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ドラギアス  作者: オリテアント
第1章 いきなり国家レベルの問題児になった件
6/21

必勝法はジャンケン?

「あ!君もあの時の…!」


『!貴君か…何故このような所に…。』


キーロックを捕獲しようとするも、アイラにぶつかって来たダイアモンドのような女騎士のようなアーティガル、ジャンヌ・ダイアに妨害されてしまうが彼女とも面識があり思わぬ再会を果たす。


「僕達は君達を元の場所に返しに来たんだよ!」


『またあそこに…冗談ではない!解放してくれたことには誠に感謝する!しかしだからと言って何で私達をまたあそこに閉じ込める必要がある!』


キーロック同様にまたあの場所に閉じ込められるのは嫌らしく、恩人であるサーティであっても猛反発してくる。


「そうしないと僕達は国家反逆罪で罪に問われるんだ…。」


『ならば我らの自由を奪うのは果たして正しいことなのか!?ようやく自由を謳歌していると言うのにそれを奪うのか!?』


「うっ…。」


確かにトップシークレットの部屋と比べると彼らはとても生き生きしている。それなのにもう一度閉じ込めることに躊躇うサーティ。


「我が名はハルパニア王国の王位第二継承者のホレスである!貴様らアーティガルは未知の力を持つ故に野放しにすればどんな危険があるか分からん!故に閉じ込める、もしくは封印するのだ!」


それを見たホレスは助け舟のつもりか自身がこの国の王位継承者であることと、アーティガル達の処遇を明かすのだった。


『…!どうやら我々の仲はこれまでのようだな…!』


「ちょ…怒らせたんじゃないの!?」


ビートの言う通りジャンヌ・ダイアは身体をワナワナと震わせて怒りを露わにしていた。先程のホレスの台詞は自分達の未来は決定づけられていると言われたような物だから当然だ。


『ならば私も言わせて貰おう!我が名はジャンヌ・ダイア!今を持ってして我らアーティガルとドラギアスの自由のためにこの身を捧げる!これは…革命だ!!』


「怒らせたどころか革命宣言までしてる!?」


怒っているどころか高らかに革命宣言をする有様にロゼは仰天としていた。


『来い!ブリリアントカリバー!』


「何あれ!?ダイアモンドの剣!?」


手を地面に触れるとアーサー王の剣のように、ブリリアントカットされたようなダイアモンドの聖剣が地中から現れる。


『そこのドラギアスの忌々しい鎖も私が断ち切ってくれる!』


「アイラを解放するの…?」


聖剣を軽々と引き抜いたジャンヌ・ダイアはアイラとサーティを繋ぐ鎖を斬ると宣言し、それを聞いてサーティは思わずアイラを見てしまう。


「どうしたの?」


「アイラは…僕と契約したけど…アイラはどう思ってるのかな…。」


「おい!むざむざ鎖を切られようってのか!?」


事故とは言えアイラと契約したが、今思えば彼女の意思はどうなのか分からなかった。ひょっとすると嫌がっているのではと考えサーティは鎖を切って貰った方が良いのかどうか迷ってしまう。


