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ドラギアス  作者: オリテアント
第3章 ノアズガーデン【ノアの匣庭】
19/21

準備万端、お腹も満タン

「おーい、資材が足りないぞ!」


「この瓦礫はどうします?」


「ふう…にしてもまさか国外へ旅に出るとは思わなかったわ。」


町の復興のために作業員達が忙しなく瓦礫の撤去や家屋の再築などを行う中で、賛美を受け今後の方針を聞いたロゼ達は城からの帰路に立っていたがその内容に今だに目が白黒していた。


「あう…ごめんなさい…。」


やはり責任を感じたサーティは抱きかかえられているロゼの腕の中でシュンとなっていた。


「あ、ごめんね。サーティちゃんは何も悪くないわよ。」


「寧ろ僕達は旅行が出来るみたいで楽しみなんだよ。」


そのつもりではなかったとは言え、落ち込ませてしまいロゼはが励ましビートがそのフォローをする。


「ビートよ、一応は聞くが国外へと旅立つ目的が、アーティガルとドラギアスの捕獲、そしてサーティの呪いを解くと言うことは忘れていないな?」


国外へ行く目的は大きく分けて二つ、一つは逃げ出したアーティガルとドラギアスの捕獲。そしてもう一つはサーティに掛けられた呪いを解くために魔術国家イリュガルに向かうことだ。


「忘れてないよ〜。でも、道すがら色々な名所や美味しい物を堪能出来るんだから何もそこまでかしこまらなくても…。」


「むう…まあ、確かに食事や息抜きは大事ではあるしな。」


とは言え、否応なしにも名所は目にするし生きるために食事に手を付けるだろうし、それならばやむ無しとホレスは判断する。


『それにしても…何を準備したら良いのでしょうか?』


「シンプルに考えますと、食料や水、薬はもちろんですが寝泊まりするためのキャンプグッズでしょうね。」


意外にもおっとりしているベルナが旅には何が必要だと訊ねられ、パスナは考えられる必需品を挙げていく。


「思ったよりも必要なのが多いな。」


「何処から手を付けようか?」


単なる旅行でも持っていくものは多いため、その多さに舌を巻いてしまう。すると何処からか妙な音がしてきた。


「あう…おなかすいた…。」


「まずは何か食べましょうか。」


『賛成〜!』


今思えば夜通し戦った後で城へと呼び出された後で、満足な食事を取っていなかったをサーティの腹の虫の音で思い出す。これにはラルトも大喜びだった。


『しかし我らが暴れたためにほとんどの店は…。』


しかし責任感からかファートが重々しいことを口にしたために一気に空気が暗くなる。


「…きにしないで、みんながわるいんじゃないよ!ぼくもげんきになるから、みんなもげんきになって!」


『…ありがとう。』


自分と同じように暗くなっているのを見たサーティは、ロゼ達が自分にしてくれたように彼らを励まそうとして笑顔で元気に振る舞う。


「ふふっ、それじゃあサーティちゃんに何を食べるか決めて貰うかしら?」


相手に元気になって欲しいと思うのなら、ロゼはサーティ自身にも心の底から元気になって欲しいと考えて何が食べたいか訊ねる。


「じゃあ、あまいものがたべたい!」


「甘い物か…何があったかな?」


『おや、この匂いは?』


『甘い匂いがする〜!』


サーティは甘い物を所望し、それを聞いて何かないかと考えているとお誂え向きと言うべきか蜂蜜の濃厚かつ甘い香りがしてくる。


「フレンチトーストの店だ!」


その店は喫茶店らしく、外に置いてある看板にはフレンチトーストを勧めていた。


「どう言う食い物なんだ?」


「フレンチトーストはパンを卵と牛乳を混ぜた混合液で焼いた料理だよ。ハチミツやアイスなんかで味付けすると美味しいんだよ。」


フレンチトーストが何なのか分からないジャオにビートが詳しく説明する。


「すみませんー。」


「あら、誰かと思えば英雄さん達じゃないかい!」


入ってみると気のいい中年の女性がフライパンを振るってフレンチトーストを焼いていた。さすがに色々と噂になっているのか、目にした途端にロゼ達が何者かいち早く見抜くのだった。


