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九鬼の思惑・司祭の困惑




羽蝶蘭ウチョウランがクランに加入して、その翌日の朝、走り込みの訓練を見ていた九鬼の元に

副ギルドマスターの訪問を受けていた。


  九鬼「これは、チェスカ殿、お手数かけて申し訳ない」

チェスカ「いえ、どれ程も無い事ですから、それよりもギルド本部の件でお話が」

  九鬼「やはり、一筋縄ではいきませんか・・・」

チェスカ「ええ、表向きは不干渉を確約しました、ですが、あれは絶対に納得して

     いませんわ」

  九鬼「理由を伺っても宜しいか?」

チェスカ「スキップの治療を拒否されました」

  九鬼「ほお・・・・切り捨てましたか」

チェスカ「ええ、三男とは言え伯爵の息子にも関わらずにです」

  九鬼「まあ、死にはせんが、当分は激痛で眠れんじゃろう」

チェスカ「伯爵は間違いなく猛抗議に来るでしょう」

  九鬼「諦めませんと、宣言したようなもんじゃのう」

チェスカ「はい、次からは、裏で接触して来るでしょう、ご注意を」

  九鬼「ご忠告、感謝します」


そしてチェスカは、教会の中庭で、体力増強に勤しんでる、若い冒険者達を窓から

眺めながら、何かを確認する様に呟いた。


チェスカ「あれは、羽蝶蘭ウチョウランの子たちですわね」

  九鬼「我がクランの一員になりましてな、現在、修行中ですじゃ」

チェスカ「あの子達もアイナ達みたいに?」

  九鬼「数日ま有れば、そこそこには、仕上げて見せますわい」

チェスカ「なら、大丈夫なのかしら・・・・」


チェスカが危惧するのは、九鬼本人では無くその周りの人間に接触して来るのでは

と言うことらしい。

孤児達は教会との関係上、手を出せば只では済まないが、冒険者なら、ギルド本部

が無視をすれば、個と個の諍いで済ます事ができる。


  九鬼「そこまで、手を伸ばして来ると?」

チェスカ「ええ、確たる証拠は有りませんが、中央ギルドの上層部の執着が、異常

     過ぎる気がします」

  九鬼「・・・・・・・そう思われましたか」

チェスカ「ええ」

  九鬼「ふむ、如何でしょう、お急ぎで無ければ、向うの離れでお茶でも」

チェスカ「そうですわね、御馳走になろうかしら」

  九鬼「では、こちらへ」


九鬼は、それからチェスカを伴って、いつもの小屋の脇に作った東屋に来た。

実はこの東屋、九鬼がアイテムボックスの練習にと、人目の付かない早朝や夜中に

材料を集めて回って、作ったものだった。


  九鬼「テーブルも椅子も何もかも手作りでしてな、不具合は見逃して欲しい」

チェスカ「いえいえ、素敵な作りですわ」

  九鬼「はは、有難い事じゃ、それと、これをどうぞ」


そう言うと、九鬼は無骨なカップに熱い茶を入れて差し出した。

ほのかに、何かをを煎った香りが漂い、彼女の鼻腔をくすぐった。


チェスカ「こ、これは、まさか、紅茶ですか?しかし、この香りは・・・・」

  九鬼「ええ、何処にも売っとりませんでしょうな、自家製ですから」

チェスカ「・・・・自家製?」

  九鬼「ええ、その通りですじゃ」

チェスカ「つまり、九鬼さんがお作りになったと?」

  九鬼「ええ、私の制作ですな」

チェスカ「つまり、紅茶の製法を知っていると?」

  九鬼「なに、そう難しい物でも無し」

チェスカ「まさか、ここに茶の木が」

  九鬼「間違いなく生えとりますな、立派なのが数十本ほど」

チェスカ「ああ、何て羨ましい、ですが、例え少量だとしても・・」

  九鬼「ええ、露見すれば、間違い無く強欲な商人や、碌でも無い連中が群がる

     でしょうな」


この国の紅茶は、全て東方の小国からの輸入品であり、高価な嗜好品だ。

なぜなら生産国から、この国まで少なくとも3ヶ国は通過しなければならず、関税