『…!何か…イヤ…!』


「アイラ…良いの?」


『分からない…けど、サーティと離れたくない…!?』


だが、アイラは断ち切られることを拒絶して親の腕にしがみつく子供のようにしっかりとサーティの腕に抱き着く。


『どんなことをしてたぶらかしたかは知らないが、私が解放してくれる!』


「考えは立派だが人の話を聞かない奴だな…。」


同胞であるアーティガルやドラギアスには友好的だが、度が過ぎてアイラの意思を無視していることに気が付いていなかった。


『ぬおおお!』


「って、ヤバいぞ!あんなダイアモンドの大剣!食らったらひとたまりもないぞ!」


ジャンヌ・ダイアはその小さな身体の何処に隠していたのか、引き抜いた時と同様にダイアモンドの聖剣を軽々と持ち上げ横に振りかぶる。


『ここは通さない!』


「アイラ!」


ブオンと音と共にダイアモンドの聖剣が横薙ぎに払われるが、アイラはギガント族の怪力とドラゴン族の両腕で見事受け止める。


アイラを始めとするドラギアスはギガント族とドラゴン族の両方の特性を持つ故に造作のないことだった。


『ぬ…ぬ…ぬ…!!』


『な…な…な…!?』


聖剣を受け止められたこともだが、かなりの重量がある剣と自身をそのまま持ち上げるアイラに、上げられたまま硬直するジャンヌ・ダイア。


『グオオオ!』


『うわああ!?』


竜の咆哮を挙げ、持ち上げたまま遠くへと放り投げて家の壁にめり込ませる。


「スゴいよアイラ!」


『え…あ…ありがとう…。』


「おい!まだ来るぞ!」


強そうなジャンヌ・ダイアを受け止めただけでなく、遠くへ力強く放り投げたことにサーティは感心する。しかし慣れてないのかアイラは戸惑ってしまい、その間に家の壁から抜け出たジャンヌ・ダイアが突進してくる。


『ぐあ!?』


「アイラ!?大丈夫!?」


サルサが忠告するも、突進してきたジャンヌ・ダイアがアイラを容易く吹き飛ばしてサーティの前に転がす。


『こんのぉ…ふん!』


お返しと言わんばかりに殴り返すが、ジャンヌ・ダイアはその場で不動と言わんばかりにアイラの拳を受け止める。


『いっ…いったあああぁぁぁい!?』


「だ…大丈夫!?」


対するアイラは殴った拳を抑え、泣きながらのたうち回っていた。


『力では勝っただろうが防御力では私が上だ!』


「相手はダイアモンドの身体を持っています。例えドラゴン族の鱗でも耐久力に差が出てしまうでしょう。」


アイラの拳の鱗は割れたり、ヒビが入ったりしてそこから出血もしていた。攻撃を仕掛けた側が逆にダメージを受けてしまうほどの防御力ではドラギアスでもどうにもならなかった。


「あのケガじゃアイラは勝てないよ!どうしたら…。」


「ダイアモンドは炭素の塊、火には弱いはずですよ。」


拳をケガしたアイラが危ないと考えるサーティに高い分析力と知識量を持つパスナが火を使うようアドバイスする。


「火?それならドラギアスも火を口から吹けるはずだよ!アイラ、火を吹いて!」


ドラゴンが火を吹くことはおとぎ話でよく聞いており、ドラゴン族の力を持つのならそれくらいは可能だと告げる。


『えっ…火?』


「そうだよ!お願い、口から吹いて!」


『ふっ…ふぅ~!?』


サーティはアイラに火を吹くように頼み込む。一瞬躊躇いながらもアイラは口から火を吹こうと息を吐き出す。それを見てジャンヌ・ダイアは後退りする。


『ふぅ~!?ふぅ~!?』


『…ハッタリか?』


「アイラ…?」


ところがアイラの口から火は出ずに、吐息が出るだけで終わった。


『…どうしよう…長い間あそこに閉じ込められてたから、どうやって火を吹けばいいか分からない…。』


「ええっ!?」


なんとアイラは火を吹く方法を忘れてしまったようだ。言うなれば宿題を終わらせたのに、家に忘れてしまったかのような衝撃の内容だった。


『来ないならばこちらから行かせて貰うぞ!』


「どうしよう!?このままだとアイラがヤラれちゃうよ!?」


「ならばこれを使ってみて。」


何もしてこないことにジャンヌ・ダイアは聖剣を再び構えて走ってくる。このままではアイラがヤラれてしまうが対抗手段がないことに攻めあぐねているとパスナは試験管を渡してくる。


