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双武無双 



 リット「こっちの大広間は終わったぞ」

ライナー「小部屋も残らず殲滅した」

 アイナ「思った通り、手ごたえも何も無いわね」

  エマ「だってゴブリンだもの」

 ガイン「俺は腹が減った、早く帰ろうぜ」

 アイナ「はいはい、愛しのソフィーナちゃんが待ってるもんね」

  エマ「結婚式には呼んでね」

 ガイン「勝手に話を作るんじゃねえ!」

ライナー「二人とも仕事なんだから、真面目にやろうぜ」

 アイナ「ほ~い」

   エマ「うん」


リット達明鏡止水は現在アテオス領の廃坑の最深部でゴブリンの殲滅を行っていた

朝一で廃坑入口から突入した五人は、夕方を待たずして最深部に到達、現在は討ち

漏らしが無いかの確認作業を行っていた。

ここまで屠ったゴブリンの総数は473匹。

後ろから魔石を回収する為に付いてきていた二十数人の領兵たちは、その常識外れ

な光景に愕然とする事しか出来ないでいた。


領兵「な、何だこりゃ・・・・・・」

領兵「あれ・・・・人間・・・・・・だよな」

領兵「断言する自信がねえよ」

領兵「グリフォンが化けてると言われても信じるぞ、俺は・・・・」

領兵「同感だ」


アテオス領の兵士達には、リット達が坑道をただ歩いている様にしか見えなかった

希に腕や体が揺らいだように見えるが、その度にゴブリンの死骸が大量に生産され

て行く様は理解の範疇を軽く超えていた。


兵長「お前ら、無駄口叩いてると終わらないぞ」

領兵「へ~い」

兵長「しかし・・・・・・凄まじいな,この分だと、西の廃坑も・・・・・・」


リット達が潜った東の廃坑の反対側にある西の廃坑にはオーティスの護衛で残った

マチルダを除く羽蝶蘭が討伐に向かっていた。

ゴブリンの予想数は約300匹だが、この東の廃坑の予想数も300匹程と見積もって

た事を考えると、西も数が増えていると考えた方が良いだろう。

だが、リット達にとって所詮はゴブリン、多少処か倍に増えても大して気にも留め

ないだろう。

実際、気が付くかどうかも怪しい限りだ。


兵長「案内だけ頼むと言われた時は何の冗談かと思ったが・・・・」

実は前日、領主館では些か変った騒動が起こっていた。


セーナ「まずは領主様と詳細の打ち合わせをしましょう」


シリウスと同行した明鏡止水と羽蝶蘭はアテオス領に到着すると直ぐに領主と面会

して討伐計画と現地の案内、素材等の買取に関する取り決めを行ったがそんな状況

にソフィーナが大人しくしている筈が無かった。


シリウス「駄目です、許可出来ません」


早朝に同行すると言って、私室に駆け込んで来たソフィーナの要求を、一刀の元に

切り捨てたシリウスは、返す刀で領主であり伴侶でもあるロイス・グレージャーに

も釘を刺した。


シリウス「おねだり禁止で」


普段はどちらかと言えば放任主義的なシリウスが、今回に限って取りつく島も無く

反対した事に面食らったソフィーナは懇願する事も忘れて自室に戻っていった。


 ロイス「いつもの君らしく無いじゃないか、可哀想にソフィ、驚いてたよ」

シリウス「今回ばかりは甘い顔をする訳には行かないのよ」

 ロイス「それはまたどうして」

シリウス「あの中にソフィの婿候補が居るのよ」

 ロイス「・・・・・冒険者だろ・・・・・・・まさか貴族なのかい?」

シリウス「いいえ、平民よ」

 ロイス「・・・・・笑えないんだが?」


男爵とは言えグレージャー家は領地持ちの貴族であり、小領ながらも多くの金鉱山

を抱えているおかげで、上位貴族と対等な立ち位置を確立している。

男爵だからと言って、結婚相手に苦労する事は無い。

更に言えば、男爵は愛妻家でもあるが輪をかけて娘達を溺愛している。


