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ドラギアス  作者: オリテアント
第2章 グリムバハムート【御伽の竜王】VSサイクロプスアイズ【偉大なる隻眼】
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前兆の咆哮

「すぅ…。」


「可愛いわね…食べちゃいたいくらいだわ。」


アーティガルのフエフクによって眠らされたサーティはラプランによってお姫様抱っこされるように抱えられていた。


「姉御、その子供は…。」


「引き渡すのは分かっている。それよりも他の奴らを助けてこい。」


ラプランの悪い癖を知っているような様子の子分に、いちいち口を挟むなと言う様子で命令する。


「しかしまあ、早い所渡して報酬をいただくとするかね。」


とは言え、聞き分けがない訳でもなくサーティを引き渡すために連れて行こうとするが肩を叩かれる。


「まだ何かあるのかい…。」


「その子は…返して貰います!」


子分達がまだ何か言いたいのかと振り返ると、ロゼ達と共に眠らせたはずのパスナが目を覚ましていたのだ。


「がっ!?貴様…どうやって…!?」


「あなた達が使役したフエフクの放った周波数と全く逆の周波数を放って催眠術を相殺したのです。」


驚く間もなくラプランはパスナの持っていたスタンガンでダウン寸前にまで追い込まれた。


「サーティくん、皆さんも!起きてください!」


「はっ!?」


「どうなった!?」


周波数を増幅して催眠術を打ち消すと、眠らされたロゼ達も最初はボンヤリと目を覚まし、今まで何してたかを思い出してハッとなる。


「ふぁ〜…あれ、何ここ?」


「私なんで外に…?」


「パパ、ママ…?」


それに伴って子供達も目を覚ますも、いつの間にか外に出ていたことに気が付くと次第に動揺が広がっていく。


「私が催眠術を全て解除しました!子供達を早く避難させてください!」


「皆、私に付いて来て!」


「慌てなくて良いからねー。」


動揺する子供達を助けるべく、ロゼとビートは呼び掛けて避難誘導を開始する。


「ああ…!?お前達!?子供を逃がすんじゃないよ!?」


『そうはさせるかよ!』


アルフは炎のブレスで子分達の行く手を阻んで、子供達の避難誘導を援護する。


「よくも…よくもあたしの夢を台無しにしてくれたわね!?」


ことごとく邪魔されたことにラプランは怒りを覚えて怒鳴り散らす。


「お前みたいな誘拐犯がすることは人身売買か奴隷売買だって相場が決まってんだよ!」


「人身売買に奴隷売買だって?あたしはそんなの興味ないわよ。」


「でなければ身代金か?」


誘拐をする大抵の目的は人間そのものを売って利益を得るか、自分の召使いにするか、身内を脅す人質として利用するかだ。


「身代金は少しは欲しいけど一番の目的は別にあるのよ。」


「じゃあ、何だよ?」


ところが目的は身代金でもないと言い切り、嘘だとしても何が望みなのかと訊ねる。


「あたしの目的は…純真無垢な子供達を愛でるユートピアを作ることよぉ〜!」


「………は?」


「此奴は何を言っているのだ…。」


聞き違いでなければ目的は小さな子供を愛でるラプランのための楽園を作ることだと言う。身代金でも売買でもない意外な目的にサルサとホレスは唖然となる。


「だってこんな可愛い子供を奴隷にするなんてかわいそうだし売るなんて勿体ないじゃない?私はあの子達を侍らせ愛でるのが良いのよぉ…。」


妄想だけで顔を赤くし恍惚とした顔付きで成熟した身体をクネクネとさせる様は何処か刺激的であった。しかしながら欲望に忠実なのが台詞からも見て取れたため嘘と言う訳でもなさそうだ。


「まさか本気で子供を愛でるのが目的で誘拐しようとしたのか?」


「そうよ!悪い!?それをあんたらが邪魔したのよ!せっかく選り取りの可愛い子供がいっぱいだったのに!?」


「姉御…。」


しかしながらラプランがロリコン・ショタコンの塊で欲望を暴走させた結果、こんな騒動を起こしたのだと言う。子分達も彼女の動機は知っていたらしく改めて耳にしたことで呆れていた。