「これは空気に触れると発火し、一気に燃え上がる薬品です。」


「えー、危なくないそれ!?」


試験管には燃えやすい薬品が入っていると言い、ミイスは危険ではと指摘する。


「それに足が動かないんだぞ!聞く限りじゃそのガラスの筒をあいつにぶつける必要があるのにどうやってぶつけんだよ!」


更にジャオの一言で思い出すが、一同はキーロックの封印によって足が動かなくさせられていたのだ。これでは試験管を当てたくとも距離があり過ぎる。


「あー、今気がついたんだけどさ…。」


その時、ビートがおずおずと手を挙げながら何か言おうとしてた。全員の注目が集まった瞬間に、足をヒョイと上げた。


「ほら、この封印って靴に働いてるから靴を脱げば動けるんじゃ…。」


「あ…そうか…。」


どうやらキーロックの封印は靴にだけ作用しており、足事態には作用してないため靴を脱げば動けるのではとやってみせた。決定的な証拠を見て一同は靴を脱ぎ始める。


「これなら…えい!」


『ンヌ!?火だと…!?』


靴を脱いだサーティはパスナから試験管を受け取り、ジャンヌ・ダイアの手前に投げつける。試験管が割れるとパスナの言う通り地面が炎上してバリケードのように燃え広がる。


「サーティ!ケガを見せて!」


『これくらい…唾を付ければ大丈夫…。』


「ちゃんと消毒しないとダメよ!」


炎に怯んで止まるジャンヌ・ダイア。その間にアイラの拳の容態を確認するが、彼女は拳の血と傷口を舐めて何とかしようとする。


『おのれ…どうすれば…。』


『オイラの力を使え!』 


炎の向こうでは炎を前にして躊躇うジャンヌ・ダイア。そこへキーロックが話しかけ、何か提案を持ちかける。


『済まない…チェインタクト!キーロック!!』


『オオオッ!』


「えっ!?アーティガル同士で契約した!?」


なんとトライブレイトで口にするキーワードを唱えた途端に、キーロックはジャンヌ・ダイアと1つとなっていく。


「あいつ…キーロックを取り込んで鎧みたいにしやがったぞ!?」


今のジャンヌ・ダイアは肩と胴にレトロ風な南京錠の鎧、顔にも南京錠のような兜が追加され、サルサが指摘したようにキーロックは契約した彼女の鎧となったのだ。


『これで先程のようには…行かんぞ!』


何をするかと思えば聖剣で地面を抉って瓦礫を炎の上へと飛ばす。それらにはダイアモンドの破片が刺さっていた。


『ムーブロック【動作封印】!』


「ほへー、姿だけじゃなくてキーロックの力も使えるんだー。しかも浮いてる瓦礫を空中に止めちゃうなんて。」


聖剣を捻るとダイアモンドの破片も同じく捻られると、飛ばされた瓦礫は空中で時を止めたように停止する。


キーロックの能力を使ったことはもちろん、キーロックの能力が重力にも逆らうように作用するとは思わなかったためにミイスは思わず拍手までしていた。


「これは興味深い!アーティガル同士で契約すると、合体しその能力を使えるようだね!」


「関心してる場合か!ますます手がつけられなくなったぞ!」


パスナも関心して改めてアーティガルに興味を示すが、このままではホレスの言う通りますます手がつけられなくなるだろう。


『こちらから行くぞ!』


『がはっ!?』


「アイラ!?」


しかしジャンヌ・ダイアはその反対に突進してアイラを押し倒す。


『クリスタロック【結晶封印】!』


『あ…あ…あ…!?』


「アイラ!?」


更に聖剣を肌に当てて捻ると、アイラの身体が結晶体になっていく。身体に起こる異変に戸惑いを感じながらアイラはクリスタルへと変貌してしまう。


「こ…こんなことって…。」


「こんなことも出来るのか!ひとえに仮死状態にはされたのだろうが、生命体を結晶体にしてしまうとは驚かされてばかりだ!」


ビートは反応としては間違ってないが、パスナ知的好奇心が強いために空気の読めない発言ばかりしてしまう。


「まさか死んだのか!?」


「いや、仮死状態…眠らされてるのと同じだね。いずれにしてもこれでは戦えないね。」


「ここまでなの…!?」


死んだ訳ではないが唯一戦えるアイラが戦闘不能になってはどうしようもなく完全に諦めムードだった。


「でもアイラがこのままだとダメだよ!?どうにか…どうにか戻って欲しい…!?」


しかしこれから先、アイラが戻るかどうかは分からない。何とかして戻す必要があるのに、唯一解き方を知る者はジャンヌ・ダイアしかいない。 


無力感と喪失感からサーティは叶う訳がないと分かっててもアイラに戻って欲しいと強く願う。


『ん…んんっ…。』


「え、アイラ…?」


すると結晶体になったアイラが声を発し、なおかつピクピクと指や尻尾が僅かに動き始める。


