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 双璧蹂躙 



  ガイン「座って一緒に食えば良いのに」

ソフィーナ「えっ、一般家庭は女性が給仕をするって聞いたんだけど」

  ガイン「何処の国の話だよ、料理は作って貰うけど食事は一緒に取るぞ」

ソフィーナ「そうなの?」

  ガイン「一体誰がそんな事を?」

ソフィーナ「お母様だけど」

  ガイン「そんな事だと思った、このテーブルだけ別なのもあの人が?」

ソフィーナ「ええ」

  ガイン「全く・・・・・・・」

ソフィーナ「迷惑・・・だった?」

  ガイン「い、いや、全然、全く」


年下の可愛い女の子に、やや困惑気味にそう問われて拒絶できる男が居るだろうか

いや、居る筈が無い!


ソフィーナ「きちんと接待をして、気に入られるようにって、お母様が・・・」

  ガイン「随分素直に従うんだな、嫌なら拒否すれば?」

ソフィーナ「私が?お母様に?」

  ガイン「そうそう」

ソフィーナ「冗談じゃないわ!お母様を怒らせでもしたら・・・・・・」

  ガイン「嘘だろ、辺境伯様にも物怖じしてなかったのに」

ソフィーナ「貴方は、お母様の恐ろしさを知らないから」

  ガイン「そんなにか?」

ソフィーナ「そんなになの!今、思い出すだけでも・・・・・うううう」


いくらお転婆なソフィーナでも、独身時代にじゃじゃ馬で貴族界に名を馳せた母親

が相手では、全く歯が立たなかった。

何度か反抗したが、その都度地獄の折檻が待っている、それもトラウマ級の奴だ。


  ガイン「でも、何だか似合わねえよ」

ソフィーナ「私もそう思うけど・・・・」

  ガイン「要は俺が接待を気に入れば良いんだろ?」

ソフィーナ「ええ、まあ」

  ガイン「よし、じゃあ明日から討伐に付いて来なよ」

ソフィーナ「えっ、良いの?」

  ガイン「俺が勧めるんなら大丈夫だろ、それにゴブリン程度なら問題無いし」

ソフィーナ「やったー!ありがとう!」

  ガイン「お、おう」


ガインの予想通り、グレージャー夫妻からは、あっさり許可が下りた。

下りたのだが、何故かシリウスまでが着いてきた。


 リット「何故に?」

シリウス「娘を思う母心だ」

 アイナ「本音は?」

シリウス「私も討伐を見学したい!」

 アイナ「だと思ったわ」

 リット「領主婦人って、こんなに自由で良いのか?」

シリウス「おほほほほ、誰のことかしら?」


例え領主婦人になろうと、三児の母になろうと持って生まれた性格は早々変わら無

いと言う事だろう。

領主館で大人しくしている事に我慢出来なかったのだ。


  ガイン「ソフィーナに言ってた事は何だったんだ?」

 シリウス「プイッ」

  ガイン「あっ!そっぽを向きやがった!」

  リット「・・・・・・・子供か?」

 シリウス「さあさあ、そんな事より討伐だ、討伐」

  ガイン「聞いちゃいねえ」

ソフィーナ「お母様・・・・・・・・・・・・・・・・・」


若干、領主婦人としての格が下がった気がするが、誰もその事を指摘しない。

無駄な努力だと知っているからだ。


リット「とにかく始めよう、討ち洩らしにだけは注意して」

ガイン「了解だ」

アイナ「妙に張り切ってない?やっぱり嫁の前だから?」

ガイン「うるさいよ」


今日の鉱山住み着いているゴブリンの予想数は四百匹前後の予想だが、昨日の例を

鑑みれば、六百匹近い数が予想出される。

だが、広い一本坑道で枝道が殆んど無いので見逃す事も奇襲を受ける事も無い。

リット達にとっては昨日よりも、余程討伐が楽だった。

逆に言えば、後ろで魔石の回収を担当する領兵にとっては、更なる地獄の始まりに

他ならない。


兵長「うおおおおおおおお、急げえええええええええ」

領兵「ぎゃああああああああああ」

領兵「ひいいいいいいいいいいい」

領兵「し、死ぬううううううううううう」


リット達の後ろに現れた大量の首なしゴブリンの山が、領兵達を終わりの見えない

無限疑獄へと誘う。


シリウス「・・・・・・・・・・・・哀れだ」


まだ始まってから一時間がやっと過ぎた頃なのだが魔石回収班は既に全力疾走状態

に追い込まれていた。


シリウス「しかし・・・・凄まじいと言うか、異常というか・・・・・」


屠られるゴブリンの数が凄まじいのは勿論だが、断末魔の悲鳴とは対照的なリット

達の穏やかな会話が異常の一言なのだ。

どう考えても同じ場所で聞こえて来る物では無い。


    <ゲギャアアアアッ>

 リット「もう少し押し込まないと、足元が死体だらけだ」

    <グギィィィィィィィッ>

 アイナ「賛成!足元が血だらけでブーツが汚れちゃう」

    <ゴガガガガッ>

  エマ「ねえお兄ちゃん、今日のお昼ご飯はどうするの?」

    <グバアッ>

 リット「ライナーが全員の携帯食を持ってるから、暇をみて貰え」

    <ギャビッ>

ライナー「お腹がすいたのか?エマ」

    <ギイイ・・・ゲハッ>

  エマ「か、確認しただけ!まだ全然大丈夫だから!」

    <ギリャアアアアアア>

 リット「おうおう、ライナーの前だから、無理しちゃって」

    <ギョバッ>

