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絶体絶命


       リット「まずは一人」


あっと言う間に一人を倒された黒霧に衝撃が走る。


クライブ「離れろ!」

 バクラ「おう!」

 リット「チイッ!」


クライブはリットの危険性を瞬間的に理解、全員に距離を取らせた。

暗殺を生業なりわいにしているだけあって、反応が的確で早い。

此処で数を減らしたいリットにとって、大幅に予定が狂ったのだが、それは黒霧も

同様だった。

ほぼ確実に依頼を達成できる寸前で、勝利がするりとすり抜けたのだ。

それも仲間を一人、喰われた挙句にだ。


クライブ「お前・・・・・・何者だ」

 リット「ただの九級冒険者だ」

クライブ「ふざけるな・・・ランク詐欺だろう」

 リット「怒るなよ、口調が乱暴になってるぞ」

クライブ「うるさい!」

 バクラ「クライブ、挑発に乗るな」

クライブ「あ、ああ、すまん」


余りにも計画が狂ったクライブは怒りの矛先さえも見つけられなかった。

だがもリット達も一種の手詰まり状態になった。

どちらも決定打を打てないのだ。


リット「二人を担げるか?そのまま逃げるぞ」

アイナ「大丈夫」

 エマ「任せて」

リット「追って来る奴は俺が斬る!」


黒霧の連中を倒したい、ライナーとガインに毒をもった奴らに報復したい。

その欲求は有ったが、ライナーとガインが毒に侵された今、一刻も早く孤児院へ戻

る必要がある。

自分の我を通している余裕は無い。


クライブ「くそっ、これ程厄介な相手だとは思わなかった」


一方、クライブにとっても全てが想定外だった。

羽蝶蘭ウチョウランの行動を制限する為の人質を確保する。

ただそれだけの簡単な仕事の筈だった。

経験の浅い、まだ大人になり切れていない少年と少女。

それでも万全を期して、わざわざ毒剣を使う何時もの手順を踏んだのに、今のこの

ざまはどういう事だ。


クライブ「完全に力量を見誤った、下手をすれば五級クラスだ」


このまま、もし街道まで逃げられでもしたら、他人に目撃される可能性が高くなり

自分達が暗殺を生業にしている冒険者だと顔が知られてしまう。

更に生きて王都にでも辿り着かれれば、確実に犯罪者として警邏隊に追いかけられ

良くて逃亡、悪ければ縛り首だ。


クライブ「森を抜ける迄にケリを着けるぞ」

 バルド「わかった」

 バクラ「了解した」


黒霧が一気に殺気立ってきた事をリットも感じ取っていた。

だが追い込まれているのはリット達も同じだ。

毒に侵されたライナーとガインの命が何時まで持つのか、解毒するのに掛かる時間

はどれ位なのか、全く分からない。

今すぐにでも、処置しないと手遅れになるかもしれない。

そう思うと、焦りがつのる。


リット「奴ら、犠牲を覚悟で襲って来そうだ」

 エマ「ええ!どうするのお兄ちゃん」

リット「どうするもこうするも、一旦二人を下ろすしか無いだろう」

アイナ「一刻も早く戻りたいのに・・・・・」


全力で逃げるリット達だが意識の無い二人を担いででは、いくらアイナとエマが、

重量軽減魔法を使えるからと言って、それ程早くは走れない。

案の定、もう直ぐ街道だと思われる森の中の、やや開けた場所で黒霧の連中に追い

つかれる羽目になった。


クライブ「足の速いガキどもめ、やっと追いついたぞ」

 リット「お前らが勝手に追いかけて来たんだろ」

クライブ「悪いが、逃がす訳にはいかないんでね」

 リット「何だ、自殺願望でも有るのか」

クライブ「減らず口を・・・・・まあいい、とにかく此処で終わりだ」


黒霧はリット達を周りを取り囲むと、おもむろに剣を抜いた。

この陣形なら、人数の少ないリット達が圧倒的に不利だ。

実際、クライブが此処まで無理をして襲わなかったのは、この状況を作り出す為に

我慢していたのだ。


クライブ「・・・・掛かれ」


クライブの指示で九人の男達が一斉にリット達に斬りかかった。

だがここでもクライブの予想は裏切られた。


バルド「なにっ!」

アイナ「馬鹿にしないでよね」

バクラ「ちいいっ!」

 エマ「あっ、逃げるな!」


少女と侮って、少しだけ傷を負わせるつもりだったバルドとバクラは、逆に一瞬で

首を刎ねられかけ、辛うじて転がる様にその場から飛びのいた。


クライブ「冗談じゃ無い、何でこんなガキどもが・・・」


既にリットによって、一人が切り倒され、もう一人も腕に深い傷を負った。

クライブの思惑はリットによって多少の犠牲を出しても、少女たち二人を行動不能

にする事だった。

そうすれば、動けるのはリットただ一人。

如何に強力な剣術スキルを持っていたとしても、相手は四つのお荷物を抱えている

時間さえかければ確実に倒せる。

そう目算を建てたのだ。


 バルド「信じられねえ、あの雌ガキ、俺らと同じ六級相当だぞ」

 バクラ「そもそも、あの槍は何だ!こっちの剣が真っ二つだ!」

クライブ「くそっ、計画が滅茶苦茶だ」

