第48話 いざ沖縄
ボウの会見から数回の3日間を遡った、5月28日。
喜屋武尚巴たち同僚に救われた久高麻理子は、皆と共に沖縄に降り立った。
繰り返す3日間、ただ死ぬだけだった彼女の運命は、大きく動き出す。
5月28日、午後3時。
那覇空港到着ロビーに麻理子とその家族、そして尚巴たちの姿があった。午前中のうちに各自準備を済ませ、昼過ぎの沖縄便に飛び乗ったのだ。
「すごいなぁ、飛行機代って、ただなのね!普通なら何十万円もかかるのに!!」
驚きの声を上げる麻里子を、伊藤と新田がすかさず囲む。
「そうなんですよ~、でも飛行機代だけじゃないですよ?もうお金は意味がないんです。み~んな無料なんです。だって、いくらお金を稼いでも時間が戻ればおんなじですもん」
「久高チーフ、例えばですね、チーフがアマゾンの奥地にがんばって釣りに行くとしますよ?アマゾンではでっかいピラルクを釣っちゃいました。じゃ、チーフはどうやって帰ってきます?」
「え?ピラルクってなに?それにアマゾンってどうやって行くのかも分かんないけど、日本に帰るのは飛行機じゃないの?」
「ブッブー!正解は、時間が戻れば元の場所!!ってことです。あと、ピラルクは世界最大の淡水魚です。3mになります」
新田は伊藤や麻理子より年上だが、精神年齢は10代のようだ。
「だから旅行が趣味の人なんか最高なんですよ?3日間の間ならどこに行ってもいいんです!飛行機もただ!ホテルもただ!帰りは時間が戻るのを待つだけ!!」
「そんな、じゃあパイロットさんとかCAさんとか、ホテルの人たちはどうなんです?お給料もないんでしょ?」
そこに佐久間が割り込んだ。
「つまり、仕事をしたい人はしていいんすよ。で、遊びたい人は遊べばいい。だから、仕事をしてくれてる人って、この世界では一番尊い人たちって賞賛されるんす。それが生きがいって言うか、お金じゃないっていうか」
「うん、佐久間の言うとおり、この世界の価値観っていうのは、自分がこうありたいって思えばそうしていい、ってことなんですよ」
佐久間の言葉を継いだ尚巴に、長政が言う。
「なんね尚巴くん!嫁に向かってなんで敬語ね!麻理子もなんか言いなさい!」
「そうね、尚巴さん、私に敬語は必要ありませんから。それとみんな?私もう久高麻理子じゃないわよ?喜屋武麻理子なの」
「あ!いや、そうか、そうだよな!ま・まりこ」
「はい!」
尚巴と麻理子を中心に笑顔が広がった。そのとき、ロビーに一際大きな声が響く。
「しょうは!尚巴!!こっちこっち!」
「お!おとう!おかあ!!」
喜屋武尚巴の両親がそこにいた。
「お義父さん、お義母さん、これが俺の両親、清作と愛子です」
尚巴は長政と昌子に両親を紹介すると、麻理子の手を握って自分の横に立たせた。
「おとう、おかあ、これが俺の嫁、麻理子。そしてこちらがそのご両親、長政さんと昌子さん」
尚巴の両親と麻理子の両親はお互いの手を握り合った。
「まさかやぁ、尚巴はこんなで東京に行って、時間も戻るし社会はこんなだし、もう嫁は諦めてたんですけどねぇ、こんな綺麗な娘さんをねぇ」
「いやいやこちらこそ、麻理子の件はもうご存じでしょう。私たちこそ、まさか娘が生きているなんて、それにこんな立派な婿ができるなんて、もうこれは、運命さぁね!」
放っておけばいくらでも話し込みそうな父親二人を、愛子が止めた。
「あい、おとう!!駐車場はただじゃないよ!マイクロバスなんだからさ!高いよ!」
「おぉそうね?じゃあ皆さん、式場まで行きますよ!!」
清作が皆を先導する。スキップでも踏みそうな父に、尚巴が声を掛けた。
「おとう、式場って、もう決まってるの?どこな?」
「麻理子ちゃんの叔父さん、青雲さんが全部手配してくれてるさ!麻理子ちゃんの生まり島、玉城の百之伽藍よ!」
皆を乗せたマイクロバスは、国道331号を南下する。
駐車場代は、もちろん無料だった。
・
・
・
つづく
お読みいただいて、ありがとうございます。
毎日1話の更新を予定しています。
よろしくお願いいたします。




