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中央本部・ギルドマスター補佐



今、九鬼老人と、三日間、死にかける程の修練を課せられ、半分魂の抜けかけた五

人の若者が、冒険者ギルドのカウンターを長い事、占有する羽目になっている。


  九鬼「断ると、言っておろうが」

スキップ「どうしてだ!金も地位も出すと言っているだろう、何故断るんだ!」

  九鬼「移籍しなければ儂の弟子に手を出すと公言する本物の馬鹿に、従う訳

     が無かろうが」

スキップ「だから、仕方なく金と地位を提示しているじゃないか」

  九鬼「・・・・ええかげんにせえよ」

スキップ「お前こそ、面倒な事になるぞ!」


九鬼とリット達は、クランの申請に来ていたのだが、カウンターに着いた途端に横

から、中央本部のギルド員が声を掛けてきた。

一方的な勧誘を押し付けて来る中央本部と、真っ向から断る九鬼が正面から衝突を

しているのだ。


デライド「本人が嫌だって言ってるんだから、諦めたらどうだ?」

スキップ「私が!本部のギルマス補佐の私が!わざわざ勧誘に来てやったんです!

     有難く受け入れれば良いのです!貴方は黙ってなさいデライド!」

デライド「てめえ、たかが補佐の分際で俺に喧嘩を売るのか?」

スキップ「ふん!あなた如きが、こいつらに勝てるとでも思っているのですか?」

デライド「スキップ・・・てめえ・・・」


このギルマス補佐と名乗る男は三名程の護衛を連れていた。

全員が6級で、デライドの5級より下だが、如何せん引退してから、もう十年近く

剣をまともに振っていなかったデライドのたるみ切った体では、結果は見えている

まず、間違いなく勝てない。

確かに支部のギルドマスターの方が、ギルマス補佐よりも地位は上だと、規約には

明記されている。

だが、近年では、只の名目上のお飾りに過ぎなくなっていた。

ギルドの中央本部の連中は、常に各支部を見下してきた。

受け付け嬢でさえ、自分達は、本部務めだからと、高慢になっている。

こういったいさかいも、終わった後に、教会や貴族の後ろ盾をちらつかせては、強引に

納めて来た。

つまり、力ずくで物事を押し通して来たのだ。

間違いなく、デライドは負けるだろうし、今回もそうなるのは間違いない。


スキップ「ふんっ、無能は大人しくしていたらどうですか?」


だが、とうとう限界の来た九鬼が、この補佐の男を馬鹿にし始めた。


  九鬼「アイナもエマも良く見ておけ、こいつが虎の威を借りるてる狐じゃ」

 アイナ「始めて見ました!」

  エマ「実在するんですね、驚いた・・・」

 リット「てっきり、架空の存在かと思ってたよ、俺」

 アイナ「私も」

  九鬼「一生に一度、見れるかどうかと言う珍獣じゃぞ、今の内に、よく観察

     しておくんじゃ」

 アイナ「は~い」

スキップ「きっ、きっ、きさまぁ!」

  九鬼「そして、ちょっと煽られただけで頭に血が昇るも、この狐の習性じゃ」

 リット「ほんとだ、顔が真っ赤だ」

ライナー「赤いキツネ?」

  九鬼「くはははははははは、上手い事言ったもんじゃ」


ツボに入った九鬼が大笑いを始めると、周りの野次馬たちも、我慢しきれなかった

らしく、そこかしこで、笑い始めた。


「くくくく、見ろよ、あのキツネ顔、震えてやがるぜ」

「キ、キツネって、見たまんまじゃんwwww」

「おいおい、怒ってるぜ、キツネの自覚が無かったのかよww」

「おおかた、補佐様の家には、鏡が無いんだろう」

「だが、また随分、貧相なキツネだな、ネズミの間違いだろうwww」

「やめとけ、ネズミが気い悪くすんぞw」

「そりゃそうだな、ネズミよ済まねえ、この通りだ、許してくれ」

「「「「「「ぎゃはははははははははははは」」」」」」


大げさに手を合わせて、謝る恰好をする冒険者の男を見て、周りから嘲りの笑いが

渦巻いた。

彼らにしても、自分達のギルドマスターを馬鹿にされて、気分が良い訳が無い。


デライド「お、お前らなぁ、九鬼の爺さんも煽りすぎだろう」