「済まないがフレンチトーストを十六人前、作って貰うか。」


「おやおや、ホレス様まで…少々お待ちを…。」


英雄になったことを差し引いても、王位継承者であるホレスのことはよく知っていて、彼から直々に注文を受けた女性は慌ててフレンチトーストをテキパキと作っていく。


「どうぞ、十六人前ですよ~。」


「これがフレンチトースト…中華料理とはまた何か違うな…。」


「さすがに洋風と中華風じゃジャンルが違い過ぎるからねぇ〜。」


ジャオは基本的には好き嫌いなどはないが、王宮での見たことがない豪勢な中華料理には驚かされたし、フレンチトーストのようなオシャレな雰囲気と甘ったるい匂いにはまた違った意味で驚かされて食べるのを戸惑う。


『な…何よこの甘ったるい食べ物は!虫歯になったらどうすんのよ…!』


「そう言いつつも平らげそうな勢いで食べてますね、しかも満面の笑顔で。」


キャズは甘過ぎると文句は言うが、顔と身体は嘘をつけないようで笑顔でフレンチトーストを食べ続けていた。


『この氷みたいに冷たい食べ物は…?』


「それがアイスだよ。ただでさえ甘く仕上げてるフレンチトーストと一緒に食べるとほっぺたが落ちるほど美味しくなるんだよ。」


『ほっぺたが落ちる…!?』


「本当にほっぺたが落ちる訳じゃないよ?」


ドラギアスに取ってはパンやフレンチトーストもだが、アイスも食べたことがないため未知の甘さと美味しさに舌を巻いていた。


「きっと国外にも美味しい物があるよ、きっと!」


『そうなの〜?楽しみ〜!』


「…そうだな。」


フレンチトーストを食べていたホレスはビートのふとした台詞に同意する。


「やっぱりよ、曲がりなりにも国外旅行みたいな物だし任務だの責務だのっては大事だが楽しむことも大事だと思うぜ。」


「楽しむか…真剣勝負の時も、それで良いのか?」


「そりゃ勝負の時は真面目にはなるだろうけど、やっぱり何処か楽しいって感情が湧いてくるはずだぜ?」


「…確かに兄と剣術をしている時は何処か楽しかった気がするな。」


楽しむことも大事だとサルサから聞かされ、ホレスは昔の記憶に思い馳せるように遠い目をしていた。


「そうだ、剣術で思い出しんだけど武器とか防具はどうするの?僕は持ってるとしても包丁とかフライパンぐらいだけど…。」


「ケーキでも作る気かお主は。」


長い旅路となればワイルズビーストやラプランのような野盗に出会うかもしれない。戦うことになれば武器や身を守る防具が必要だ。


「それにあの人達だってまだ諦めてないでしょうし…。」


「そう言えばあいつもいずれまた会うことになるとか、そんなこと言ってたよねー。」


ロゼとミイスはグリムバハムート【御伽の竜王】とサイクロプスアイズ【偉大なる隻眼】が再びサーティを狙ってくるかもしれないと話していた。


「さすがに包丁やフライパンはないが、武器が必要なのは確かだ。食べ終えたら武器でも見に行くか。」


「そうだね。」


「代金だが纏めてこれで支払いを頼む。」


食べ終えた後の方針も決まり、食べ終えたホレスは懐から長方形のプラチナを取り出す。


「それってプラチナードじゃない!」


「王族の方が持っているとは聞きましたが…。」


それはこの世界に置ける最高額かつクレジットカードのような役割を果たす代物で、多くは貴族や王族などが持っている。


「どういうの?」


「その場でお金を持ってなくてもあれを提示すれば代金の代わりになるの。その時の代金は金庫や口座の中にある財宝から、魔法によってその国の現金に換金されて支払いされるの。」


