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剛体堅守



冒険者A「この辺にプラムという名の子連れの女が居たと聞いたんだが?」

  住人「さあ、知らねえなあ~」

冒険者B「きさま、隠すと為にならねえぞ」

  住人「ああ?何だとてめえ」

冒険者A「馬鹿!黙ってろ!すまん、これで思い出したんじゃないかな」


冒険者の男は、懐から銀貨を一枚取り出すと、男に投げ渡した。


  住人「そうそう!解ってるじゃねえか、赤ん坊を連れた女ね、思い出したぜ」

冒険者A「それで、今どこに住んでる?」

  住人「ガライと言う荷運び屋の男と、門前町に住んでるよ」

冒険者B「門前町?」

 住人 「孤児院の門の前に、住人が集まって出来た新しい町さ」

冒険者A「ああ、それで門前町か、場所は教会だな」

  住人「今でも新しく家が建ってるから、直ぐに分かるさ」」

冒険者B「よっしゃ、これで依頼は終わったも同然だ」


二人の冒険者の男達は、足に羽が生えでもしたのか、まるで飛ぶようにスラム街か

ら出て行った。


住人「よう、儲けたじゃねえか」 


路地の影から、別の住人が出て来た。


住人「ああ、たったあれだけで銀貨一枚だ、飲みに行でもくか?」

住人「お、良いねえ」

住人「酒の肴も出来た事だしな」

住人「肴って、あの二人の冒険者か?」

住人「そうそう、あいつら他所もんだから、な~んにも知らねえんだ」

住人「あ~確かに、あそこにゃ偶に、鬼が出るからな」

住人「無事に出てくるか、賭けてみるか?」

住人「賭けにならねえよ、大怪我して出てくるか、死体になって出てくるかだろ」

住人「そりゃそうだ」

住人「ご愁傷様ってなもんだ」

住人「ぎゃはははははははははは」


現在、エルナト商会本店は、小売りだけを残して、その他の事業は止まっていた。

肝心の商会長が、荒れ狂っているのだ。

それもそのはず、二人の孫も出来て次代も盤石と思っていた所が、この有様だ。

こんな精神状態では、契約一つまともに結ぶ事が出来ない。


クラウス「あのアバズレが!」


まさか、自慢の孫が、全く血の繋がりが無い赤の他人だったとは、商会として到底

受け入れられなかった。

おかげでクラウスの妻はショックのあまり、倒れてしまうし、激昂していた息子も

事態が収束した今は、まるで抜け殻の様になって、自室に籠ったきりだ。

裏切り者のセドリックは、既に地獄の門を無理矢理潜らせた。

最も苦痛を与える方法を取るようにと、高額な依頼料も払った。


クラウス「オリバーには、早く立ち直って貰い、一刻も早く孫を・・・・」


そして不意に思い出した。

確か一ヶ月少し前に、オリバーの子供を産んだとして追い出された下女が居たはず

それも確か男児だった。

母親はどうでも良いが、子供は紛れも無い血のつながった孫だ。

直ぐにでも、行方を捜す必要が有る。


クラウス「草の根分けてでも探し出せ!費用は幾ら掛かっても構わん」


自分達が追い出しておいて勝手な言い草だが、未だ下女と蔑んでいるクラウスに

そんな考えなど無い。

既に自分の要求は通る物だと、信じて疑わなかった。

そして破格の成功報酬に、冒険者ギルド北支部は沸き立った。

王都中の下町やスラムを探し回る中で、二人組が西地区で足取りを掴んだのだ。

二人は、後先考えずに、プラム母子を確保するために強硬手段に出た。

成功報酬金貨十枚、この金額が彼らから穏便に説得する選択肢を捨てさせた。


冒険者A「いたぞ、多分あの女だ」

冒険者B「本物か?ガキは、ああ、いるな」

冒険者A「だが面倒だな、男も一緒だ」

冒険者B「あんな弱そうなチビ、少し脅せば直ぐ逃げ出すさ」

冒険者A「それもそうか」


二人の冒険者は、周囲の目を気にする事もせず、ガライ達の行く手を遮った。


冒険者A「お前、名前はプラムで間違いないな」


いきなり自分の名前を呼ばれた事に恐怖を覚えたプラムは、答える代わりに赤ん坊

を守る様に抱きしめた。


冒険者A「間違い無いみたいだな、一緒に来て貰おうか」


そう言って、伸ばした腕の前にガライが割り込んだ。


冒険者A「邪魔だ、デブ」

 ガライ「彼女は渡さない、帰ってくれ」

冒険者A「お前、自分の立場が分かっているのか」

 ガライ「帰れと言っている」

冒険者A「痛い目を見ないと、解らないらしいな」

 ガライ「帰れ」

冒険者B「まだるっこしいんだよ、殴った方が早いだろ」

冒険者A「それもそうか」

冒険者B「急がないと、人が集まって来るぞ」

冒険者A「わかった」


言った途端、腹を殴ったが、その手ごたえに違和感を覚えた。

いつものめり込む感触が無い。

少し躊躇したが、今度は顔面を殴ってみて違和感の正体に気付いた。

間違いなく拳は顔面を捉えたが、その威力は半分も届いていなかった。

のけぞる事も倒れる事も無い、僅かに鼻が赤くなっただけだ。

実はガライはオーティスから、頑強というスキルを付与して貰っていた。

男たちの拳なら暫くは耐えられると思っていた。


プラム「ガライさん!」

ガライ「大丈夫、大した事は無い、下がってろ」