ロイス「何故わざわざ平民の、それも冒険者にソフィを嫁がせる必要がある?」


美人で有名なグレージャー三姉妹は、縁談には事欠かない。

現在、長女のアマリアが婚約中、次女のシャロンが婚約者候補の選考をしている

状態である。


シリウス「アマリアの婚約者は、ええと」

 ロイス「メノア辺境伯の三男、名前はライアンだ」

シリウス「そうそう、あのヒョロッとした背の高い」

 ロイス「あのねえ・・・確かに荒事には向いていないかもしれないが、経営能力

     は期待出来るし何よりアマリアが気に入っている」


男児の居ないグレージャー夫婦は、三姉妹の内誰かの伴侶を領地の後継者にする事

にしていたが、長女の婚約者であるライアンはそれなりの教育を受けており、ある

程度の経験を積めば過不足なく領地経営が出来る様になると見ていた。


シリウス「それに関して異をとなえる気は無いわ」

 ロイス「それなら」

シリウス「問題は治安維持能力よ、ハッキリ言って脆弱も甚だしいわ」

 ロイス「ぐっ、痛い所を・・・・・・」


もともとロイス自身が文人肌で穏やかな性格をしていた事も相まって、領地の抱え

る兵力に対して余り関心を示さなかった。

それを危惧した先代が当時、金髪のスレイプニルの二つ名を持ち、じゃじゃ馬で名

を馳せていたアフェンドラ辺境伯家の長女であるシリウスに白羽の矢を立てたのだ


「あの跳ね返りに縁談が来るなど、奇跡以外の何物でもない!」


両家の苛烈とも言える後押しとゴリ押しで二人の結婚が決まったのだが、以外にも

相性はすこぶる良かった。

お互いに欠けている部分をお互いが見事に補完する事ができたからだ。


 ロイス「つまりその冒険者の若者が我が領地の弱兵を改善出来ると?」

シリウス「ええ、その通りよ」

 ロイス「とても信じられない、幾ら腕が立つと言ってもまだ十六、七だろ」

シリウス「そう、十七歳で既に看板級、英雄クラスも目の前らしいわ」

 ロイス「そんな馬鹿な!」


看板クラスでもギルドの各支部に一人か二人、英雄クラスともなれば国に一人居る

かどうか。

アマルティア王国など、ここ数十年は空席のままだ。

そこに成人したばかりの若者が片足を突っ込んでいるなどと、到底信じられない。


 ロイス「夢でも見たんじゃないのか?」

シリウス「なら、帰って来るのを待ちましょう、直ぐに結果がでるわ」

 ロイス「いや、いくら何でも今日は無理だろう」


いくらゴブリンとは言え300匹の討伐など、普通の兵士でも四日から五日ほどは掛

かる。

ましてや、入り組んだ坑道ともなれば、十日以上でもおかしく無い。

それをたった一日でなどと、いくら戦いに疎いロイスでも分かる。

だが、その常識を裏切る知らせを家宰のコンラットが持ってきた。


 ロイス「終わって帰ってきた?有りえないだろう!」

シリウス「・・・・・・・・・やっぱりこうなったわね」


リット達明鏡止水と羽蝶蘭は日暮れとともに領主館に戻ってきた。

憔悴し切った兵士達と大量の魔石と共に。


  兵長「奥さま、あの連中は一体何者ですか・・・・・」

シリウス「何と言われても」

 ロイス「何があった?」

  兵長「何がも何も、あれは本当に人間ですか?」


聞けば、リット達だけでなく羽蝶蘭について行った兵士達も同じ目に会ったらしい


「我々は三十人居ましたが、魔石を取り出すだけなのに置いてゆかれました」

「予想を百数十匹以上上回る数が居ましたが・・・・」

「ゴブリンの首が、まるで麦を刈る様にコロコロと・・・・・」

「なのに彼らは大して疲れた様子も無く・・・・・・」

「汗ひとつ、かいていませんでした」

「帰りに聞かれました、BクラスやCクラスの魔獣は何処に居るのかと・・・・」