 バクラ「どうする!」

クライブ「とにかく下がれ、だが包囲は解くなよ」

 バルド「わかった」


此処で再び膠着状態に陥った。

一刻も早くライナーとガインを九鬼に見せたいリット。

何としても此処から一人も逃がしたく無いクライブ。

この状態では、毒に侵された人間を抱えるリットたちよりも、クライブ達が一見、

有利に見えるが、もしも二人が死亡し守る必要が無くなれば、リット達三人をこの

場所に縛りつけておく事は不可能だろう。

間違い無く、彼らは復讐の鬼と化してクライブ達の首を狩るまで止まらないだろう

完全に双方が手詰まりなのだ。


 バクラ「どうするクライブ」

クライブ「すまないが、少し考える時間を稼いでくれ」

 バクラ「了解だ」


クライブの指示をうけ、黒霧の男達は決して剣を合わせる事はしないが、ぎりぎり

まで近寄っては、挑発を続けた。


リット「くそっ、嫌らし動きばっかりしやがって!」

アイナ「リット!落ち着いて!」

リット「分かってる!分かってはいるんだ!」


ライナーとガインの命が刻一刻と流れ出しているのに、こんな所で足止めを余儀な

くされる自分が許せなかった。

焦燥感で気が狂いそうなのだ。

その焦りを見透かしたように黒霧の男達が一斉クライブの元に動いた。


クライブ「この依頼は失敗だ!人質は諦める!」

 バルド「了解だ」

クライブ「毒剣を全部使え、全員此処で殺す」

 バクラ「わかった」

クライブ「ちくしょう、今回は大赤字だ」


黒霧の主な目的は羽蝶蘭ウチョウランの殺害であり、リット達はその為の道具の筈だった。

だが、蓋を開けてみればその道具の確保さえ、困難な有様だ。

これでは以来の達成など夢のまた夢。

だからクライブは依頼を破棄する事に決めたのだ。


クライブ「こいつらだけは必ず殺せ、口を封じるんだ」

 バルド「ああ、わかってる」

クライブ「一斉に掛かる!やれ!」


バルドとバクラは有りったけの毒剣をリット達に向かって投げ付けた。


リット「なっ!くそったれが!」


十本以上の毒剣はリットとアイナ達の射線が重なる様に投げられた。

つまりリットは毒剣を躱さずに全て叩き落とす事を強いられる事になったのだ。

クライブ達はリットさえ排除出来れば残るは少女二人、多少は犠牲を出しても排除

する事が出来る、そう思った。

そして、それは望んだ結果を出した。

信じられない剣速で毒剣を叩き落としたリットだったが、最後に放たれた毒剣だけ

が、黒く小さかった。


リット「ぐっ!しまった・・・」

アイナ「リット!」

 エマ「お兄ちゃん!」


その為、目測を狂わされたリットは右腕に毒剣を受けてしまった。


クライブ「何て奴だ、最後の一本だぞ・・・・」

 バルド「奥の手まで使ってやっとかよ・・・」

 バクラ「この依頼、俺らの手に余る」

クライブ「ああ、そうだな、俺のミスだ、すまん」

 バクラ「構わない、こいつらを始末して出直しだ」


一方、毒剣を受けてしまったリットには、早くも兆候が表れ始めた。

散々動いていたからなのか、毒の廻りが早い。


リット「くそっ、もう痺れて来やがった・・・・」

アイナ「下がって、私が相手をする」

リット「まだ大丈夫だ」

アイナ「駄目よ、直ぐに動けなくなるわ」

 エマ「そうよ、大人しくしてて、お兄ちゃん」

リット「・・・すまん」


強がってみたアイナとエマだが、追い詰められた彼女達にたいした選択肢は残って

いない。

二人で六級冒険者八人を倒し、リーダーであるクライブを無力化、さらにその後に

幼馴染三人を抱えて戻る。

どう考えても絶望的な状況だ。


クライブ「ふう、やっと片が付いたみたいですね」

 バクラ「面倒掛けやがって、少し遊ばせて貰おうか」

 バルド「この際、みんなも楽しめばいい」


圧倒的優位に立ったクライブ達は、余裕が出て来たのか、勝を確信すると嫌らしい

視線をアイナとエマに向けてきた。

例えどれ程若くても、極上の美小女は十分に慮辱の対象になるのだ。


アイナ「チィッ」

 エマ「ふんっ!」

リット「くそっ・・・・」


既に毒が廻ったリットの右腕は、だらりと垂れ下がり辛うじて左手のみで剣を構

えているが、到底戦力にはならないだろう。

三人が三人共、此処で死ぬ事を覚悟するしか無かった。

そして、それを見た黒霧の男達は卑下た笑みを隠そうともせず、ゆっくりとアイナ

達に近づいてきた。

その様はもう、冷徹な暗殺者では無く、ただの犯罪者崩れの物だ。


バルド「さあ、始めようか」

バクラ「ケヒヒヒ」


二人が剣を手に取った瞬間、傍の藪が弾けて黒い影が五つ黒霧に襲い掛かった。

あっと言う間に三人が血の海に沈み、他の五人は転がる様に倒れ込んだ。


       「うちの兄弟子に何をした!」


突然、アイナと黒霧の間に割り込ん出来だのは、カリファの森に居る筈の羽蝶蘭ウチョウラン

だった。


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