  九鬼「何を言う、お前さんだって、笑っておったでは無いか」

デライド「いや、だって、キツネって、くぷぷぷぷぷ」


とうとう、我慢できなくなったデライドまで笑い出したため、無反応を決め込んで

いた受付嬢や職員達も釣られて笑い出した。


スキップ「き~さ~ま~ら~」


ギルマス補佐の男の顔色は、赤を通り越して赤黒くなっていた。

切れ散らかしているのが、傍目からでも、良く判る。

恐らくもう、まともな判断などは、出来ないだろうと思ったが、デライドはそれ程

心配しては居なかった。

デライドは、九鬼の実力を4級クラス、つまり英雄クラスだと、見積もった。

実は、ブッシュボアの解体に立ち会い、その額の一撃を見て戦慄したのだ。


(あのクソ硬い眉間の骨を一撃で貫通だと?本物の化け物じゃないか・・・)


どう考えても、7級などの腕前では無い、階級詐欺だ。

おまけに一昨日、九鬼と揉め事を起こしたと報告の有った、黒狼のパーティーが、

クランごと東支部に移籍するとアラン自ら、報告に来た。

そして受理した途端に、逃げる様に急いでギルドを出て行った。

九鬼が何かしたのは、間違い無いだろう。

老人一人に二十人近い冒険者が尻尾を巻いて逃げ出したのだ。

本当に武王の生まれ変わりでは無いかと、疑い初めたのも無理は無いだろう。

そして、そんな事とは知らない、ギルマス補佐のスキップは護衛の男に、九鬼達を

拘束する様に命じてしまった。


スキップ「・・・・力ずくで連れて行く、拘束しろ」


そう、命令された三人の護衛の内の二人が、直ぐにアイナとエマに手を伸ばして掴

みかかって来たが、結果は周りの予想と全く正反対の物だった。


    九鬼「ふむ・・・小手返し」

アイナ・エマ「「はい!」」


そして、二人の護衛は、若い華奢な女の子に、何をされたかまったく理解出来ない

まま背中から、硬い床に叩きつけられた。

いくら屈強な体を持っていたとしても、全くの無防備な状態で、理解の外から受け

た衝撃は凄まじかった。


護衛「「がはっ!」」


肺の中の空気を、全て吐き出してしまいそうになったが、ここでやっと身体強化の

スキルが仕事をしたようで、何とか気を失われずに済んだのだが。


    九鬼「一教・・・」

アイナ・エマ「「はい!」」


今度は、やっと起き上がった所に腕を掴まれて、うつ伏せのまま床に這いつくばり

利き腕を拘束されて、身動きできなくなった。


  護衛「「ぐぎいぃぃぃぃ」」

スキップ「・・・・・これは・・・・なんだ・・・・・・幻か・・・・・」


その場にいる全員が、今起こっている現象を理解出来ずに硬直した。

デライドもスキップも、そこに居る全ての者が、的外れな考察をしていた。


(魔法か?・・・)

(なんなんだ、このスキルは)

(あの爺さんが手を出したのでは・・・)

(身体強化の別種か?)

(二人が同じレアスキル保持者?あり得ないだろう)


当然、ただの合気道だが、そんな事は誰も判らない。


スキップ「貴様何をした!くそ!おい!爺の腕を一本、切り落としてしまえ!」

  護衛「・・・いや、スキップさん、さすがに剣は・・・・」

スキップ「俺が命令しているんだ!反抗する気か貴様!」

  護衛「しかしですねえ、よその支部でこれは・・・・・・」

スキップ「うるさい!仕事が無くなってもいいのか!」

  護衛「・・・はあ、わかりました・・・・」


このギルマス補佐の男に逆らえば、最低ランクの仕事しか回って来なくなる。

男自身は独身だが、今、拘束されている二人は妻帯者で、一人は、子供が産まれた

ばかりである。

仕事を減らされるのは、困る。

仕方なく、ゆっくり、九鬼の前に移動したのだが・・・・。


九鬼「ほう、素人でもあるまいに、儂に向かって剣を抜く気かのう」

護衛「・・・・・申し訳有りませんでした、武王殿」


護衛の男はそう言うと、九鬼の前に跪いて床に額が着く程、頭をさげた。

正対した途端にぶつけられた異常な程濃密な武威に、ためらわずに降伏したのだ。


(俺なんかが、勝てる相手じゃない、目の前に居るのは、本物の武王だ)