「何かロゼみたいな奴だな…あいつは将来あんな女になるのか?」


「失礼ね!さすがにあんなんじゃないでしょ!?」


「さすがに否定は出来ないよ。」


「よく分かんないけど、あいつはホレスと言い合ってた時のロゼと同じだぞ。」


対するサルサ達はラプランと性格がよく似た人物を知っており、思わずロゼが成長した姿なのではと思ってしまう程だった。


「その計画をよくも邪魔してくれたわね!許さないわよ!あんたら、ちょっと痛い目に合わせなさい!」


「「「おう!」」」


いずれにしても計画が狂ったことに怒るラプランはカトラスを抜き、他の子分達も各々の武器を手に取るのだった。


「早く行け!」


「サーティちゃんをお願いね!」


殿を守るようにビートとロゼは子供達の後を追う。


「そこのボウヤはあたしが相手するよ。」


「ま…負けないぞ!」


ラプランはターゲットであるサーティに目を付ける。対するサーティも自分が狙いである以上は黙ってヤラれる訳にはいかなかった。


「あら、小さくて可愛いだけじゃなく勇敢なのね。そう言う子が怖くて泣いてしまう所はそそられちゃうわ〜!」


「うっ…。」


再び恍惚とした表情で成熟した身体をクネクネさせるため、サーティは得体が知れない恐怖に後退りしてしまう。


『サーティ、ここは私がやる。あなたが捕まったら手出しが出来なくなる。』


「あなたが相手でも良いわよ。これでも剣術はBランクよ!」


しかしながら戦う力を余り持たないサーティの代わりにアイラが前に出る。ラプランも問題ないと戦い始める。


「あなたドラギアスだけどあまり強くないわね。ブレスも吹かないし、空も飛ばないなんてね!」


『ぐっ…。』


あの性格だからそこまでの実力はないと思ってしまったが、そんなことはなかったらしくドラギアスであるアイラも防戦一方になってしまっていた。


「あらあらぁ、そんな悔しそうで泣きそうな顔をされるとあたし堪んないわぁん〜!」


『こんのぉ!』


図星を刺された上に何処か屈辱的なことを言われて怒ったアイラは体勢を低くして身を翻す。それによってアイラの尻尾がラプランを足払いするのだった。


「うげっ!?」


『確かにブレスは吹けないし、空も飛べない…でもこの鉤爪でズタズタに引き裂くことは出来るわ…!』


倒れたラプランにアイラは馬乗りになり、ドラゴンの爪を見せびらかし顔に突きつける。


「姉御!」


「くそ、こいつらもただのガキかと思ったら意外に強いぞ!?」


「もう降参しろ!」


ラプランだけは別格ではあったが他の子分達はそこまででもなく、ボスが追い詰められたことで動揺し次第に彼らも旗色が悪くなる。


『グルルル…!』


すると暗闇の森の中から爛々と光る瞳と唸り声が聞こえてきて、ツルツルとした黒い皮膚を持つドーベルマンのような生き物が出現する。


「え?何あれ?」


「あれってイービッカル…?」


イービッカルとは群れを成して狩りを行い、新陳代謝が高いため貪欲な食欲で相手の骨すらも食い尽くすワイルズビーストとされている。言うなればハイエナのような生き物だと考えてくれれば良い。