クレジットカードのように口座引き落としはもちろんのこと、国外に置ける異なる為替事情にも対応出来るのだ。


「そう言うことだ。では支払いを…。」


「待ってくれ、ここは割り勘にしようぜ。」


「…缶を割るのか?」


支払いしようとしたがサルサは割り勘にしようと言い出すも、ホレスは何なのことか分からずにいた。  


「代金を皆で払うってことだよ。」 


「友達なんだから皆で払いましょう。」


「友達か…。」


ミイスが説明を加え、ロゼも割り勘には賛成していた。


『ごめんなさい、私達はお金は…。』


「あたしもそんなのは…。」


ドラギアスのアイラ達はもちろん、ハンゾウルフやドラギアスのホウルに育てられたジャオはお金を持ち合わせてなかった。


「良いわよ。でもこれから必要になるから覚えていってね。」


「代価や代金を使って食べ物や衣服などを得るのですが、一般的なのはゴールドと言う硬貨を使うのが一般的ですね。」


取り敢えず社会には何かを得るには代価が必要だと言うことを教える。この世界ではプラチナード以外の支払い…現金払いはゴールド硬貨で統一されている。


「しかし注文は十六人分だぞ。一気に支払った方が良いのではないか?」


「あー…まあ、確かにな…。」


ホレスに言われて気が付くが、十六人分でしかも代金を持っていない者達が半数以上いる。彼らのお財布事情で割り勘は厳しかった。


「やはり我が支払おう。何よりもこれは我にしか出来ないはずだ。」


「そ…そうね。ああは言ったけど、お願いするわ…。」


友達として支え合うつもりであったが、多少カッコ悪いところを見せてしまう。結局、支払いはホレスがプラチナードで支払うことで完済した。


「おいしかったね、フレンチトースト。」


「そうね。また食べたいわ。」


「それなら僕に任せてよ!また作ってあげるから!」


呪いで小さくなったために落ち込んでいたが、サーティはフレンチトーストですっかり笑顔になったており、仲間達もつられて笑顔になっていくのだった。


「武器ならば…ここが良かろう。」


次は喫茶店で話したように武器を調達するために武器屋を訪れていた。


「いらっしゃい…おや、若い英雄さん達じゃないか。今日は何をお探しかな。」


入って見ると店主が出迎えくれたのだが、頭はバンダナをしたセントバーナードと言う犬の頭が、恰幅の良い男性の身体の上に乗っているような亜人だった。


「何だありゃ、ハンゾウルフみたいな奴だな。」


『あれはコボルパーと言う異種族だよ。』


その亜人はコボルパーと言い、見た目は犬や猫のような姿、或いはその耳や尻尾を持つとされる異種族だ。


「ワシはバーンと言う。旅の話はレスディン国王から聞いていたが、恐らくそのための武器が欲しいんじゃないかい?」


呑気そうな雰囲気だが、武器を取り扱うだけあって目利きは悪くないようだった。


「私達は武器のライセンスとか持ってないけど、良いのかしら。」


「ここで武器の適性を見て、どの武器を持たせれば扱えるかを見極められれば、仮ではあるがライセンスを発行出来るだろう。」


武器のライセンスの取得は教習などが必要だが、ここでどの武器の扱いが上手いか見極めると言う。


もしも武器の扱いに適性があれば、危険性を理解していることはもちろん、自分までケガすることはないため国から仮のライセンスを発行すると言う。


「さて、どんな武器が良いかな。」


「では余からだ。我は無論、剣だ。」


まずはホレスからだが、迷うことなく樽の中に入れてある剣を引き抜く。


「ふむ、思った通りだ。重さも長さも今の余に扱いやすい物だな。」


「兄ちゃんと剣術やってたとか言ってたもんな。」


「しかし防御も捨てがたい…この盾も良いな。」


剣は申し分ないが、防御も必要と考えて壁に掛けてある盾を一つ抱える。しかし彼には重いのかズリズリと盾の端が石造りの床に当たる。


「もう少し軽い素材で出来たこれを使ってみてください。」


