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異世界反証論II:虚構迷宮の証明 Part2

第4章:虚構の道標


セリスの導きで、僕は鏡の迷宮の奥へと進んでいた。


迷宮の中は奇妙なほど静かで、鏡に映る無数の「僕たち」の視線を感じる。だが、そのどれもが今の僕とは異なって見える。道がどこまで続くのかもわからない。ただ、歩くしかない。


「君は案内人だろう?この迷宮のゴールはどこにあるんだ?」

僕は歩きながらセリスに問いかけた。


「ゴールなんてものは存在しないかもしれないわね。」

彼女は軽い調子で答える。


「君も迷ってるのか?」


「いいえ。私はすべてを見通しているつもりよ。でも、あなたがたどり着く場所は、私にも見えないわ。」


彼女の言葉はどこか曖昧だった。だが、その裏に真意が隠されているようにも思えた。


やがて、一つの分岐点にたどり着いた。二つの鏡が向かい合うように立っている。その間に立つと、僕の姿が何重にも反射し、無限に続いていくように見える。


「これが次の試練よ。」セリスが静かに言った。


「試練?何をするんだ?」


「この二つの鏡には、それぞれ異なる未来が映し出されるわ。そして、あなたはどちらの未来を信じるべきかを選ばなければならない。」


「未来?」


セリスは鏡を指さす。


「一つは“あなたが存在を否定され、消滅する未来”。もう一つは“あなたがこの迷宮を抜け出し、新たな世界に立つ未来”。ただし、どちらも虚構かもしれないし、真実かもしれない。」


僕は二つの鏡を見つめた。片方の鏡には、僕が虚無の闇の中に消えていく様子が映し出されている。もう片方の鏡には、広大な世界を自由に歩く僕の姿があった。


「どちらかを選べというのか?」


「そう。ただし、この選択には代償があるわ。」


選択の条件


「代償?」


セリスが微笑む。今までの冷たい表情とは違う、不気味なほど楽しげな笑みだ。


「あなたが一つの未来を選べば、もう一つの未来が完全に失われる。あなたはその未来が存在しないことを証明しなければならないの。」


「つまり、一方を信じ、もう一方を否定するということか。」


「その通り。ただし、選んだ未来が虚構だった場合……あなたの存在そのものが崩壊するわ。」


僕は息を呑んだ。この迷宮が求めているのは、「可能性の否定」。だが、それを間違えば、僕は消滅するということか。


「両方とも虚構なら?」


「それを証明することもできるかもしれないわね。ただ、時間が許す限り……ね。」


セリスの言葉は、まるで僕を急かしているように感じた。


選択の試練


僕は二つの鏡を見つめ続けた。


「どちらを選ぶ?」セリスが問う。


「簡単な話じゃないな……」僕は呟く。


まず考えたのは、未来を選ぶことのリスクだ。どちらの未来も、映像としては説得力がある。だが、どちらも僕にとって「完全な真実」とは思えない。


それならば……。


「選ばない、という選択肢はあるのか?」


セリスは少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑みを浮かべた。


「あなたが選ばないなら、この鏡はあなたを飲み込むわ。どちらかを選ぶことでしか、この試練を超えることはできないの。」


僕は再び鏡を見た。消滅する未来と、自由な未来。どちらも魅力的とは言えない。


その時、ふと気づいた。


「待てよ……」


反証の鍵


「そもそも、この鏡が映している未来が、本当に未来だという保証はどこにもない。」


セリスが目を細める。「興味深いわね。続けて?」


「僕がどちらかを選べば、その選択が“正しい”ことを証明する必要がある。だが、その証明には根拠が必要だ。そして、その根拠はどこにもない。」


「つまり?」


「この鏡が見せている未来そのものを、虚構だと証明する。それが最善の道だ。」


セリスは少し黙った後、微笑んだ。「それが本当にできるかどうか、見せてもらうわ。」


僕は二つの鏡を指さした。


「この迷宮では、“自分で選び取る未来”が現実となる。それならば、僕はこの未来そのものを拒否する。僕に未来なんて存在しない。僕は今ここにいる。それだけだ。」


鏡が激しく揺れ始めた。二つの未来が映像のように歪み、崩れ去る。


「いいわ、いいわよ!」セリスが満足げに叫ぶ。「あなたは未来そのものを否定した。つまり、この試練を超えたということね。」


僕の目の前にあった鏡は完全に消え、代わりに新たな道が現れた。


次なる試練


「これで終わりか?」


「いいえ。まだ始まったばかりよ。」


セリスが指さした先には、巨大な扉がそびえ立っていた。その扉には無数の文字が刻まれている。その一つ一つが、まるで僕に何かを語りかけているように見えた。


「この扉の先にあるのは、あなた自身の核心よ。進む準備はできた?」


僕は一度深呼吸し、頷いた。


「やるしかないだろう。」


扉に手をかけた瞬間、何かが僕を強烈に引き込む感覚がした。


(続く)

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