彼岸花
神の愛と人の愛の違いを、柄にもなく、若い頃に議論した記憶があります。私なりの答えは「愛の対象への執着の有無」です。人が誰かを愛すれば、その人が欲しくなり、その人から愛されたいと思い、それを邪魔する人たちは、すべてが敵に見えてしまいます。
そんなことを思い返しながら。愛することを知った少女の、純粋であればあるだけ、追い詰められていくこころを詩にしてみました。
彼岸に咲いた、彼岸花
此岸に咲いた、毒の花
日照り続きの恋が逝き
頭を垂れぬ稲穂には、実らぬ夢の枯れかけて
誰の血潮か、彼岸花
空に凍りて咲き誇る
彼岸望めば、彼岸花
此岸を越ゆる、毒の花
愛しき人を奪われて
恋を争う古の呪いを知るや、おみなごは
毒の花をば摘み歩き
こころの井戸に注ぎ込む
彼岸に誘う、彼岸花
此岸に咲ける、毒の花
誰を殺めてみたいやら、華に群がる黒揚羽
羽音にのせておみなごの
乾いた口に呟ける
花いちもんめ、いと哀し
勝って嬉しい、花いちもんめ
負けて悔しい、花いちもんめ
あなたが欲しい・・・奪いたい
(・・・あなたじゃわからん)
あの子が憎い・・・殺めたい
(・・・あの子じゃわからん)
あたしが怖い・・・
この詩を書きながら、着物を着た少女が、積んだ彼岸花を胸に抱えて、黄昏の野を歩く姿が浮かびました。なんとなく、ホラーぽくなってしまいましたので、「怖いお話」に入れてみようと思っています。
「愛」と「執着」は、結局のところ「幽霊」や「恐怖話」の原点なのですよね。