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第45話 ソード・予言者の剣

クロスライトの法を守り、世界を安定に導いたPCLたち。だがその中には、過激な考えに囚われた者たちもいた。

世界に向けてメッセージを送るクロスライトだが、そこで男が立ち上がる。

来斗の真のメッセージは、世界に届くのだろうか・・


 皆に一礼して着席した来斗に、まずヤモリが問い掛ける。


「クロスライト、これまでの内容は聞かれたと思いますが、どうですか?御手洗教授と下井教授は4日目の可能性を100%とおっしゃっていますが?」


 来斗は穏やかな口調で話し始めた。


「はい、僕は科学者ではありませんからなんとも言えないんですが、今日の会見と先ほどから先生方が言われていることを聞いて、そうであればいいな、という感じでしょうか」

「そうであればいい、とは?」

「僕はこの3日間の繰り返しは永遠に続くのだと思っています。でももし4日目があるとすれば、それこそ自然なことなので・・」


 鈴木教授が来斗の発現を遮って、猛烈に口を挟んできた。


「いやいやライト様、大丈夫ですっ!4日目が100%などと誰も言っておりません。あくまで可能性なのです!この現象の原因だって言われているようなものとは限らない。私の考えですが、これは神の、神の御業ではないかと思うのです!!ご安心ください、3日間は永遠です!エ・イ・エ・ンなのです!!」

「ちょちょっ、鈴木教授、今はクロスライトがお話し中ですから。視聴者が怒りますよ?」


 慌ててヤモリがとりなす。来斗は少し苦笑いで続けた。


「そうですね。僕を見てくれている人たちはPCLの皆さんでしょうね。では、PCLの皆さんにお話ししたいと思います。ヤモリさん、よろしいですか?」


 ヤモリは無言でうなずく。


「世界のPCLの皆さん、クロスライトです。いつも世界中の子供たちを救っていただいて、ありがとうございます。世界の人たちが皆さんに感謝しています。そんな皆さんに、僕からメッセージを送ります。僕は今日の科学者の皆さんの会見を見て、もし4日目があるなら、その方がいいと思いました。それが自然なことだからです。でも、こうも考えています。この3日間が終わり4日目を迎えた朝、世界はこれまでどおりだろうか?と」


 来斗は一息ついた。そして続ける。


「今、皆さんのおかげで世界は幸せに包まれています。戦争は無くなり、飢える子供もいなくなりました。でも最初はどうでしたか?」


「僕と僕の家族は殺し合いを経験しています。皆さんもそうでしょう。それから最終核戦争。世界中の人々が一握りの独裁者のために一度は死ぬか、瀕死の重傷を負うか、3日間の地獄を経験しましたね?」


「僕は、それこそが人間の本性だと思うんです。もし4日目があったとして、そして普通の生活が戻ったとして、世界はどうなるんでしょう?これまでどおりでしょうか?」


「僕は、世界は再び人間のエゴに包まれ、独裁者が生まれ、戦争が始まり、子供たちが傷つき飢えて泣く。そんな世界に逆戻りするのでは、と思っているんです」


「世界のPCLの皆さんは、そのときどんな行動を取るんでしょうか?」


「僕は皆さんを、PCLの皆さんを人類の希望だと思っています。ですから・・」


 ”ガタンッ!ガラガラッ!!”


 PCLが人類の希望、その言葉を聞いた鈴木が椅子を蹴って立ち上がり、マイクを奪った。


「そうだっ、我々ソードこそが人類の希望!ライト様の言うとおりなのだ、これをもってソードは行動するっ、いいか!行動するのだ!」

「うおっ!警備員さん!コイツつまみ出して、早くっ!!」


 ヤモリが叫ぶ。すぐに警備員ふたりが走ってきた。鈴木はそれに構わず叫び続ける。


「世界のソード!俺たちこそが予言者の剣なのだ!今日の会見で見たな?浜比嘉だ・・あいつが最重要人物だ!あいつがいなければこの実験はできない。いいか?浜比嘉青雲だ、あいつの顔を覚えろ!!沖縄にいるぞ!そして4日目は、無いのだっ!!」


 鈴木は警備員に両腕を掴まれ、スタジオから引きずり出されるまで叫んでいた。


「いやぁ、鈴木教授はPCLのメンバーでしたか。PCLの中には過激派もいると聞いたことがありますが、それがソード?予言者の剣って言ってましたねぇ。あいつがそうでしたかぁ」


 ヤモリは誰にともなくそう言うと、来斗に向かって声を掛けた。


「大丈夫?話はどうしますか?続けますか?」

 

 “ヤモリちゃん、来斗君は大丈夫?話せそう?CM行くか?”


 インカムでは小鉢がうるさい。焦っているのがよく分かる。


-分かってるって、小鉢、焦んなよって。


「クロスライト、PCLのメンバーに言いたいことは、さっきので終わりですか?鈴木教授が叫んでいたことについて、どう思いますか?」


 来斗はヤモリの声にハッとした。


「あ、すいませんヤモリさん。まさかこんな風になるとは思いませんでした。話を続けてもいいですか?」


-さっすがクロスライト、やっぱただの子供じゃねぇ、すげぇおんもしれぇ。


「もちろんですとも。ではどうぞ!」


 ヤモリに促されると来斗は背筋を伸ばし、カメラに向き直った。


「世界のPCLの皆さん、今の人は”ソード”と呼ばれている人でした。PCLの中でも、裁きだけが全てと考える人達だと聞いています。でも皆さんは裁きだけではなく、許しと慈しみを元に活動してきましたね」


 カメラを見つめる来斗は、全世界の視線を感じている。


「そんな皆さんは、もし4日目に進んで未来を生きることになっても、もう誰にも戦争を起こさせないだろう、理不尽な貧困を放ってはおかないだろう、病気の子供たちを、お腹を空かせた子供たちを泣き顔のままにしないだろう」


 そして来斗は、もっとも重要なメッセージを送る。


「皆さんは、新しい人類の生き方を体現する希望なんです。願わくば、ソードと呼ばれている皆さんにも僕の考えを理解して欲しい。僕と一緒に、人類の未来を見つめて欲しい」


 ふぅっと息をつく。


「これが僕の、クロスライトから皆さんへの、新たな希望のメッセージです」


 来斗はヤモリの顔を見た。もう終わりです、という意味だ。


 “ヤモリちゃんオッケー!!クロスライトここまで!”


 インカムから聞こえる小鉢の声は明るい。


「クロスライト、ありがとうございました!いやぁ、わたしゃ感動しましたよ!PCLには過激な連中もいる、あいつが、鈴木が言ってたソードってのがそうなんですね!でもだ、大方のPCLは人類の希望だと!よっく分かりました」


 来斗は微笑みを浮かべると、ぺこりと頭を下げてスタジオを後にした。


「では皆さん、今のクロスライトのメッセージについて、いかがですか?」


 番組はその後、来斗が示した新しい人類の未来について、そして過激派“ソード”について、科学者とタレントのコメントを織り交ぜながら進行し、大きな盛り上がりの中、終わった。


 ヤモリは満足感に包まれていたが、ふと足下に目を落とすとつぶやいた。


「しかしあのメッセージだけでソードの連中は納得、するのかねぇ。来斗くん」


 ヤモリの胸は、不安感にも包まれていた。



つづく


お読みいただいて、ありがとうございます。

毎日1話の更新を予定しています。

よろしくお願いいたします。

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