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ドラギアス  作者: オリテアント
第2章 グリムバハムート【御伽の竜王】VSサイクロプスアイズ【偉大なる隻眼】
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サイクロプスアイズ【偉大なる隻眼】

ドラゴン族の中で最も人々から恐れられるほどの戦績を残したドラゴンは、伝説や御伽話としてその名を末永く残すこととなる。


しかしながらそれは彼らと双璧を成したギガント族も同様であり、その中でも群を抜いていたのは『片目のサイクロプス』と呼ばれるギガント族の戦士だった。


彼は戦場に赴き目に付くドラゴンを片っ端から狩猟し当時の戦況を大きく覆す功績を残し、死ぬまでの間に受けた傷は生まれ落ちた際にドラゴンに付けられた右目の負傷だけだと言う。


「サイクロプスだと…誇り高いドラゴンの名を汚した野蛮人のことか!」


「サイクロプス様の冒涜は許さないぞトカゲカルト共が!」


いつの時代に置いても宗教の違いで争いは引き起こされるらしく、ドラゴン族とギガント族が激しく争ったようにカロイとマシュラもお互いに罵り合う。


「でも確かサイクロプスってギガント族は何世紀前に死んだんじゃ…。」


「ええ、そうです。ですが、彼の跡目となるギガント族の子孫…ギガルティズの一人があのタイラント様なのです!」


『腹減った〜!ご飯〜!』


ポヤッとした可愛げのある巨人の女の子だが、空腹が収まらずに山のような胸やらお尻などを建物に押し当てながら食べ物を探す様は何処か背徳的であった。


「あんな木偶の坊を崇拝する連中が何故にここにいる!それに彼は我々が貰い受けるのだぞ!」


「残念ね、彼は私達に取っても必要な存在なの。おいそれと渡す訳にはいかないわ。」


「ほざけ!スパークドラゴン!サーティを取り返すんだ!」


『ギエエエエ!』


「タイラント様!貢ぎ物でございます!」


サーティの可能性にはサイクロプスアイズも興味を示しており、スパークドラゴンに奪い返されてたまるかと崇拝しているタイラントの名を叫ぶ。


『ご馳走〜!待て〜!』


『ギャア!?』


このスパークドラゴンは鳥に近い見た目をしておりドラゴンの中でも速く飛べるのだが、大きな見た目に寄らずタイラントはドラゴンの尻尾を掴んで手繰り寄せた上で背中にかぶりつくのだった。