 アイナ「乙女心よね~」

    <ギヒイィィィィィィ>

  エマ「お兄ちゃんの馬鹿!!」

    <ギョガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ>


一方、もう片方の二人と言えば・・・・・・。


  ガイン「右側は首が転がってるから、なるべく左を歩きなよ」

     <ギャオオオオオッ>

ソフィーナ「あ、ありがとう・・・・・」

     <グゴオッ>

  ガイン「どうだ?二、三十匹切ってみるかい?」

     <オギョオオオッ>

ソフィーナ「い、いえ、遠慮しとくわ」

     <ギャギャギャ」> 

  ガイン「そう?まあ、ゴブリン程度じゃ面白くないからな」

     <ガギャッ>

ソフィーナ「いえ、決してそんな事は・・・・・」

     <ギギギッ>

  ガイン「近いうちに、フォレストサーペントでも譲ってあげるよ」

     <ゲギャ?>

ソフィーナ「む、無理ーーーーーーーーーー!」

<ギョバアアアアギョガアアアアアアギャッアアアアアアアアアアアアア>


初々しい三組のカップルが王都の表通りを散策している様な会話にしか聞こえない

のだが、目を開けて見れば血の海に転がるゴブリンの首やはらわたの間を足取りも軽く歩

いているのだから違和感が物凄い。


シリウス「・・・・・・頭がおかしくなりそうな光景ね」

  兵長「我々の苦悩が分かって頂けましたか?」

シリウス「ええ、痛い程、これはキツイわぁ・・・・・・」


目の前で繰り広げられる異常な光景に削られまくる常識の削りカスを、拾い集めて

は何とか任務をこなしている兵士は立派だとシリウスは思った。


シリウス「事が終わったら臨時手当を出すわ」

  兵長「有難うございます!」

シリウス「それぐらいはさせて頂戴・・・・・」


実際問題として最低それくらいは出さないと申し訳なさ過ぎて、シリウスの良心が

悲鳴を上げる事は目に見えていた。

それと同時にガインが領兵を率いて盗賊団を蹂躙している姿を想像してしまった。


シリウス「ソフィには頑張って貰わないと」

  兵長「面目ない」

シリウス「貴方たちの責任じゃ無いわ」


そもそも人口と経済規模に対してアテオス領が広すぎるのと、王都やルでマニア領

から距離が有る事が問題だった。

腕の良い等級の高い冒険者は、わざわざ陸の孤島の様な辺鄙な領地までは、中々足

を延ばさない。

討伐した魔獣と旅費が同じ金額では来る意味が無いし、怪我でもすれば大赤字だ。

結果として、増え続ける魔獣に対して減少し続ける冒険者と言った悪循環に陥って

しまった結果、領兵と魔獣のバランスが徐々に崩れて現在に至っていたのだ。


シリウス「とにかく、今回を乗り切れば一息つけると思うんだけど・・・・・」

  兵長「恐れながら、些か楽観的かと」

シリウス「うっ!」

  兵長「むしろ、これからが本番ではないでしょうか」

シリウス「やっぱり・・・・・誤魔化しきれなかった」

  兵長「・・・・・・・・兵士達には話さないでおきます」


途轍もない勢いでゴブリンを殲滅している2パーティーが今度は領内の魔獣を標的

に変えるのだ。

討伐数は流石に減少するだろうが、今度は素材という問題が出てくる。

ゴブリンなら魔石だけを回収すれば良いが、それ以外の魔獣だと素材を回収しなけ

ればならず、Dクラスの大物になれば、一人や二人で運べる物では無い。


シリウス「鉱山から運搬要因を連れて来ましょう」

  

その日、当然の様にアテオス領のゴブリン討伐は完了した。

明鏡止水・1135匹、羽蝶蘭・1109匹、総数2244匹。

当分どころか、向こう五年は灯りの燃料には困らない。


 リット「ゴブリンはこれで全部ですか?」

シリウス「あ、ああ、もしいても逸れが数匹だろう」

 ガイン「よし、じゃあ明日からデカい獲物を狩れるぞ」

 セーナ「で、振り分けはどうする?」

 リット「提案ですが北のレナ河の源流を起点にして左右に分かれませんか?」

  ユナ「良いわねえ、それなら獲物の取り合いも無いわ」

ライナー「討伐した魔獣の運搬はお願い出来ると聞いたんだけど」

シリウス「ええ、大丈夫、鉱山から応援を呼んで有るわ」

 セーナ「有難うございます、助かります」

 アイナ「確かに運搬って結構負担なのよね」

 ガイン「狩に集中できるのは助かるな」

 リット「集中しすぎて後ろに抜けられるなよ」

 アイナ「大丈夫よ、後ろには愛しいソフィーナちゃんが居るものね~」

 ガイン「うっ、煩いよ!」


(これは・・・・・・・・脈ありと見て良いのでは?良いのでは?)


ガインの照れた様な反応にシリウスは密かに拳を握りしめた。

策を弄する事を苦手とするシリウスは、その成果を手にした事が無い。

その為か、この未確定も甚だしい結果さえも成功は目の前だと錯覚する羽目になっ

てしまい、その後ロイスによって如何に早とちりだったかを説教される事となった。

ガインとソフィーナの関係は未だ未知数のままなのだ。

それでも期待してしまうのはアイオス領の苦しさの現れだろう。



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