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そこに在るものぜんぶ転生神話

【ドドド転生】轟音が異世界転生した結果、竜は墜ち、魔王は散り、天地を揺るがす神の御声と祀られた話

作者: ずみ

――ドドド。

――いや、俺ほんと鳴っただけなんだって。

――なのに竜も魔王も勝手に転んで、最後には「神の御声」って……人間、解釈力が強すぎる。

ゴゴゴゴ……

ドドドド……

ザザザザ……


――大地が鳴った。


ヒュオォォ……

カランカラン……

チリン……チリン……


風が巡り、鈴が揺れる。

祈る声よりも早く、音は空を満たした。


バサバサバサッ!

竜の羽音。

ギィィィィィ……!

塔の軋み。

そして――


ズガァァァァァァァァン!!!


黒き軍勢が飲み込まれた。


シン……。

沈黙。


ポツ……ポツ……ポツ……

やがて雨。

ザァァァァ……

シトシト……シト……。


「神が……応えた」

民は震え、額を地に伏す。


けれど真実はただ。

俺は鳴った。

ただ、それだけ。


ドドドド……

ゴロゴロゴロ……

ゴゴゴゴゴ……


轟きは山を裂き、谷を抱き、

火と水をめぐらせた。


ワァァァァァァァ……

祈りの声が重なり合い、

ドンドンドン……と太鼓が応じる。

ザワザワザワ……

民衆のざわめきは、嵐のように街を包む。


やがて、黄金の旗が裂ける音――

バリィィィィン!

鉄の盾が砕ける音――

ガキィィィィン!

魔王の影が崩れ落ちる音――

ドシャアァァァ……。


そして、静謐。

ヒュゥゥゥ……と風が撫で、

チリン……チリン……と鈴が応える。


「これぞ、天地の御声……!」


民は涙し、書き記す。


『轟音の神、天より降り、竜を退け、魔を砕き、

 ただひと声にして国を救えり』


――違う。

俺はただの音。

鳴り、消えるもの。


ドドドド……

ゴゴゴゴ……


けれど人は、そうではないと言う。

音は御声、轟きは神意。

すべてを救ったと、物語に編み込む。


シン……

沈黙が訪れる。


その静けさこそ、最後のオノマトペ。

俺は散り、ただ空へ還った。


――それでも彼らは祈るだろう。

「轟音の神よ」と。



――


そして後の世に語り継がれる。

大地を揺るがした、ただの響きが、

いつしか御声と呼ばれ、神意と崇められ、

人々の歴史を貫く柱となった、と。

沈黙すらも祈りに変わり、

残響は永遠の神話へと姿を変えた。

なんかオノマトペだけでどこまでかかるかなって思って書きました。

後悔はしてません。

工事の音がうるさかったんだよ。


《そこに在るもの、全部転生神話》シリーズです

よければ【魔物食堂】も一皿どうぞ。

討伐される前の魔物に“最期の晩餐”を出す食堂のお話です

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