「さすがはタイラント様!その飽くなき食欲でドラゴン共を踊り食いしたと言う伝説は本当だったのですね!」


「おのれ!」


耐え切れずに剣を抜いたカロイは彼女を輪切りにしようとしたが、マシュラの身体のラインが覆えるような服から二本の短剣が飛び出し交差して刃を受け流した。


「僕を抱えてるのにどうやって…。」


サーティは仲間の中でも小柄で華奢であるためそんなに重くないが二本の腕でないと支えられないはずだ。


「私は生まれつき…ドラゴン族の汚れた血によってこうなのですよ!」


その秘密は身体のラインを隠す服の下にあった。なんと本来なら二本しかない腕が彼女は六本も身体から生えていたのだ。


「ドラゴン族とギガント族の血肉には生物を進化させる力があります…しかしドラゴン族の汚れた血によって私達は人生めちゃくちゃにされたのです!」


「抜かせ!貴様らギガント族の血肉が汚れているから我らも…!」


グリムバハムートとサイクロプスアイズが結成され敵対する理由の一つは、進化を促す血肉の力によって進化を果たすも異形の姿へと変えられたことが起因していた。


「撃てー!」


『あいたっ!?』


いがみ合う二人を差し置いてスパークドラゴンの落雷にも負けない轟音と共に、タイラントの腰まで届くウェーブヘアの一部が爆発して燃え上がる。


「皆のもの!無事であるか!」


「大丈夫か!?」


轟音ほどではない厳つい大声が聞こえてくると、いつの間にか城壁には重厚な鎧を装備したレスディンと、彼に率いられたホレスと衛兵達がいて大砲を構えていた。


「レスディン国王!ホレスさん!皆がそこの茂みに捕まってるんだ!助けてあげて!?」


「まずは自分の心配をせんか!」 


王国全体が眠らされた状況下ではサーティを抱いているマシュラが少なくとも友好的ではないのは目に見えた。


「降ろして!?」


「そうはいきません!?大人しく…わっ!?」


何とかしようとサーティは暴れるとバランスを崩したマシュラは後ろへと倒れてしまう。


「いたた……ひあっ!?」


「ううっ…。」


倒れた際にサーティを手放してしまったのだが、彼は彼女の股に顔を埋めてしまっていたのだ。幸いにも彼は放られた際に目を回しており何があったかは分からなかった。


『グルルル…。』


「あう…。」


動揺してる間にネイチャードラゴンがサーティの襟を咥え、子猫を咥えて運ぶ親猫のようにカロイの元へとノシノシと歩いていく。


「済まない、だいぶ遅くなったようだな。」


「ぶはっ!?こんな雁字搦めにしやがって!?」


『サーティを早く助けないと…!?』


ホレスとアイラはサルサ達を拘束している樹木を剣や鉤爪で切り裂いて自由にする。


『グル…グルルル……。』


「どうして急に眠るんだ…。」


『むっ…ふぁ〜…。』


助けに行こうとしたらノシノシ歩いていたネイチャードラゴンはウトウトし始め、タイラントも急に眠気が襲いスパークドラゴンを口から離してあくびと伸びをする。


「砲撃用意!撃て!!」


『おお〜…?』


「タイラント様!?」


好機だと判断したレスディン達は一斉に大砲による集中砲火を、ドラゴンと同じくウトウトしていたタイラントに姿が爆炎で見えなくなるほどに浴びせる。


「急にどうしたんだあいつら…。」


『あふぅ…何か眠い…。』


〈皆さん!今、ドラゴン族とギガント族の睡眠を誘う周波数を流しています!〉


国土全体に放送するスピーカーからパスナの朗報が届けられ希望がもたらされる。


「若い者に遅れを取るとは王として何とも情けない話だ…ハルパニア王国兵団よ!あの不届き者達を捕らえよ!」


強く拳を握り締めて兵団に指揮を取るレスディンに兵士達は一斉に拳を突き上げて賛同する。


「これは公共通信局からの放送か。それならば!」


忌々しいと言わんばかりにマシュラはホイッスルのような物を吹く。しかし通常のホイッスルとは異なり甲高い音はおろか何の音すら聞こえなかった。


『ギシャアアアアア!』


音はしなかったがその影響か地面からゾウと同じサイズの赤いアリが飛び出してくる。


「今さらアリなんか出してどう言うつもりだ?」


「構うな!早く倒せ!」


『ギギギ…ギシャア!』


兵士達は倒そうと武器を構え、アリは体を反ってお尻を目の前に突き出し中央の穴から米粒のような物を六個出す。


『『『ギシャアアアアア!』』』


「中から小さいアリが出てきた!?」


米粒は地面に当たった瞬間に割れて、数体の大型犬サイズの白い兵隊アリが出てきたのだ。


「マズい…こいつはアリカポネの兵隊アリ、ギャングトルーパーだ!?」


単なる大きなアリではなく、アリカポネと呼ばれるワイルズビーストだった。このアリは巣を作ることはないが、代わりに女王アリの身体が兵隊アリの住処となっており必要に応じて卵から出てくるのだ。


「タイラント様!公共通信局にあなたの食事を邪魔する者がいます!」


『まだお腹空いてるんだぞ〜!』


眠らされそうになっていたタイラントは公共通信局のタワーを睨みつける。


『ドレッドファング!』


タワーに向かって口を開けて勢いよく閉じるとサメの歯のような衝撃波が飛んでいきタワーを丸かじりにし断面に大きな歯形を残すのだった。


「パスナくん!?」


「そんな…あいつが…!?」


丸かじりにされたタワーは断面から崩れるように倒壊し、そこにいたパスナの運命を決定づけるかのようだった。


『何これ〜、あんまり美味しくない〜。』


「さすがはタイラント様のスキル『暴食』!あらゆる物を捕食し、噛み砕き、栄養にしてしまう!」


スキル。この世界にはある程度の技術を身に着けたり役職に就くと、特定のモーションからなる技や身体機能を上昇させることをスキルと呼ぶ。


ドラゴン族が自然の力をブレスなどに使えるように、ギガント族は技や技術をスキルとして使うことによって覇権を巡っていた。


今日に置けるドラゴン族の自然の力はエレメントとして魔法に使用され、そしてギガント族の技術やスキルは人間を始めとする多くの人々や生物にも適応され幅広く使われることとなった。