「うむ…これなら良いな。」


今度のは上手く持ち上げられ、満足そうに掲げるホレス。


「俺はどうするかな…こいつは?」


「湾曲刀と言う種類の剣だよ。普通の剣とは違って切れ味があるのは反り返ってる部分だけだよ。」


「この棍は作りが複雑ですね。」


「それは多節棍と言い、三本の棍を鎖で繋いだ中距離用の武器だよ。」


中には他のと似たような武器や見慣れないような武器がたくさんあって思わず目移りしてしまう。


「僕はこれにしよう。」


「それはハンマーとアックスの打撃・斬撃の両方を兼ね備えた武器だよ。」


ビートは片面が重厚な作りのハンマー、もう片面が斧になったヘビー級の武器だった。


「持ち上げられるのかい?それはとても重いよ?」


「いよっと!こんなの軽い軽い!」


「ス…スゴいわね…。」


大の大人でも三人か四人で持ち上げないと動かせそうにない武器を、見た目的にはサーティやジャオに次いで小柄なビートが軽々と扱う。


「ラルトと契約したからか、身体から力がみなぎるんだ。こんなの軽い軽い!」


『私と契約したお陰だね〜。』


ラルトと契約したこともあってか、ビートは今まで以上の怪力を発揮するようになった。


「私は…あら、これって…。」


「おや、お嬢ちゃんは銃に興味があるのかい。」


「私の家族は代々、銃を扱ってたの。もしかするとこれに適性があるかも…。」


ロゼは太腿くらいの太さがあるマスケット銃を見つけてマジマジと見ていた。血筋のためか銃はロゼの身体の一部のようにしっくりと馴染むのだった。


「これは何だ?」


「やたら大きなフォークみたいだね。」


「サイと呼ばれる武器だよ。手に持って扱うんだ。」


ジャオが手にしたのは十手サイズの三叉槍だった。サイと呼ばれる武器であり、ビートの例えは間違ってないだろう。


「あたしはこれにする!」


『ジャオにはその武器が一番似合ってるね。』


ジャオは暫く扱ってみるが何ら問題はなさそうだった。ホウルも満足そうにジャオに微笑むのだった。


「見てこれー、腕にしっくり嵌ったよー!」


腕に半円状の籠手を身に着けたミイスがそれを自慢してくる。


「それは防具と武器の両方の特性を持たせたワシのオリジナルの試作品の一つじゃ。」


それは従来の武器ではなく、バーンが自らの技術で作り出したオリジナルの武器だった。


「どう使うの?」


「盾がスライドして防御が出来るのはもちろんだが、そのまま打撃に使える。取り外して盾にしたりブーメランにしたりも出来る。試作品ではあるが防御力は確かだ。」


「本当だ、面白い〜!」


言われた通りやってみると、シールドが展開されナックルダスターのようになる。


「あたしはこれにする〜!」


「珍しい武器ですね。惜しいですが、それはあなたに譲りますよ。」


「あれ、パスナくんはそれにしたんだ。」


その試作品はミイスが手に入れ、パスナは多節棍を手にしていた。


「俺はこいつだ!やっぱりこの刀が良いな!」


サルサは最初にした湾曲刀に一目惚れしたらしく。手にして満足そうな様子を見せる。


「ぼくは…。」


「サーティちゃんには…刃物とかは危なそうね。」


「かと言って盾は重くて動かせんだろうしな…。」


残るはサーティだけだが、五歳の身体では剣やダガーなどは危ないし、盾や槍と言った物はそもそも持ち上げられないだろう。


「でも何か武器がないと、この先身を守れないわね…。」


「ふむ…刃物がなくて、こんな小さな子供でも扱える武器…そうか、あれならば…!」


危険な旅にもなるし二つの組織がサーティを狙っているならば尚の事武器を持たせた方が良いだろう。するとバーンは何か思いついたのかとある武器を手に取った。


「これを使ってみなさい。」


「これは…ぼう?」


渡されたのは両先端にシンプルな金の装飾がされた赤い棒だった。


「おっと…!?」


「何なのこれ?」


