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変貌と進化



不味い事になった。

とにかく、外部に、特に教会関係者に知られる訳にはいかない。

もし露見すれば、マリは教会に拘束され、枢機卿共が食い散らかす事は確実だ。


「みんな、マリのスキルは絶対に喋ってはいけない、約束しなさい」


厳しい口調に四人共押し黙った。

凄いスキルなのに、なぜ、自慢出来ないのかと思っているのが、顔に出ている。


    「もし、他人に聞かれたら、二度とマリには会えなくなります」

  マリ「えっ」

    「マリも攫われて、教会に閉じ込められ、自由に出歩けなくなります」

イレーネ「えぇ――――っ」

    「散々こき使われた末、好きでも無い相手と結婚させられるでしょう」

    「「「「え――――っ」」」」


四人とも愕然としていたが、ロッドの反応が特に激しかった。


 マリ「ねえ、ロッド、どうしよう、あたし離れるなんて嫌だよぉ」

ロッド「大丈夫!絶対に俺が守るから!絶対に!」


どうも、お互いに好意を持っているらしいが、今はそれどころではない。


    「イレーネとイルマも、簡単に安心できるスキルでは無いのですよ」

イレーネ「どういう事ですか、司祭様」

    「二人のスキルは、冒険者や傭兵達にとって、喉から手が出るほど、

     欲しいスキルなのですよ」

 イルマ「でも、別にそれなら………………」

    「騙して、脅して、それでも駄目なら誘拐しようとする連中もいます」

イレーネ「誘……拐……?………噓でしょ…」

    「あなた達は、まだ子供です、おまけに孤児とくれば、そうした連中から

     すれば、恰好の獲物でしょう」

 イルマ「そんな………でも、どうしたら………………」


まさか、誘拐まではしないだろうと思っていたのなら、認識不足だと言ったら全員

が、固まってしまった。

自由を奪われれば、やり様など幾らでも有る。

時間を掛けて洗脳したり、麻薬中毒にして操ったりされたら、一溜りも無い。

最悪、殺されてスキルを奪われる可能性もゼロでは無い。


   「だから、誰にも知られてはなりません、そして強くなりなさい」

ロッド「強くなる………………」

   「そうです、理不尽な連中から、自分を守れるぐらいに強くなりなさい」


そう、言われた子供達は、幼いながらも何かを決意した顔をしていた。

頼もしい限りだが、俺はその事に喜んでばかりも居られない。

いつ、外部に漏れるかもわからないからだ。


「急いで対策を考えないと………………」


その夜、司祭の私室には九鬼老人の姿が有った。


九鬼「全く、次から次へと………………」

  「私も全く同意見です、もう、ここ迄来ると神の介入を疑わざる得ません」

九鬼「それか、世界が均衡を保とうとしているのかも知れんのう」

  「均衡………ですか………」

九鬼「自然界では、よくある事じゃ、バランスを崩した世界は、常に最適な環境

   に戻ろうとする」

  「例えば?」

九鬼「猫が増えすぎればネズミは激減する、餌が無くなった猫が飢死にして猫の

   数が、減れば、ネズミの数が増える、まあ、暴論じゃがこういう事じゃ」

  「我々がネズミなら、猫は何者なんでしょうね」

九鬼「わからんが、余り仲良くは出来んじゃろうなぁ」

  「それにその理屈で考えれば、相手はこちらの戦力を遥かに凌駕している訳

   でしょう?」

九鬼「むうう」


なんとなくだが、自然の摂理とは、こういう物かも知れないと思った。

ならば、尚の事、守りを固めなければならない。


九鬼「幾ら儂でも、子供達全員は守り切れん、対策が必要じゃな」

  「しかし、どうしましょう、籠城する訳にもいきませんし………………」

九鬼「………………籠城………良いかもしれん………」

  「何をいってるんですか?」

九鬼「何も本気で籠城する訳では無い、孤児院の窓口を儂と司祭様だけにに限定

   するんじゃ」

  「………………………………なるほど…」

九鬼「なんせ、こちらには聖女と特殊能力司祭がおるでな、気をつけんとな」

  「頼らせて貰いますよ、武王殿」


確かに、そうすれば秘密が露見する確率は、格段に減らせるだろう。

直接、乗り込まれない限りまず、大丈夫だ。

問題は食料ぐらいだろうか、かなり溜め込む必要が有る。

だが、今の孤児院は、老人のおかげで、食料自給率がどんどん上昇している。

時間が経てば経つほど、食料の買い入れが減るのだ。

だが、ここで九鬼老人から、思わぬ提案を突き付けられた。


九鬼「この孤児院ごと、教会から買い取れんかのう?」

  「いくら何でも………いや………出来なくは無い………かも………」

九鬼「じゃが、予算は小金貨六枚(約六十万円)しか無いぞ」

  「恐らく大丈夫でしょう、どうせ空証文程度にしか、思わないでしょうから」

九鬼「空証文?」

  「ええ、いざとなったら、無効だと主張するでしょう」

