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第23話 独裁者は世界を殺す

クロスライトの命を賭した予言は世界に拡散した。

ここK共和国で、その予言に身震いする者がいた。

それはこの国の、総書記で・・


 3回目の5月29日、午前9時。


 K共和国、首都。


 豪華な装飾に彩られた広い会議場に、総書記以下閣僚が集合していた。


「チャン科学担当!」

「は!将軍様」

「この現象の原因はまだ掴めないのか?」


 総書記の言葉は静かなプレッシャーを含んでいる。


「は、はぁ、未だその原因は分かりません。なぜか約3日間で時間が戻ってしまうのですが」

「そんなことはもう分かっている!私は原因と対策を聞いているのだ!!」

「は!申し訳ありません」


-そんな、たった数日の研究でこんな現象の原因が分かるか!それに対策だと?アメリカだって無理だ。そんなことも分からんのか、このボンボンが!!


 チャン科学相は心の中で毒づいた。


「シン警衛担当!」

「は、はいっ!将軍様」

「民衆の様子はどうなっているのか?」

「は、2回目の3日間では我が国全土で個人的な殺し合いが始まり、治安部隊も投入しましたが、治安部隊の中でやはり殺し合いが始まって収拾は不可能な状態となりました」

「あの最後の日には私の公邸にまで人民が押し寄せた。あの者たちはどうした」

「はい、先ほど申しましたとおり治安部隊も機能しませんでしたので非常に危険な状態にはなりましたが、将軍様親衛隊の手によって全て鎮圧しております」

「そうか、それで?」

「そして3回目の今、人民は個人的な殺し合いをやめ、数百人規模での蜂起を計画しているようです。また、そのような集団は数十確認されております」

「数百人が数十?それは確かか?」

「はい、人民に紛れている党の間諜による報告です。間違いはないかと」

「これは防げるのか?」

「い、いえ、なんとも」


 総書記は苦虫を噛み潰したような表情で、小刻みに体を揺すっている。


「チョ外務担当!C人民国は!主席はどう対処している?」

「はい、C人民国は我が国よりも悪い状況です。2回目ですぐに国民が騒ぎ出し、国内は略奪で混乱を極め、それは大規模な反体制デモに発展。抑圧されていた少数民族も大規模デモを敢行し、治安部隊と衝突。政府は戒厳令を発して軍を投入し、反体制デモを中心に鎮圧。しかし南部港湾都市で更に大きなデモが発生、C人民国本土でも軍の投入に反感した国民が蜂起、党対国民という、前代未聞の内戦状態となりました。ただ内戦と申しましても、ほぼ軍による虐殺です」


 総書記は目を瞑って聞いている。


「3回目の今回は、虐殺された国民たちがより計画的、統率的に行動し、2日目の今日、一気に国家を転覆する勢いです」

「だから」

「だから?」

「だからっ!主席はどう対処しているのか!と聞いているのだ!!」


 チョ外務担当は身をすくめた。


「はい、主席の意向は我々にも伝わっておりません。ただC人民国外務省筋によると、国家転覆という危機的状況に外国からの介入も報告されていると、そこで、外国勢力に対する全面報復攻撃が予想される、とのことで」

「外国の介入?外国勢力?」

「はい、我が国ではネットの情報が拡散することはありませんし、C人民国でも情報統制はなされているのですが、C人民国国内で、あるいは世界中で拡散されている映像があると、それは巧妙な外国勢のプロパガンダではないかと言われております」

「どんなものだ?」

「はい、こちらに」


 それは、黒主来斗の動画だった。


「これは、日本人か」

「はい、これは本日早朝に配信されておりまして、世界中に拡散しています。C人民国でも規制をかいくぐりながら拡散していると。民衆はこの子供の訴えに共感して、悪には裁きを与えるのだ、裁きがなければ許しはないのだ、と・・」

「この内容、我が国の言語に吹き替えされているのか?」

「はい、すでに各国語バージョンがございます」


 総書記はその内容に慄然とした。殺し合い、死のループ、そして裁きと許し。


 我が国で裁かれるのはいったい誰だ?人民を苦しめたものか?人民の心に燃える憎悪は誰に向かう?


「この子供の訴えが人民を扇動し、国家転覆まで成し遂げる、と?」

「はい、その国家動乱に乗じて外国が介入してくるのだ、という考えです」


 総書記は考えた。我が国では国外の情報を徹底して規制している。この動画が拡散するはずはない。だがそれでも暴動は起こった。もし、我が国でもこの動画が規制をくぐって拡散し始めているとしたら、今回の人民の計画的で統率がとれた行動も腑に落ちる。


 そしてC人民国は我が国よりも悪い状況だ。主席の政権は倒れる。それが外国の陰謀で?


 C人民国が倒れれば我が国も、我が国もだ。


 我が国が倒れる?違う、私が殺される!

 人民に、外国に、もしかしたらここにも間諜がいるかもしれない。


 私が、死ぬ?殺される?

 だめだ、だめだっ、だめだだめだだめだっ!!


「クロスライト・・」


 総書記は黒主来斗の名を口にした。


「先に、殺す」


 総書記は、全面的な核攻撃を指示した。


 それは、日本に対しての核攻撃だ。



つづく

お読みいただいて、ありがとうございます。

毎日1話の更新を予定しています。

よろしくお願いいたします。

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