第41話 時間旅行
一瞬の閃きは、繰り返す3日間の謎を解く手掛かりになる?
まだ危うげな手掛かりだったが、最高峰の物理学者たちにとって、それは十分なものだった。
タイムスリップ、そしてタイムリープ・・じゃない!違和感の正体、分かったわ!
「浜比嘉さん、今、タイムスリップとかタイムリープって言いましたよね!」
「あぁ、言ったな、藤間だって言ってたじゃないか、さっき」
「そう、私も言いました。でもよく映画とかで出てくるタイムスリップとかタイムリープって、局所的な現象ですよね。自分だけがリープしてて次の日に行けない、とか、自分だけが時間軸をスリップしてどこかの時間軸に出現する、とか」
私が話す内容に、竹山教授も浜比嘉さんもキョトンとしている。
「藤間君、今更なんだ?実際に我々がタイムリープしてるっていう現象に基づいてこれまで計算してきたんじゃないか」
「はい竹山教授、そのとおりです。私たちは私たちだけがタイムリープする現象を計算してきましたが、その前提自体が間違いなんじゃないかと。例えば映画やアニメのストーリーでは、主人公や一部の人しか記憶を維持してないんじゃないですか?」
「うん、そうだな、確かにそうだ。こないだ見たアニメもそうだった」
浜比嘉教授の口からアニメという単語が出てちょっと驚いた。浜比嘉さんもアニメ見るんだな。私も好きだ。こないだ見たタイムリープものって言うことは、あれかしら?
いや、今はそんなことどうでもいい。
「あ、はい、そうですね。でもこの現象って違いますよね、私には記憶が残ってます。前の3日間の、それどころかこれまですべての3日間の記憶が。そして皆さんも、というか、世界中の人たちの記憶が残っている・・」
モニターの中でふたりとも”なにを今さら”と言う顔つきだ。
「でも・・時間が戻っているというならば、本来すべての記憶もリセットされていて、時間が戻ったことにすら気づかないはずです。ということは、私たちの記憶や意識を基準にすると時間は戻ってるんじゃなくて、流れてるってことじゃないですか?それは物理学的に考えられる本来のタイムリープではなく、つまり・・」
私の話を遮って竹山教授が叫んだ。
「そうか!過去へのタイムトラベルか!!」
思わぬ大声に、教授自身が目を丸くしている。
「そうですっ!過去へのタイムトラベル!私たちはこれまで、局所的に時間が少し戻ってしまうタイムリープ現象を計算していましたが、もしかして、宇宙全体が強制的にタイムトラベルをしてしまう、そんな現象を考える必要があるんじゃないでしょうか?例えば・・」
「例えば?」
浜比嘉教授が待ちきれないと急かした。
「宇宙全体がワームホールに呑まれ、一瞬の過去に吐き出された。それは宇宙規模なら誤差とも言える一瞬だけど、地球時間ではそれが、約3日間」
私は馬鹿げたアイディアを口にした。
「なるほど・・・どうせタイムスリップにしろなんにしろ、宇宙全体のエネルギーが必要なんだ。だとしたら局所的な現象じゃなく、宇宙全体がどうにかなってしまう現象を考えた方がいい。そうか、なるほど」
私としては意外だったが、竹山教授が興味を示した。
「いいじゃねぇか、宇宙全体ワームホール!おもしれぇ!!」
浜比嘉教授は全面的に同意のようだ。
「よし、その方向で計算してみよう!この3日間、我々3人のチームでだ。そこで成果があれば、世界に発表する!」
竹山教授が叫んだ。しかし、このユニットに参加しているのは私たち3人だけではないのだ。竹山教授のこの発言が他のメンバーから猛烈なブーイングを受けたのはもちろんである。
やれやれ、竹山教授も“我々3人”なんて言わなければね、あんなに謝らなくてもよかったのに。
結局、私たち3人を中心としてこの仮説をまとめることにユニットのメンバーは合意してくれた。そして私たち以外のメンバーはそれぞれの役割を分担し“その現象”の理論的解明に必要な仮説を立て、必要なエネルギー量を計算し始めた。
その作業はもちろん3日間で終わるはずもなかった。
ともあれ、面白くなってきたわ。
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つづく
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