だけでとんでも無い金額になるからだ。

更に生産国は、その製法を秘匿し、茶の木の持ち出しも禁止している。

数少ない、現金収入なのだから、当然だろう。

その木が、何故か教会の森の一画に自生していたのだ。

考えられるのは、恐らくここが破棄される前に教会上層部、教皇か枢機卿クラス

が、隠れて栽培していたがその後、何らかの理由で受け継ぎが途絶えてしまった

のだろう。

それが生き残って少しずつ数を増やしたと言う事だ。


チェスカ「問題だらけと思いますが、大丈夫なのですか?」

  九鬼「まあ、何とかなるじゃろう、その為のクランじゃしのぉ」

チェスカ「商人はともかく、中央ギルドは厄介ですわよ、勝算が御有りで?」

  九鬼「まあ、それなりに、ですな」

チェスカ「九鬼さんが、そうおっしゃるのなら、そうなのでしょうが・・・・」

  九鬼「どうせ、すぐには強硬な手段を取りはせんからのう、こちらはその間に

     準備を整えるつもりじゃ」

チェスカ「すぐには?」

  九鬼「ああ、奴らは戦になった時の護衛が欲しいだけじゃからのぉ、ギリギリ

     まで儂と敵対はせんじゃろうよ」

チェスカ「まさか、戦争が起きるのですか!」

  九鬼「国の上層部は秘匿しておるつもりじゃろうが、感の鋭い連中は既にその

     気配を感じて動き出しておる様じゃな」

チェスカ「どうして、大騒ぎにならないのでしょう?」

  九鬼「計りかねておるのじゃろうよ、大戦なのか、小競り合いなのか、侵略か

     防衛か、そもそも、相手はどの国なのかさえ、はっきりせんからのう」

チェスカ「なるほど・・・・それで彼らを鍛えていると、しかし・・・」


チェスカの心配も最もだろう。

如何に九鬼が強くても限界は有る。

だから彼らを鍛えて戦力にするつもりだろうが、さすがに間に合う訳が無い、そう

思っていたのだ。


  九鬼「なに、二、三日あれば羽蝶蘭ウチョウランも全員、アイナぐらいにはなれる」

チェスカ「は?あれはあの子達の特殊スキルでは?」

  九鬼「いいや、只の技術じゃ、他の小僧どもも使える」

チェスカ「は?技術?」

  九鬼「そうじゃ、教えれば、誰でも使えるただの、技術じゃな」

チェスカ「そんな、馬鹿な・・・・・」

  九鬼「その気にんれば、チェスカ殿でも、習得できますぞ」

チェスカ「御冗談を、あり得ませんわ・・・・」


それから、チェスカに、あと一ヶ月ほどは修行でギルドには顔を出さない事を告げ

送り出した。

九鬼は、この一ヶ月で下準備を全て終わらせるつもりだった。

その為にも時間の猶予は無い。

なぜなら、オーティスとの話し合をいく度も重ねて計画を立てたのだ。

実際は、九鬼はそれ程、急がなくてもと主張したが、オーティスは、最悪の事態を

想定していたため、話し合いは揉めに揉めたが、決め手はやはり、子供達だった。

子供達の安全と保護を最優先にしたい。

そう主張されては九鬼も受け入れるしか無かった。

そしてこの話合いのあと、孤児院は劇的な進化を遂げる事になる。

それは、当然、孤児達も例外では無い。


「大切な話が有ります、付いて来て下さい」


十二歳になった、イレーネとイルマ、十一歳のロッドとマリを連れて礼、拝堂の裏

から、半地下の扉をくぐった。

ここは、場所的に言えばオーティスの私室の地下部分を壁で区切った部屋で、真ん

中の台には、大きな黒い石板が鎮座して、そこから更に地下に向かって管が伸びて

いた。


イレーネ「かっけ――――、司祭様の秘密基地だ!」

    「イレーネ、大事な話です、真面目に聞きなさい」

イレーネ「は――い」

 イルマ「何回怒られても懲りないよね、イレーネは」


いつも、怒られている様に見えるイレーネだが、実際はオーティスから本気で怒ら

れた事など、殆んどない。

イレーネの問題行動やいたずらは、承認欲求の現れなのだ。

