された繰り返す3日間の正体と4日目への希望。


 世界を揺るがしたその会見の後、浜比嘉青雲はその命を狙われるのだ。



つづく

お読みいただいて、ありがとうございます。

毎日1話の更新を予定しています。

よろしくお願いいたします。

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