体中が、それこそ頭の先からつま先までもが、危険だと騒いで止まらない。

五感の全てが、恐怖に囚われて機能しない。

許しを受け入れて貰うまでは顔も上げられない。


    九鬼「わかれば良い、アイナ、エマ、二人を離してやれ」

アイナ・エマ「「はぁ~いぃ~」」

    九鬼「不満そうな返事を、するでないわ、まったく」


そして、その漏れ出した武威には、高ランクの冒険者ほど強く反応した。

拘束されていた二人もそれは、同じだ。

だが、逆にいえば、弱い者には全く意味を成さない。

そのため、無反応の者もいるが、それに加えて馬鹿はこうなる。


スキップ「許さない、お前など、どんな手を使っても絶対に後悔させてやる!」

  九鬼「ほう、そうかい、つまり儂の身内に手を出すと言うんじゃの、お前は」

スキップ「当たり前だ!俺には国軍にも伝手が有るんだ!全員牢屋行きだ!」

  九鬼「阿呆か、いったい何の罪に問うつもりじゃ」

スキップ「罪なぞ幾らでも捏造出来るんだ、数え切れない程の罪を負わせてやる」

  九鬼「吐いた言葉の責任は取って貰うぞ、この汚物が」


九鬼は、風の様に一瞬でスキップに近づくと、その右腕を捻り上げ、肩の関節を外

してしまった。


スキップ「ぎゃあ――――――――――――っ」

  九鬼「うるさいのぉ~、先に喋れん様にアゴを外すかのぉ」

スキップ「ぐがぃ%@:&$・✙@・&$%@・・」


両腕を役に立たなくされた為、碌な抵抗も出来ずにアゴを外されたスキップは更に

肘と指を外された。

そして、九鬼が、さあ次は何処を外そうかと、スキップの体を、あちこち見ていた

所に声を掛けられた。


チェスカ「凄いですわね、お仕置きですか?」

  九鬼「おお、チェスカ嬢、お騒がせして申し訳ない」

チェスカ「構いませんわ、私も中央本部のクズ共には、いい加減、うんざりして

     いましたもの」

  九鬼「ほう、こいつだけでは無く、他にも居ると?」

チェスカ「ええ、貴族の三男や四男ばかりで、ごく潰しの無能者ですの」


聞けば今の中央本部は、行き場の無い貴族の息子たちの就職先になっているらしい

のだが、当然の事ながら全員が縁故採用だ。


チェスカ「ギルドマスター補佐に治癒師補佐、何でも補佐補佐補佐、挙句に最近で

     は事務員にまで補佐ですよ」

  九鬼「そりゃまた、随分酷い有様じゃのう」

チェスカ「ええ、スキルも無い、努力もしない、誠実さの欠片も無い寄生虫ですわ」

  九鬼「なるほどのう、で、この有様だと、納得じゃ」

チェスカ「ですから、返品はわたくしにお任せ下さいな」

  九鬼「構わんが、これは儂にしか治せんかも知れんのじゃが」

チェスカ「ええ、分かります、それも含めて交渉いたしますわ」

  九鬼「おお、それは有難い、お願い致します」

チェスカ「ええ、では、直ぐにでも」


これからスキップは、チェスカが用意した馬車に放り込まれて、中央本部に連行さ

れる事になるのだが、出発前に護衛の三人が九鬼の前でこうべを垂れている。


九鬼「では、チェスカ殿の護衛を任せても構わんのだな」

護衛「はい、お任せください」

九鬼「では、頼もうかのう」


そして、チェスカ一行を見送って、ほっとしたギルマスに、九鬼が声を掛けた。


九鬼「クランを作りたいんじゃが、相談に乗って貰えるかのう」


デライドの休息は、まだ当分先の話のようだ。



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