彼女は捨てられた時の事を、僅かに覚えていたが、これが幼い心に大きな傷を残し

てしまう事になった。

今迄、優しかった母親が、いきなり冷淡になり、イレーネを捨てたのだ。

彼女の母親は商人の妾をしていて、その商人との間の子供がイレーネだ。

だから、イレーネに惜しみない愛情を注いだ。

だが、順風満帆と思われた母子の暮らしは、商人が投資に失敗して夜逃げした事で

あっけなく、終わりをつげた。

だが、収入が途絶えても、母親に働くなどと言う、選択肢は無かった。

イレーネの母親は、男に頼らないと生きて行けない女だったのだ。

だから、新しい男を見つけると、イレーネは自分の生活を危険に晒すかも知れ無い

邪魔な存在になった。

その日からイレーネは目の前から消え去った愛情を探して、絶望と言う名の闇の海

を、ただ、漂っていた。

オーティスによって、救い上げて貰う迄は。

だから、甘えているだけだと知っているオーティスは、本気で怒らないしイレーネ

は、本当に悪意の有る行動など取らない。

だから、オーティスが本気で駄目だと言えば、イレーネは必ず言いつけを守る。


    「今から見る物は全て、誰にも話してはいけません、約束できますか?」

 ロッド「うん、約束する」

イレーネ「任せて」

 イルマ「「は~い」」

    「では、今からみんなのスキルを確認します」

    「「「「えっ?」」」」


さすがに子供達も、これには驚いた。

スキル確認は神殿で行うのが常識だからだ。


 ロッド「司祭様、スキル鑑定って、ここでも出来るんですか?」

    「普通は出来ません、もしばれたら、此処から追い出されます、だから

     絶対に秘密なんです、分かりましたか?」

イレーネ「わかった、絶対に喋らない!」

 イルマ「そうだね、それにお金かからないし」

 ロッド「お金は大事だよね」

イレーネ「そろそろ、みんなの靴も買わないと」

  マリ「フェムのミルク代は、削れないわよ」

 イルマ「そこは、最優先だから、大丈夫」

    「経済観念がしっかりしているのは、良い事なんだが・・・・」


十歳そこそこの子供とは思えない、非常に達観した姿に頭痛がしたが、まずは当初

の目的を果たす事が大事だ。


    「まずイレーネから、この石板に手の平を、そうそう、え~とスキルは」

イレーネ「あたしのスキルは何、司祭様!」

    「凄いですよ、短剣術と隠密、あと頑強です、間違い無く一流の斥候に

     成れます」

イレーネ「やった~!」

 ロッド「すげ―、三つもスキルがある」

イレーネ「へへん、凄いだろう」

    「はいはい、さあ、次はイルマですよ」


順次、確認していったが、みんな、他人が見たら羨ましがるスキルばかりだ。

イルマは弓術と風魔法、ロッドは剣術と身体強化、二人共、冒険者になれば必ず

一流になれるスキルだ。

だが、最後に表示された、マリのスキルを見て、愕然とした。


    「これは・・・・・不味い・・・・・・」

  マリ「し、司祭様、あたし、何か悪いスキルが出たの?」

イレーネ「司祭様、マリは大丈夫なの?」

 イルマ「悪いスキルなんて、嘘だよね」

  マリ「ねえ、お願い、教えて、司祭様!」


不安に駆られたマリが問いかけて来た。

しかし、答えようにも、オーティス自身が衝撃を受けて答えられない。

優しい子だとは思っていたし、面倒見も良かった。

小さい子にも懐かれ、フェムなどは、マリといる時は泣きもしなかった。

しかし、まさかマリにこんなスキルが発現するとは、夢にも思わなかった。

子供達に問い詰めれて、やっと一言だけ絞り出した


    「・・・・・・・・聖女・・・・・・・・」



マリに現れたのは、神使(治癒・再生・慈悲)のトリプルユニットスキルだった。



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