大きさ的には今のサーティからすれば少し太めの丸太ぐらいはあるため、持った瞬間に彼はフラフラしてしまう。


「昔、ゴラーフ族の戦士が引退するとかでこの武器を置いていった代物だ。」


『そのゴラーフ族って何なの。』


「バレル山脈を根城にする亜人のことだよ。」


疑問に思うギザにビートが説明する限りだと、彼の故郷であるバレル山脈にはゴラーフ族と呼ばれる異種族が住んでおり、棒のような武器はその戦士が置いていった物だ。


「これをどうつかうの?」


「念じてみなさい。君の意思で大きさや長さ、太さが変わるんだよ。」


「こう…?」


サーティは言われた通り念じてみると彼が扱いやすい太さと長さに変わるのだった。


「スゴい!おもしろいねこれ!」


「これならサーティちゃんがケガすることもないし、扱いやすいわね。」


先程のマスケット銃を握り締めたロゼが満足にサーティの頭を撫でていた。 


「では少し肩慣らしと行こうか。そうしなければ仮ライセンスは発行されんからな。」


「ではこちらへ。」


それぞれが気に入った武器を握り締め、仮ライセンスを発行して貰うためにはその武器に適性があるかどうか試す必要があった。


「なにもないばしょだけど…。」


案内されたのは荒れた芝生が目立つ庭だった。特に目立った物は何もなくここで武器を試せと言うことなのだろうか。


「これを話しますぞ。」


「虫?」


バーンは虫かごからたくさんの虫を外へと放つ。するとその虫達が芝生に止まって、お尻が光ったと思ったらモヒカン頭の盗賊の立体映像が出現する。


「こりゃ何だ!?」


「ホタルグラムだよ。おしりのひかりで、ほかのいきもののすがたをうつして、てきをおいはらうんだよ。」


幼くなってもワイルズビーストに詳しいサーティが虫の説明をする。


「あのホタルグラムで試せと言うことか。分かりやすいな。」


「やるわよ!」


早速、ホタルグラムの投影した敵の立体映像に向かって武器を試す。


「チェインタクト!」


『うん!』


「ぶっ!?ミイス、冷たいぞ!?」


「あ、ごめん。」


ミイスはギザとチェインタクトして何もない場所から水を出し、それを操って飛ばすもその先にいたサルサに当たってしまう。


「それ!」


「わっ!ジャオちゃん、射線に入らないで!?」


「えー!何だよそれ!」


ジャオは早速サイを使いこなしてホログラムの敵を倒していくも、ロゼが狙っていたホログラムまで倒したがために危うくジャオを撃ちそうになってしまう。


「どうやら我々には武器の適性もだが、連携や陣形の方も必要のようだな。」


『我もチームワークは必要だと思うぞ。』


似た者同士であるホレスとパートナードラギアスであるファートが口を揃えてチームワークを考えるべきだと述べる。


「どうすれば良いの?」


「前衛、中衛、後衛と言った陣形が良かろう。」


「前衛的ってこと?」


「そうではなく前に一列目、真ん中に二列目、後ろに三列目と言った隊列を組むことです。」


さすがは王族であるのか兵の編成に関しては、ホレスはこの中の誰よりも得意なのかもしれない。


「前衛はタンクや剣士、中衛はリ長槍兵が理想的、後衛は射撃手になるな。」


「剣や盾を持つ人が先頭、真ん中は槍などの長い武器を持つ人、最後に銃などの遠距離から攻撃出来る人ですね。」


お抱えの騎士団がいることもあって、編成をテキパキとこなすホレス。分からないところはパスナが噛み砕いて説明していく。


「それだと俺とホレスが前か?」


「それと動きの速いジャオが前だな。先鋒や偵察をして貰うからな。」


「任せろ!」


前衛にはホレス、サルサ、ジャオが配置されることとなった。


「長い武器である私とサーティくんは真ん中の中衛になりますね。」


「万が一狙われても真ん中にいれば、いざって時には守りやすいわね。」


「それでいいのかな…。」


サーティも長い武器を持っているため、中衛への配置は分かりやすいが守られる立場にいると言うことに少し不服そうにする。