「その暴食の限りを尽くして邪教徒ごと貪り食らってください!」


『うおおおっ!もっと〜!寄越せ〜!』


『ギャアアア!?』


口直しと言わんばかりにネイチャードラゴンの首筋にタイラントが噛み付いて万力のように抑え込み、辺りに食い散らかされた花や枝などをばら撒くように抵抗するネイチャードラゴン。


「あう!?」


『狙いが逸れている間に早く!』


争っている間に放り出されたサーティにアイラが駆け寄り、何とか脱しようとするがドラゴンの尻尾とギガントの足が地面を揺らすほどに叩きつけるため中々抜けられないでいた。


「そうだ、チェインタクト!アイラ、キーロックの力で二人の動きを止めて!」


『そうか!チェインタクト、キーロック!私に力を!』


言われてハッとなったアイラは希望に満ちた様子でキーロックを手甲と鍵型の剣として腕に纏わせる。


『ムーブロック【動作封印】!』


尻尾と足が地面に触れた途端に鍵型の剣を刺して右に捻るとガチャンと言う音と共に、時を止めたかのように微動だにしなくなる。


『グガッ!?』


『あれ〜…?』


「やった!成功だね!」


尻尾と足が動かなくなったことに一時的に戦いが止まり、何事かと下を見下ろすタイラントとネイチャードラゴン。


『さあ、今の内に…。』


「させん!」


何とか脱出できるかと思ったが、通せんぼするようにカロイが目の前に立ち塞がり剣の刃を向けていた。


「大人しく…ぐがっ!?」


『大人しく付いてこい』と言おうとしたが、彼の声量を上回る電流の音によってかき消される。


「付いてくるのは…私達の後だけで良いですよ…。」


「パスナさん!」


電流で倒れたカロイの背後にはスタンガンを持ったパスナが足を引きずった状態で立っていたのだ。


『!あなたその身体は…。』


「明かすのは…もう少し先にしようと思いましたが…。」


「腕が…!?」


アイラとサーティはパスナの身体を見て言葉を失う。だがそれもそのはず、パスナはそれ以上に大切な物を失っていたのだ。


「腕が…機械みたいに…!?」


パスナは二の腕から先が失くなっていた。それも衝撃的ではあったが、その断面は配線や回路などの機械のパーツで構成されていたのだ。


「私の身体の半分はゴレンドロイドなんですよ…。」


ゴレンドロイド。かつては土や岩などで人形を作り出しかつてはゴーレムとして呼ばれ使役していた。


技術発展と共に機械や人工物などが使われるようになり、やがて彼らに知性や心が芽生え自ら繁殖する手立てを見つけ出し一つの種族として確立したのだ。


「幼少期に事故で肉体が半壊したのですが、偶然そこがゴレンドロイドの国土だったため私はそこで身体を改造されることとなりました。」


「それで腕が…。」


「ゴレンドロイドには寝ていても周囲の異常を検知すれば自己防衛が働きます。王宮の周波数もそれで防いでいました。」


「だからあの時は私達だけが起きてたのね。」


駆けつけたサルサ達に肩を借りて運ばれるパスナは自分のことと、王宮でロゼ達に起きていた出来事を全員に話していた。


「最初は焦りましたが換えが効く方で良かったですよ。」


「そう言う問題じゃないよ!?だって…こんなぐすっ…ことに…なった…僕の…ぐすっ…せいで…パスナさん…が…死んだ…ぐすっ…って思うと…。」


余裕を持った様子で話すパスナだが下手したら本当に死んでいたらと思うと、サーティは自責に駆られて大粒の涙を流しながら泣きじゃくる。


「済まない…君が責任を感じているのを忘れていた。私なら問題ない…。」


泣いているサーティを慰めようとパスナは無事である左腕で優しく撫でながら抱き寄せる。身体の一部は機械でも心までは機械のようではないと言うことだ。


『『『ギシャアアアアア!』』』


「しかしこれは厄介なことになりましたね。ドラゴンとギガントに加え、アリカポネにギャングトルーパーですか。」


ケガ人であることは変わらないため、パスナを攻撃が届かない安全な所まで運んで座らせた後で状況を見据えるも場は混沌としていた。


「乱戦状態でこのままだと国がめちゃくちゃになるぞ。ホレス、何とかならないのか?」


「父上がすでに他の国に救援要請しているが、到着するのは朝方になるそうだ。」


「その前に国が残っているかどうかも怪しいわ…。」