『グルアアァ!!』


『うっ!?』


「アイラ!?」


そのイービッカルはアイラに飛びかかったことで、今度は彼女が押し倒されてしまう。


「こいつらが呼んだのか!?」


「いいえ、どうやら違うようですね。」


最初は盗賊達の仕業かと思ったが、複数のイービッカル達が子分達にも襲いかかっていた。


『グルアアアアア!』


「こいつ!」


もちろんサルサ達にもイービッカルは襲いかかるが、果敢にもジャオは飛びついて噛み付き返すのだった。


『ガウウ!グルルル!』


『うっ…くっ…!?』


押し倒したイービッカルはアイラに噛みつこうとし、彼女も抵抗するが両腕を押さえられてしまい跳ね除けられなかった。


「止めてー!」


『ギャン!?』


助けようとサーティはその辺にあった枝を掴んでイービッカルの頭を叩く。打ち所が悪かったのかフラついてアイラから離れるのだった。


『ありがとう!やあっ!!』


自由になったことでフラついていたイービッカルの尻をアメフトのように蹴り上げて木の幹にぶつけるのだった。


「サーティくん、アイラちゃん、こっちにおいで!」


「バラバラになったら一気に襲ってくるぞ!」


相手が群れで来る以上はバラバラになると各個撃破されてしまう。それを防ぐには一度集まって防御に徹するのだった。


『グルルル…!』


「倒れますよー。」


イービッカル達は固まったサーティ達に狙いを定めて体勢を低くしていたが、パスナの掛け声と共にミシミシと言う嫌な音がしてくる。


「ひゃあ!?木が!?」


「おま…危ないだろうが!?」


音の正体はパスナが木を切り倒した音で、イービッカル達を何匹かを下敷きにしたのだ。あまりにも大胆なことをするために少しは相談しろとサルサは怒るのだった。


『ガルルル!』


『うわわ、まだ来るよ!?』


下敷きを免れたイービッカル達は正しく仲間の屍を越えて再びサルサ達を狙おうとしていた。


「サルサくん、アルフくん!その木は乾燥しててよく燃えますよ?」


「なるほどな…行くぜアルフ!チェインタクト!」


『おう!フレイムガン!』


「ヒートパンチャー!」


パスナの台詞の意図を理解したサルサとアルフは互いに炎の拳と炎のブレスを木に浴びせる。


「チェインタクト、ギザ!ヒグルマの力を使って!」


『うん、チェインタクト。ヒグルマ、あの木を燃やして!』


『発火も消火も任せろや!サテライトフレイム!』


ダメ出しでヒグルマの炎も倒木に当てると一気に燃え上がるのだった。


『ギャイン!?』


これには倒木の上にいたイービッカルはもちろん、倒木の周辺にいたイービッカル達も慌てて逃げ出すのだった。


『う〜ん、うんめぇ〜!』


「消火、消火っと。」


イービッカル達が逃げた後でヒグルマは炎を食べて消火するのだった。


「さっき炎が上がったけど何だったの?」


「それがイービッカルが襲いかかって来てな、火を使って追い払ったんだ。まあ、それであいつらは逃げちまったけどよぉ…。」


子供達の避難をしていたロゼとビートは合流する際に炎が上がっているのを目撃していたが、それはイービッカルを追い払うためであり、そのどさくさ紛れにラプラン達には逃げられたと教えられた。


「イービッカルだって?不吉だねまた…。」


「どうして?イービッカルは確かに凶暴で怖そうだけど不吉って言うのは何で?」


ビートはイービッカルが現れたことを憂いており、ワイルズビーストに詳しいサーティはどうしてなのかと訊ねた。


「僕が住んでたバレル山脈ではイービッカルは不吉の前触れとされているんだ。」


「何でなの?」


「何かしらの自然災害によって人が死んで、その肉を食らうためについて回るって言われてるんだ。だからイービッカルが現れるのは何か不吉な出来事の前兆とされているんだって。」


土地や地域によっては特定の物は不吉や不浄とされたり、その逆に神聖な存在として扱われることがある。ビートの故郷ではイービッカルは不吉の前兆とされているようだ。


「そんなの迷信だろう。」


「それにしても何で僕を狙う必要があったんだろう?僕はその…何かしら特別って訳でもなさそうだし…。」


『ううん、あなたが思っている以上にあなたは特別なのかも。私には分かるわ。』


話は変わってサーティは自身が狙われた理由が分からなかったが、少なくとも狙われるのならきっと何からしの特別な理由があるはずだ。その中でも契約したアイラは彼の可能性を信じていた。