どうやら自分の妻が正しかった事は分かったが常識が粉微塵に吹き飛んでしまった

為、可哀想なアテオス領主は立ち直るのに、少なく無い時間を要した。


 ロイス「まさか、九人全員が・・・・・」

シリウス「看板クラスだそうよ、ギルドでは鬼と呼ばれているらしいわ」

 ロイス「鬼・・・・・・・・・」

シリウス「その内の一人をソフィの婿に迎えたいのよ」

 ロイス「しかし、向こうの意向は?ソフィに好意をもっているのか?」


ここでソフィーナの意思を確認しないのは、貴族ならではの思考に他ならない。

家の為、領地の為に縁を結ぶ事は貴族の子弟なら当然の事、余程とんでもない相手

でも無い限り、拒否をしない事が美徳とされている。


「領民が収めてくれる税のおかげで何不自由ない生活が出来ているのだから、その

 身が自分だけの物と思わない様に」


貴族の子弟たちは物心ついた頃から徹底的にそう叩き込まれる。

王都の貴族たちからはすっかり失われた矜持だが、周辺の地方領主の間では当たり

前の価値観である。


シリウス「まあ、多分少しは、きっと、いくらかは、恐らく・・・・・」

 ロイス「要は何一つ決まっていないと」

シリウス「とにかく今が絶好の機会なのよ!」


シリウスは王都から帰領する際、ガイン達を注意深く観察した結果、リーダー格の

リットとアイナはほぼ公認のカップルで、エマはどうやらライナーに好意を寄せて

いるらしい。

更に言えば、この遠征でお互いの距離が一気に縮まった様なのだ。

つまり、カップルだらけの中で、フリーなのはガイン一人なのだ。


 ロイス「しかし、それなら同行させた方が良かったのでは?」

シリウス「駄目よ!足手まといになるだけだわ」

 ロイス「まあ、確かにそれはそうだろうな」

シリウス「攻めるなら相手の意表を突かなければ」

 ロイス「奇襲でもかけるのかい?」

シリウス「馬鹿言わないで頂戴」


ソフィーナには貴族の令嬢然としてガインに会わせる、つまり早い話が美貌や色気

で攻略させようと言うのだ。


 ロイス「しかし、ソフィにそんな艶っぽい真似ができるとは思えないが・・」

シリウス「着飾って化粧させれば何とかなるわ」

 ロイス「いや、さすがにそう上手くは・・・・・・」

シリウス「それで駄目なら寝こみを襲わせて既成事実を」

 ロイス「幾ら何でも強引過ぎるんじゃないかな」

シリウス「最近、良く言われるわ」

 ロイス「そうだろうね・・・・・」


しかし、作戦は翌日の夕食から始まった。

ガインだけが別テーブルになっており、更にそれをソフィーナが甲斐甲斐しく世話

を焼く奇妙な状態が出来上がっていた。


シリウス「平民の家庭では、妻が夫の世話をすると聞いている」

 セーナ「流石にあからさますぎませんか?」

シリウス「うむ、その事なら十分理解している」

 ロイス「まずは、胃袋からと思ってね」

  ユナ「まあ、個人の恋愛にとやかく言うつもりは無いけど」

 リット「本当にガインで良いんですか?」

 ロイス「まさかセーナ殿と言う訳にも行かんだろう」

シリウス「それに、リット殿やライナー殿だとこっちの身が危険なのでな」


途端にアイナとエマの顔が真っ赤に染まる。


  マナ「確か他人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死ぬって師匠が言ってた」

 ロイス「まだ死にたく無いんだが・・・・・」

シリウス「ガイン殿以外には手を出さないと誓う、それで宜しいか、アイナ殿

     エマ殿」

 アイナ「は、はい」

  エマ「あう~」


一方、ガインとソフィーナの方は些かおかしな方向に話が進んでいた。




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