九鬼「一向に構わんよ、こっちが買った事実さえ有れば問題ない」

  「問題ないって………………」

九鬼「力ずくで来れば、儂が叩き潰す、要はこちらに権利が有ると言う大義名分が

   主張出来れば良い」

  「つまり、実際の効力が無くても構わないと?」

九鬼「そういう事じゃな」

  「分かりました、では、さっそく明日にでも値切りに行きましょう」

九鬼「………………買取交渉じゃぞ?」

  「知ってますよ、そんな事」

九鬼「………………不安じゃ」


しかし、九鬼の心配を他所に、翌日の夕方には、オーティスは孤児院の譲渡契約書

を、手に入れていた。

それも、小金貨四枚で話をつけてしまっていた。

証書も紛い物では無く、きっちり教会の印と大司教の名前も明記されている。

それは、この孤児院が教会本部から如何に軽んじられているかを示していた。

ほぼ、スラム街に有る土地など、どれだけ広かろうと無価値だと判断されたのだ。

だが今回だけは有難かった。

何せ、石壁に囲われた籠城に最適な土地など、ほかには考えられない。

教会本部が、その価値に気が付いた時は、もう手出し出来ない様にするつもりだ。


  「あのグース大司教は金に汚いですからね、やり易かったですよ」

九鬼「それにしては、時間が掛かったのう」

  「ええ、まあ、交渉好きの御方でして………………」


朝早く小金貨3枚から始まった値上交渉は、半銀貨一枚(約5000円)単位で吊り上

げられて、やっと昼過ぎに小金貨4枚に落ち着いたのだ。


  「とにかく、欲深い人ですから、昼頃にもう降参だと、演技をしたんですよ」

九鬼「それはまあ、ご苦労じゃったのぉ」

  「元は貴方の稼いだ金ですから」

九鬼「気にせんでも、構わんのじゃが………………」

  「それに、食料を買いたいですから、無駄使いは避けたいので」

九鬼「うむ、立派な母親じゃな」

  「誰が母親ですか!誰が」

九鬼「自覚が無い程、自然じゃのぉ」

  「ムガ――――ッ」


だが、これで体裁が整ったとばかりに、九鬼は全力で準備を整え始めた。

羽蝶蘭ウチョウランやリット達は、勿論だが、ロッド達も訓練に参加した。

かなり厳しい修行になったが、基礎を叩きこむ為には、手は抜けなかった。

だが、直ぐに模擬戦が出来る程、上達したのには愕然とした。

やはり、スキルによる底上げは無視できない。

そして、その訓練の合間を縫って、孤児達と畑を広げ、狩った獲物を燻製に加工し

て保存した。

特に魚と水鳥は、水路がレナ大河に繋がっている為か、いくら捕っても捕り尽くす

事は無かった。

例えば今日、狩り尽くしても、明日には元に戻っている、と、いう具合だ。

おかげで、保存量が増える一方なのは、嬉しい誤算だった。

更に炭や薬草の類も必要以上の量が確保出来ている。

余剰分を販売する為の商品が、武力準備より先に揃いそうだ。

だが、一番の変化は孤児院だ。


子供達「わ~い、引っ越しだ~」

 マリ「危ないから、走っちゃ駄目よ」

ロッド「まず、掃除からだな」

子供達「おなかへった~」

子供達「あたし、ここがいい」

子供達「まどぎわなんて、ずるいぞ」

 マリ「かってにきめたら、おこられるよ」

子供達「へ~んだ、はやいものがちだよ~」

子供達「じゃあ、おれはここだ」

子供達「あ~っ」

ロッド「お前ら掃除が先だって言ってるだろ!」

子供達「わ~、ロッドがおこった~」

ロッド「頭いて~、模擬戦の方が楽だ………………」


孤児院の敷地には、小さな裏門と、大きな正面玄関しか入口は無い。

九鬼とオーティスは、正面玄関から繋がる教会の本館だけを、外部との接点として

他の敷地との間に壁を作り、完全に独立させて、分離した。

つまり、ここを通り抜けないと、内部に入り込めない。

当然、子供達に接触など出来ない仕組みになっている。

そして、今は封鎖している裏門だが、戦力が整わない限り使用するつもりは無い。

そして、孤児達は、今まで暮らしていた本館から、敷地のほぼ中央にある建物に、

移動させたのだ。

この建物は恐らく、修道士の宿舎として建てられた物だろうが、そのデカい建物を

九鬼が殆んど一人で、壊れた壁や、屋根を修復して、リット達の宿舎として使って

いたのだ。


九鬼「建物自体、それ程傷んでおらんかったからのう、やはり石作りは頑丈じゃ」


それにここなら、部屋は有り余っているし、九鬼や羽蝶蘭ウチョウラン達の目も届く。

色々都合が良かったので、引っ越しがきまったのだ。

そして、それも含めて、貧乏なボロ孤児院は、徐々に難攻不落の城塞へと、変貌を

遂げ始めていた。


九鬼「基本的な物は、揃いつつある、後は弟子共の成長次第じゃ」

  「では、私はスキルの収集に精を出しますかね」

九鬼「そうじゃな、気安く付与は出来ん、人選は慎重に、じゃな」

  「ええ、同感です」


だが、全員が殆んど引き籠って魔改造に勤しんでいた間に、外部でも事態は急速に

動き始めていた。


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