「あくまでも予防策としてだからね。君も一緒に戦えるよ。にしても、僕は前衛寄りだと思ってたけど中衛で良いの?」


中衛にはパスナとサーティの他にビートも配置されていた。武器はどう見ても近接寄りなのに、中衛にいて良いのかと疑問に思う。


「そうなのだが、いざ敵が中衛の懐に入られると脆くなる危険性がある。そこを守るためにもお前にはいて欲しいのだ。」


「なるほど…。」


確かに長い武器はリーチの長さが売りだが、いざ掻い潜られて近寄られたら危険なため、ビートにはいざと言う時のために中衛を護衛する役割があるのだ。


「後衛は私とミイスちゃんね。」


「でもあたしの武器は近接系だと思うけど…。」


残る後衛は消去法でロゼとミイスになる。しかしロゼは銃だから分かるが、ミイスのは盾と拳の武器なためこれは前衛寄りではないかと考える。


「お主は水の力で遠距離から攻撃出来るし、移動速度も割と早い。ビートを掻い潜られても、その武器なら対応はしやすいはずだ。」


「そっか!」


武器はあくまでも敵に近寄られた際に身を守るための物であり、肝心の攻撃はミイスが水を操って遠距離からすれば問題ないと言うことだ。


「よし、行くぞ!」


「まずはあたしからだ!」


気を取り直してジャオが先に飛び出し、ホタルグラムの立体映像を斬り払っていく。それを追いかけるようにホタルグラムは次の立体映像を映し出す。


「ジャオ、下がるのだ!サルサ!」


「せいやぁ!!」


盾を持ったホレスがジャオを守るように立ち、その背後からサルサが湾曲刀を持って飛び出し、ジャオに変わって立体映像を斬っていく。


ホタルグラム『『『ジジジ!』』』


「こんどはイービッカルだよ!」


ホタルグラム達は今度はイービッカルの立体映像を映し出して飛び掛からせていく。


「それ!?」


「無理をなさらずに。」


「そうだよ!」


棒を伸ばして一体のイービッカルを倒すも反動で尻餅をついてしまうサーティ。他のイービッカルはパスナの多節棍とビートのハンマーによって蹴散らされる。


「それじゃ、あたしは水で!」


「……そう言えば、弾丸は撃ったらなくなるし…購入とかはどうしようかしら…。」


後方支援であるロゼとミイスも順当に敵の立体映像を倒していくも、ロゼは弾丸の消耗を考えると予算的に厳しいのではと考える。


『ねぇ、ロゼちゃん。これを使って。』


「これは何?」


するとベルナがロゼにクルミのような物を渡してきた。


『これはハードナッツって木の実でね、岩より硬いのよ。昔はこれを弾丸代わりに使ってたのよ。』


「どれどれ…えい!」


マスケット銃にハードナッツを入れて引き金を引くとホログラムを貫いて先にある岩にめり込んだ。


「確かにスゴい威力ね…。」


「はは、こりゃ弾丸が売れないね…。」


弾丸の商売をするバーンに取っては苦笑いしながら頭を掻くしかなかった。


「代金は既に王から貰っていますのでお気になさらずに。」


「皆、武器の仮ライセンスが取れて良かったわね。」


今度の代金は既に王国から支払われていたため問題はなかった。手にした武器の仮ライセンスも手に入れられて万々歳だった。


「最初に手にした武器が一番しっくり来たね。」


「次はどうするよ?何か楽しくなってきた!」


「次は夕食を食べに行くぞ。防具やキャンプ用品は明日にしよう。」


「お、お前も分かってるじゃねぇか!」


武器は手に入れたが、今日の準備はここまでにして夕食を食べに行こうとホレスが提案する。


「楽しむことも大事とは…こう言うことだろう。」


『では行くとしようか!』


ホレスがそう結論づけると、ファートもいつの間にか笑顔になっていた。元気になった一同は夕食を食べに町中を意気揚々と歩いていく…出発前の準備はこうしてのんびりと進んで行くのだった。

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