自由への代償
「ぼ…僕が国家反逆罪って…!?」
「待って!サーティちゃんが、何をしたの!?」
「お前達も同罪だ!来い!」
武装した兵士達によってサーティを始めとするロゼやサルサも逮捕されてしまう。
「離せ!?この!?」
「お…大人しくしろ!?」
その中でもジャオは獣のように暴れるためにさすまたを使って抑え込む兵士達。
「ホレス様、今はご同行を…。」
「分かった。どうにも嫌な予感しかせんがな…。」
訳も分からず抵抗する者もいればホレスやパスナと言った者は同行に準ずる。
「さて…お前達には集まって貰った訳だが。」
「はい…。」
今にも泣き出しそうになりそうなのに、更に縮こまる様子を見せるサーティ。と言うのも目の前にいるのは知る人ぞ知るこのハルパニア王国の国王、レスディンだからだ。
幼い上に国家反逆罪で問われ、その上で偉い人から厳つい表情で睨まれたら萎縮するなと言うのは無理があった。
「集まった理由は何か分かるか?」
「い…いいえ…分かりません。」
「あの…この子が何をしたんですか?」
「実際、僕達は事が起きてから辿り着いたから何が何やらで…。」
王の間に集められたのはサーティだけだはない。その場に居合わせたミイス、パスナ、サルサ、ビート、ロゼ、ジャオがいた。
しかしながらその場を目撃したロゼ達はもちろんだが、一番間近にいたサーティにも何の因果で国家反逆罪になったのか分からなかった。
「ホレス、貴様もいながら何をしていた。」
「面目ありません、父上。」
その中にはホレスもいたのだが、彼は申し訳なさそうにレスディンに謝罪する。
「ふむ、自分達が犯したことがまるで分かっていないな…これを見てみろ。」
『リー!リーリー!』
『自由だー!』
『キキキ!キングー!』
『いやっほー!』
『マッジー!あり得ないー!』
レスディンは指を弾くと立体映像が映し出され、ハルパニア王国にてたくさんのドラギアスやトップシークレットとされるあの部屋にいた不思議な生き物達がところ狭しと暴れていたのだ。
「これは…。」
「そこのお主。サーティと申したな。貴様がそこのドラギアスを前に何と言った?」
「え…えっと…確か『君も皆も自由になれたら良いのに』って…。」
指摘されてサーティは思い出しながらアイラに言ったことを思い出す。
「恐らくそこのドラギアスが言葉を聞き取れるほどに接近し、その際にこの国が保有するドラギアス達とアーティガル達を解放したいと強く願ったことにより彼らはこの国に解放されてしまったようだ。」
「ええっ…!?僕がそれを願ったために…!?」
よくは分からないが自由になって欲しいと願っだけで国のドラギアス達を逃がしてしまったと聞き、サーティは事の重大さに青ざめる。
「たったそれだけでこんなことに…!?」
「確かにそれだけだと思うかもしれん。しかしトライブレイトになる際にドラギアスと契約し、何かしらの能力や恩恵を受けるのは知っているな?」
「聞いたことがありますよ。ドラギアスと契約したトライブレイトは契約主に応じて様々な能力が身につくと。」
ロゼはサーティを弁護し、レスディンの補足にパスナがトライブレイトの特徴を挙げて詳しい説明をする。
「その通りだ。アンナ、何が起こったかは分かるか。」
レスディンは眼鏡をかけた研究員と思わしき女性に事の詳細を更に説明する。
「正直に言って前代未聞の事態ですが…そこのサーティくんは厳重保管されていたドラギアス達とアーティガル達をたった一言で全て解放した…これは彼の潜在能力があまりにも強い可能性があります…。」
「こんなことになるとは前代未聞の事態だ。だが、もはやお主の潜在能力があまりにも強過ぎるために、そこのドラギアスと契約した瞬間にこのようなことになったのだろう。」
「そんな…じゃあやっぱり僕のせいで…。」
「サーティちゃん…。」
「あのー、ドラギアスは分かるんですけどアーティガルって何ですか?」
事態を知ったサーティは落ち込んでしまうのを尻目に、ミイスがずっと気になっていたアーティガルのことを訊ねる。
「それは私から。まず説明するのはドラギアスの持つドラゴン族とギガント族の血が混ざった血液には生物を進化させる力があるのはご存知でしょ?」
「はい、それによって様々な多種多様な亜人が生まれては、ドラゴン族とギガント族の争いに巻き込まれて滅んだと。」
「そのドラギアスの血液を、ワイルズビースト達などに使用し人工的に進化させた生命体…それが人工進化生命体『アーティガル』です。」
おとぎ話でもギガント族とドラゴン族の血によって様々な人種や生物が生まれたことは、この国の者ならば知っていて当然の内容だ。
あの謎の生命体はそんなドラギアス達の血液を使って、人工的に進化させた生命体であると研究員であるアンナから説明された。
「ただ、独自の進化をさせたがためにその変容も能力も未知数…そのため我が国で厳重に保管していたのですが…。」
「あ…。」
「事の重大さが分かったな?貴様がそのドラギアスと契約したことでドラギアスはもちろん、未知の力を持つアーティガルまでもが解き放たれたのだ。この始末をどうつけるのだ?」
「うっ…。」
確かに事の重大さは理解したが要はどんな危険があるか分からない相手を逃がした責任をどう取るのかと言うことだった。これにはサーティもどう答えたらいいか分からなかった。
「…まあ、貴様のような幼子にどう責任を取ると言われても分からんか。ならばこうするまでだ。お前達に命令する!逃げ出したアーティガルとドラギアスを全て捕獲するのだ!」
「す…全てですか!?」
「そうだ!さもなくばこのまま国家反逆罪として貴様はもちろん、この場にいる者達も同罪とする!」
「そ…そんな…!?」
齢10歳にしてサーティは国の貴重なドラギアスと未知数の力を持つアーティガルを逃がし、国家反逆罪だけでなくその全てを捕獲する任を与えられ、さもなくば周りにいる者達も罪に問われると言う大きなペナルティを背負うこととなったのだった。