戦う事に向いていない事は自覚していた、それでも守る力が欲しかった。

だが、この言い草に冒険者の男たちが切れた。

今まで自分達が、理不尽に踏みつぶして来たのと同じ種類の人間だと見下していた

のに、蓋を開けてみれば、相手は何事も無かった様にたっている。

地面を這いずる予定だった相手が、未だに立っているのだ。


冒険者A「何なんだ、こいつは!」

冒険者B「ビビるな!倒れるまで殴り続ければいいだけだろ!」


一方的に殴るだけの二人の男に、ただ耐えるだけの一人の男。

一方は日頃から暴力に慣れ親しんだ男達、もう一方は荒事とは最も縁の薄い小太り

の男。

結果は目に見えている筈なのに、先に地面に膝を着いたのは、意外にも冒険者の男

達だった。


冒険者A「・・ハアハア・・どうし・・・ハアハア・・てたお・・・れない」

冒険者B「・・ハアハア・・こい・・・・つ異・・常だ・・・ハアハア・・・」


息も絶え絶えに、ガライを見上げるしかない二人は、ガライに得体のしれない恐怖

を感じ始めていた。

だが、ガライとて、ただでは済まない。

一方的に殴られた為、両目は見えない程腫れあがり、鼻と口から流れた血が上半身

を真っ赤に染めたが、それでもガライは倒れなかった。


冒険者A「ハアハア・・・何で馬鹿正直に・・・殴ってたんだ・・・・俺たちは」

冒険者B「ハアハア・・確かにそうだな」


そして、埒が明かないと思った二人は剣を抜いた。

その場から動かないガライに業を煮やした二人は、命のやり取りを選んだのだ。

人を殺せば只では済まない、それも丸腰の相手にだ。

何処をどう見ても強盗殺人にしか見えない。

それでも剣を取る程、金貨の魅力は二人を狂わせた。


冒険者A「俺が殺る、お前は女と赤ん坊を確保しろ」

冒険者B「分かった」


そう言いながら、男は剣を頭上に大きく振り上げた。

だが、目の見えないガライは、何が起きているのか分からない。

ただ、か細いプラムの悲鳴が聞こえるだけだ。


冒険者A「・・・・・・・悪く思うなよ」

マチルダ「貴様がな‼」

冒険者A「はっ?」

冒険者B「へっ?」

    ・

    ・

    ・

「「ぎゃああああああああああああああああああああああ」」


物凄い勢いで飛び込んできたマチルダが二人の右腕を一瞬で切り落とした。


マチルダ「よく耐えたガライ、凄いじゃないか」

 ガライ「へへ・・・・」


そして、斬られた痛みにうずくまる二人を更にユナの足元まで蹴り飛ばした。


ユナ「時間を掛けてくれてありがとう、おかげで間に合ったわ、お馬鹿さん」


転がってきた二人を、ユナが更に腕が転がっている所へ蹴り上げた。

情け容赦の無い扱いだが、ガライの悲惨な有様と泣きじゃくるプラムと赤ん坊の様

を見れば当然の事だ。

もしこの場に九鬼が居れば、問答無用で首を跳ね飛ばしていただろう。

子供が絡んだ時の九鬼は容赦がない。


マチルダ「で、誰の命令?」


当たり前の疑問だった。

わざわざ、見知らぬ土地で殺しまでしようというのだ、普通ではない。


ユナ「素直に言った方が身のためよ」


そして二人は洗いざらい全て喋った。

それこそ聞かれてもいない北支部の内情までもだ。


  ユナ「碌でもない商会ね、王都一が聞いて呆れるわ」

マチルダ「もう用は無いわ、命までは取らないから、さっさと消えなさい」


落とされた腕を抱えながら、転がる様に逃げる二人を尻目に、マチルダはガライと

傍にいるプラムの前にきた。


マチルダ「あんたはどうする?王都一の商会の跡取りらしいよ、この子」


しかしプリムは泣きながらも、激しく首を振って否定の意を示した。


 プラム「私、あの店の下女で、長男に無理やり、子供ができて、追い出されて

     でもこの人が」

マチルダ「そっか、良い男だもんねガライは」

 プラム「はい、はい!」


顔面を腫らし鼻血を垂らしていても、どれ程みっともなくても、プラムが信頼する

男は、ガライ唯一人、どこぞの馬鹿息子など、比べたくも無かった。


  ユナ「またしても北支部なのね」

マチルダ「ここまで来ると、冒険者ギルドとは呼べないわよ」

  ユナ「まるで、闇ギルドよ」

マチルダ「取敢えず、師匠には報告しておきましょう」

  ユナ「あと、見回りの頻度も増やしたら?」

マチルダ「そうね、暫くセーナ達に交代で警戒させましょうか」

  ユナ「そうね、それよりも問題は師匠よ」

マチルダ「師匠が?」

  ユナ「事情を知れば殴り込みに行き兼ねないわ」

マチルダ「ははは、まさか・・・・ねえ、いくら師匠でも・・・・・」

  ユナ「行かないって断言出来る?」


リット達が毒で死にかけた事で、九鬼が静かに切れ散らかしたのは記憶に新しい。

本気で怒った九鬼が、あれ程恐ろしいとは、思いもしなかった。

今回の事で、我慢の限界が来ても、何らおかしくないのだ。


マチルダ「あははは・・・・・・・・・・・北支部、壊滅するかも」

  ユナ「・・・・・・・・・・・笑えないわ」



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