「ん…何か焦げ臭いぞ。」


「そりゃさっきまで燃やしてたからな。まだ焦げ臭いだろ。」


「今あたしは風上に立ってるから木の焦げた臭いじゃない。これは…国から臭いが漂っているぞ!」


「国から?」


倒木を燃やした匂いとは別の匂いを嗅ぎ取ったジャオ。その時耳をつんざくような雷鳴が国から聞こえてくる。


「ひゃあ!?…雷?」


「おかしいですね、今夜は快晴のはずですよ。」


火のない所に煙が立たないように、雲のない所に落雷は発生しない。空を見ても雲一つない星空が広がっており、雷はおろか雨の一滴すら落ちない天候だった。


『グオオオオオ!』


「何だこの雄叫びは!?」


「国から聞こえる…まさかあの盗賊達は囮か!?」


「囮って?」


雷鳴とは異なる獣のような雄叫びが国の方から聞こえ、ホレスは自身が置かれた状況に気が付き青ざめるのだった。


「今起きているのは我々だけだ!あの盗賊ははもしも他に起きている人間がいれば、そいつらを誘い出すのが目的だったんだ!?」


「じゃあ今頃、国では本当の目的が行なわれているってことなの!?」


確かにラプラン達は何者かにサーティを攫うように命じられていた。しかしながらそれは依頼した者がラプラン達を起きている人間を引き付ける囮として利用したとするのなら…。


「今ハルパニア王国の国民はフエフクの力によって眠らされているため無防備となっている!サーティの言う通り、本当の目的はハルパニア王国を攻め落とすことだったのだ!」


相手の目的は不明だが、国を攻め落とすのが目的だとしたらこれ以上ない絶好のチャンスのはずだ。せめてハズレて欲しいと急ぎ足で国へと戻るのだった。


「まさか国崩しが目的だったなんてな。」


「そもそもおかしな話だ、盗賊とは言えアーティガルを使役出来るなんて…。」


今思えば一端の盗賊が国家機密であるアーティガルを使っていたことが謎であった。


「でも僕が逃がしたとは言え、まだドラギアスはいるはずだよ。何で攻め落そうなんて…。」


「確かにそうだが弱体化しているのは間違っていない。だが、そこを上手くやれる算段があるからこそこんなことを起こしたのかもしれない。」


ハルパニア王国はサーティが逃がしたとは言え、実力のあるトライブレイト達のドラギアスは逃げずに留まっていた。その理由としては王国に管理され契約者がいない状態が起因していた。


契約して繋がっているのなら契約者の意思に反する解放や、そもそも遠征などに出ていて解放の効果の範囲外にいる者達には何の影響もなかったのだ。


しかしながら解き放たれたドラギアスの数が多く、戦力的に大幅にダウンしたのは間違いなくそこを付け狙われたのだとホレスを結論づける。


「はう…やっぱり僕のせいで…。」


「いや、今回はたまたまそうなっただけだ。何よりもこうなるとはお主でも分からなかっただろうに…。」


今年は例年よりも預かり管理されている個体が多かったため、運悪く解放の騒動が重なって多くのドラギアスが解き放たれたのだ。


「しかし相手に取ってはタイミングが良過ぎではないでしょうか…確かに絶好のチャンスですが、昨日今日でこんなに早く国崩しを仕掛けてくるなんて…。」


「よほどの幸運に恵まれているか、或いは…。」 


「まさか国内にスパイがいるのか?」


国が弱体化しているのは確かなのだが、それにしたって攻めてくるタイミングが良過ぎる。しかもアーティガルをラプランに渡していることから、国内に敵のスパイがいる可能性があった。


「一刻も早く父上に知らせねば!国の一大事だ!」


「その前に全員を起こさなければいけません。私は公共通信局に行って催眠術を相殺します。」


「僕達はそのスパイを探すの?」


「いや、あの獣の鳴き声が気になる!まずはそいつから…。」


国の一大事に一致団結して挑もうと国の城門をくぐり抜けた瞬間に歩みが止まり一同は凍りつく。何故ならば咆哮を挙げた獣が嫌というほどに目に付いたからだ。 


「え…。」


「嘘だろ…こんなのって…!?」


「でもあれは間違いなく…!?」


その獣はコウモリのような翼に尖った堅牢な鱗に鞭のような靭やかな強靭な尻尾、鋭い鉤爪を生やした手足に鋭利な牙を携えた大きな口、何よりも民家を軽く踏み潰せるほどの巨体を誇ったそれは…。


『グオオオオオ!!』


「「「ド…ドラゴン!?」」」


かつてこの世界をギガント族と争い、支配したとされ、既に種としては絶滅したとされる最強の種族…『ドラゴン族』だった!