『また何かする気だな!そうはさせるか!』


何か動きがあることに気が付いたジャンヌ・ダイアは聖剣を持ち直して突撃してくる。


「アイラには手出しさせない!?」


『安心しろ!断ち切るのは鎖だけだ!それに貴君は恩人故に斬りつけはせん!』


アイラを守ろうとして立ち塞がるも、問題ないと言わんばかりにジャンヌ・ダイアは聖剣を振り上げる。それと同時に硬い物が砕ける音がサーティの背後で響き渡る。


『サーティには…手出しさせない!』


『うがっ!?』


結晶体を自身の力で砕いたアイラはラリアットで突進してきたジャンヌ・ダイアを跳ね返す。反動で彼女は地面にめり込んだ。


『いたっ…やっぱり硬い…。』


「もう無理しちゃダメよ!ケガが酷くなるわよ!」


サーティを助けるもやはり相手の防御力が高過ぎてアイラは更に腕を傷めてしまう。


『ぬう…やるな…しかし私の防御力は生半可な物ではないぞ!』


『キラキラした石みたいな奴なのにスゴい硬い?!』


「…石…そう言えば…。」


防御力の高さにアイラも苦戦していたが、彼女の発した言葉にサーティはあることを考える。それは圧倒的な防御力を誇るジャンヌ・ダイアが、炎以外にも何かに苦戦していたことを思い出す。


「もしかして…ねぇ、パスナさん!あれを持ってませんか?」


「あれって?幾ら天才でも何を考えているのを当てろと言われても。」


「えっと…ネバネバしてて、虫を捕まえる…。」


『今度こそ終わりだ!もうそのドラギアスは戦えまい!』


パスナにある物を所望しようとするが、その前にジャンヌ・ダイアは聖剣を構えて突進してくる。


「あっ!?待って!?」


『覚悟ー!』


「サーティちゃん!?」


待ったナシとジャンヌ・ダイアは聖剣を振り上げてサーティにトドメを刺そうと迫る。


「あ…あれがあれば…!?」


『サーティ!』


『でえやあああ!!』


「うっ!?」


ある物があれば勝てると思ったのにそれすら叶わないことに思わず目を瞑り、その直後にジャンヌ・ダイアはサーティに衝突し押し倒すのだった。


「サーティちゃん!大丈夫!?」


「サーティ!?」


「うっ…ううっ…。」


かなりの衝撃だったために全員が心配してサーティに駆け寄ると、彼は蹲っていて苦しそうにしていた。


「えへへ…これ…。」


『くっ…離せ…!?』


「えっ!?これは…!?」


仰向けにすると彼の胸の中でジャンヌ・ダイアは抱かれる形で捕らえられていた。


「ど…どうやったの?!」


「えへへ…いつの間にかこれが…。」


『くっ…何だこれは…ネバネバして動けん!?』


「これは捕虫用の粘着シート?」


ジャンヌ・ダイアはサーティの胸に仕掛けられていた虫を捕獲するための粘着シートによって身動きが取れなくなっていた。


「これはまた興味深い…いつの間にそんなのを。先程所望したのはそれだったのか。」


「それよりもほら!少しアザになってるじゃない!?」


粘着シートを取り上げるとサーティの胸は赤黒くなっており、肋骨は折れてないものの冷やす必要があった。


『くっ…離せと言ってるだろ…!?』


「おーおー、見事にくっついてんな。これじゃあ動けねぇな。」


「こうしてみると可愛いね。」


粘着シートにくっついたジャンヌ・ダイアは動きたくともベッタリくっついて動けそうにもない。こうしてサルサとビートが突っついても無抵抗そのものだった。


「何でこれで捕まえられるって分かったの?」


「これだよ…パー。」


「パーってジャンケンの?」


まさかの粘着シートで捕獲できるとは夢にも思わなかったが、何故そのような方法で上手く行くのかサーティに聞くとジャンケンのパーを出す。


「ジャンヌ・ダイアは防御力が高くて叩くことに強いグーみたいだけど、その分パーみたいに受け止められることに弱いんじゃないかって思って。」


「マジかよ!ジャンケンで攻略したってのかよ!?」


「最初はジャンヌ・ダイアが投げられた時に家や地面にめり込んだでしょ?そこから出るのが大変そうにしてたのを見て思いついたんだ。」


めり込んだ際に簡単には抜け出せなかったことを思い返し、その上でジャンケンに置き換え、粘着シートを使って攻撃を受け止めた後に粘着剤で完全に動きを封じ込めたのだ。


「すっげぇー…まあ、何にしても…。」


「アーティガルの『ジャンヌ・ダイア』と『キーロック』!捕獲完了ー!!」


『くっ…無念だ…!』


サーティ達は思いがけない方法でジャンヌ・ダイアとキーロックを何とか捕獲するのだった。

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