ホレスも現実的な問題に頭を搔いて苦悩しており、それを聞いた一同もどうしたものかと頭を抱えていた。


「…僕が国の外に出れば、きっと二人は僕を追って来るんじゃ…。」


「ダメだ!それじゃお前が犠牲になるだけだ!」


「大丈夫!鬼ごっこには自信があるから!」


「でも現実的じゃないわ…いずれ捕まってどうなるやら…。」


サーティはカロイに身売りしようとした時と同じく、再び自分を犠牲にするような考え方をするが全員が真っ向から否定する。


『グオオオオオ!』


『しまった!スパークドラゴンだ!?』


どうしようかと考えていると、タイラントに捕食されかけたスパークドラゴンが瓦礫を押し退け這う這う体でにじり寄って来たのだ。


『ハイサ!』


『ガハッ!?』


しかしスパークドラゴンの脳天にクルクルと車輪のように回転しながら踵落としを決めた者がいた。


『ふー。』


「誰なの…?」


踵落としで気を失ったスパークドラゴンの頭の上で武術の達人のように呼吸を整える少年。


『私はホウル。ヤマトの大地から来たドラギアスです。どうぞよろしくお願いします。』


「これはどうも…。」


その少年はアホ毛を持ったドラギアスであり、中国武術の道着を着用しており丁寧に自己紹介する。そのため緊迫した状況なのに思わずお辞儀してしまう。


「あ…あ…あ…!」


「ジャオちゃん?」


ホウルを見たジャオは口を開けてジリジリと後退りしており、まるで目の前の光景が信じられないと言う様子だった。


『ジャオ…!?』


「と…頭領!?」


「「「えええっ!?」」」


信じられなかったのはジャオだけではなかった。なんとこのドラギアスの少年こそが、ジャオの探していた頭領だと言う。


「あれー?でもハンゾウルフに育てられたんじゃ…。」


聞いた話ではジャオは生け贄として山に捨てられた際にハンゾウルフに育てられたのだ。だから彼女の探す頭領はハンゾウルフかと思っていたら、その正体がドラギアスだったのだから疑問に思うのも当然だ。


『そこは私から。そのハンゾウルフは恐らく私が治めていた群れでしょう。生け贄として差し出されたその子を連れてきたのですが、不憫に思い私は彼女を群れの仲間として育てました。』


「そう言えば言わなかったか?」


しかしながらそのハンゾウルフ達はホウルがその時のボスを降して統治していた群れであり、ジャオは群れに連れられた際にホウルがそのまま面倒を見ることにしたと言う。


「頭領!会えて嬉しいぜ!?」


『ジャオも変わりなくて良かったですよ。私は自由になった後、胸騒ぎがしてここへと戻ったのですがその甲斐はあったようですね。』


感動の再会にサーティの次に幼いジャオは年相応にホウルに抱き着いて泣きじゃくる。ホウルも大粒の涙を目に溜めながら抱き返すのだった。


『…!ギエエエエ!』


『おっと!感動の再会を喜ぶのはまだ早いようですね。』


気絶していたスパークドラゴンが目を覚まして頭にいるホウルとジャオを振り払おうと暴れ始めた。


「頭領…あたし、毛の色が落ちちまってもう階級はないけど…手を貸してくれるか!?」


「ジャオちゃん…。」


再会を中断させられてジャオは自分の髪の色が元の銀髪に戻ってしまったことを気にしながらも勇気を振り絞って力添えを頼む。


『ジャオ…前から言おうとしてましたが、階級も髪の色も関係ありません。もうあなたは立派な私の大切な仲間なのです…。』


「ほらね、何も問題なかったでしょ?」


ロゼの言った通り頭領であるホウルはジャオのことを髪の色も階級も関係なく大切な存在だと言ってくれたのだ。


『ですがこの状況は私でも手に余ります…だから私からもお願いします。ジャオ、私と契約して一緒に戦いましょう。』


「…!おう!…へへっ…!」


大切に思ってくれたどころか、その実力を認めてホウル自身から契約して戦おうと誘ってくれたことに、ジャオはロゼに心を開いた時以上に泣き笑いするのだった。


「チェインタクト!頭領、あたしからもお願いだ!一緒に戦ってくれ!」


『ふふっ…喜んで!』


ジャオの手首から赤い鎖が出現し、ホウルの首から出現した赤い鎖と結びついて一つとなった。そしてホウルは武術の構え、ジャオは四つん這いになって戦闘態勢を取るのだった。

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