国の外から聞こえたであろう恐ろしげな咆哮を再び挙げる様は、かつての最強種族の帰還を彷彿とさせていた。


「思ったよりも早いな…。」


「貴様は何者だ!」


「危ないわよそこにいたら!?」


その時フードを着用した白髪に褐色肌の男がドラゴンの近くに姿を現したのだ。何者かは知らないが近くにいたらあのドラゴンのオヤツにされてしまうのは見て取れた。


『グルルル…。』


「そうかそうか…解放されて気分が良いんだな?」


「何?」


ところが食べるどころかそのドラゴンは男にすり寄って来たのだ。


「ならば解放ついでだ…縛めた連中を思う存分に蹂躙するのだ!」


『グオオオオオン!』


その言葉を待ってたと言わんばかりにドラゴンは吠え翼を動かして空へと舞い上がる。そのドラゴンは空中で力を込め、捻れた頭の角から火花を起こすと口から雷光を放ったのだ。


「わひゃあ!?スパークドラゴンだよ!?」


「吹けるのは火や水だけじゃないの!?」


「ドラゴンは自然の力をブレスとして吹けるんだよ!?」


サーティから説明されるもあまり嬉しくないニュースだった。先程の雷鳴の正体はこのドラゴンのブレスによる物だったのだ。


「けど、スゴい!何でドラゴンが…!?」


「興奮してる場合か!しかし絶滅したはずのドラゴンをどうやって…。」


最初は驚くもサーティは初めて恐竜やサンタクロースを見た子供のように興奮と喜びが入り交じった雰囲気を見せるが、問題は絶滅したはずのドラゴンが何故再びこの世に現れたかだ。


「考えるまでもなくそこのお主!どう言うことか説明せい!」


現代の技術や文明を持ってしてもドラゴンを蘇らせることは不可能とされていた。そんな世紀の大発見とも言えるようなことをどうやったのか気になる所ではあるためその男を問い詰める。


「簡単なことだ…我々はドラギアスを解放してるだけに過ぎないのだ。」


「解放…?でもドラギアスは今は自由になってるんじゃ…。」


よく分からないが彼はドラギアスの解放を求めているのだが、既に多くのドラギアス達は自身の手によって自由になっているのではとサーティは聞き返す。


「自由ではあることは確かだ…しかしながら忌々しい血からは解放されていない。だからこそ我々は解放するのだ。」


しかしながらそれでは本当の解放ではないと言い、奥からジャラジャラと鎖を引きずる音が聞こえてくる。


『ぐううう…!?』


『ぎぎぎぎっ…!?』


「ドラギアス…!?でも苦しそう…!?」


奥から契約の鎖で抑圧するかのように雁字搦めにされた二人のドラギアスが出てきた。その苦しさから藻掻いており、様子がおかしいのは一目瞭然だった。


「これが悪しき血によって抑圧されたドラゴン族の成れの果てだ。我らはこの時を持って、この二人を解放する!」


そう言うと男は自身の両手首から鎖を飛ばして二人を雁字搦めにしている鎖と繋がる。


「今こそ解放せよ!アンチェインタクト!悪しき血を我が身を持って清める物とする!」


鎖が血管のようにドクドクと脈を打つと、雁字搦めにされていたドラギアスの姿が獣のような体付きへと変化していく。


『ぐううう…グオオオオオ!』


一人はロゼと同じ17歳くらいのドラギアスの少女であり、花のような可憐な見た目だったが身体から茂みや樹木を生やした猛々しいドラゴンに変わる。


『ぎぎぎぎ…ギエエエエ!』


もう一人は落ち着きのある青年であったが、岩のような鱗を持っていて城壁が生きて動いているかのようなドラゴンだった。


「ドラギアスが…ドラゴンになった…!?じゃああのサンダードラゴンも元々は…!?」


「我らはグリムバハムート【御伽の竜王】のカロイ!全てのドラギアスをドラゴンへと解放する者だ!」


突如として現れたドラゴンは元々はドラギアス、そしてそれを行ったのはドラゴンの解放を目的とするグリムバハムート【御伽の竜王】の仕業だった!

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