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放課後

「じゃあね」「部活大変だな、がんばれよ」「おつかれ」「また明日」「あいよー」「何食いに行く」「カラオケ行かね?」

下駄箱で靴を履き替えていると、様々な声が飛び交っている。何人かと挨拶しながら帰る準備を終わらせると

「さて、優人君。このあとどこへまいるかね?」

「家でポチにエサやらなきゃ」

「犬飼ってねーよな?そんなわかりやすい嘘でなぜ逃げられるとお考えか!」

「君のテンションは嫌な予感しかしない。だから帰る。オウチカエル」

「そういうなよ、遊ぼうぜ。いや、遊んで!嫌、構って!!」

「…最後のおかしくない?」

悟と知り合い数ヵ月。一緒に帰り遊ぶこともあるけれど、基本めんどくさいやつなのは諦めたが、いつも以上にめんどくさい日は関わらないことにした。

うん、アレはひどかった。

「何、その遠い目」

思い出に耽っていると、変わらずそこにやつがいた。

「逆になんでまだいんの?」

「いやいや今の流れでいなくなるわけないじゃん?」

残念。

「そうか。たしかにそうだ。そうだった。うん、そうだ。えっと、じゃあ明日」

「いやいやいや、だからそうならないよって話だよね!」

「…残念」

「声出てるよ」

「はぁ。で、じゃあどうするの?」

「なにが?」

本当にどうしてくれよう。

「帰る」

「ごめん、嘘だから。帰らないで。お願いだから。見捨てないで。俺が悪かった。もうしないから、だから俺のこと嫌いにならないでっ!」

縋って来る様が異様に演技がかっているのが、腹立つし、なんか違和感しか感じない。

「…」「…」「…」「…」「…」

下駄箱は人が一杯いるところ。今いる場所を思い出すのが遅かった。

視線が痛い。複数の目がこっちを見ている。黙って静かに見られている。

こっそりとがっつりと指をさしながらこそこそ口許を隠しながら、見られている。

そこでふと悟を見ると「ニヤリ」と言葉の通りの表現が合う表情で手で隠した隙間からこっちを見ていた。

「いろいろ自由だと私は思う!だから仲良くしないとダメだよ?」

「…木島さん、いろいろ自由と言われても」

素敵な笑顔の木島さん。悪意なく本気で言ってる木島さん。屈託のない笑顔が残酷に見える日が来ようとは…。

「ほら、真下君がかわいそうだよ、仲直りしよ!ね?」

「ありがとう、木島さん。でも僕が悪いんだ、ダメだってわかっていたけど自分の気持ちに嘘はつけなくて、でもわかってる。僕じゃダメなんだよ、僕じゃあダメなんだ!」

「…」

「そんなことないよ、大丈夫だよ。ね、そうだよね、松岡君?」

「…」

「木島さんは優しいね。でもその優しさが僕には、ない!だから僕はダメなんだ!木島さん、悟のことお願いします。僕は…帰ってポチのエサを用意しなきゃ!じゃあ、失礼♪」

「え?う、うん。ポチ?」

悟が走り去る前にボソッと「木島さんを一人で帰らすとかしたら、明日ありとあらゆる手を使って後悔させてやるからな?」

そう言って去っていった。

「…」

「えっと、どういうこと?」

「…どういうことだろうね」

木島さん、巻き込んでごめんね。

「…」「…」「…」「…」「…三角」

周りの目が痛い。

誰だ最後のやつ。

「んと、よくわかんないけど、二人が仲が良いのはわかったし、頼まれちゃったし、とりあえず、いこっか?」

木島さん、もう少し周り見て欲しいかなぁ。

「…」

「…ダメ?」

潤んだ目は、ダメ、だわぁ。

「行こうか」

…もうしらん。


下駄箱のあぼ居づらい空気から逃げるように靴を履き替えて校門を出てしばらくは無言で歩いていると

「松岡君は電車通学だよね?」

ちょっと後ろを歩いていた木島さんが聞いてきた。

「そうだね。木島さんは地元だっけ?」

「うん、ずーっとここらへんです!常に自転車移動で完結させてますよ♪えっへん」

「そっか。今日は自転車じゃないんだね。パンクでもしたの?」

「っ!…き、今日は歩いて帰りたい気分だったんだよ、うん!」

うん、忘れてたんだね。ごめんね。

「たまに歩くと新鮮でいいよね。景色が違って見えるというかいつもと違う空気というか楽しい気持ちにさせてくれるというか」

遠い方を見ながら優しさを滲ませて声をかけた。

「…嘘つきました。ごめんなさい。だからそんなに無理して優しくしないで!」

無理でした。

「フォローが下手でごめん」

「謝らないでよ。余計恥ずかしいよ」

「…わざと?」

「ひどいよーいじわるー」

「はは、ごめんごめん。余りに嘘まるだしすぎたから、つい。自転車置いてっても大丈夫なの?」

「んー、ちょっと不満です。まあいいけど。自転車は大丈夫。明日はお母さんに車でお願いするから」

「そっか。そこは歩かないんだね。ふーん」

「松岡君いじわる。そういう人は嫌いです!ふん」

ほっぺを膨らませながらぷいっと音がするような首を振って

拗ねる木島さん。

「嫌われちゃったか、残念。寂しいねー」

虐めるつもりはないけれど、ついからかいたくなってしまうのは男の性ってやつなのだろうか。

「嘘だよ?そんな寂しいとか、ごめんね。そんなつもりじゃなくて。嫌いじゃないよ?嫌いじゃないです…」

「「…」」

うん、なんていうか…何て?

「あー、うん。なんかごめん。冗談はさておきってことで、えっと」

こういうときどうしたら良いかがわからない。人生経験乏しいんだから、しかたないじゃない!

「そ、そうだね。うん。冗談はさておきってことで!」

「「…ははは」」

似たような者同士って感じか。


「チキン野郎っ!」

翌日顔を見た瞬間の悟に言われた一言は、深く考えないことにした。

リアクションもなにもしないのが、正解。

「このチキンめがっ!」

…のはずだが、イラッとしたのは言うまでもなかろう。



帰り道

部活の掛け声

寄り道の話し合い

その日の終わりは様々

明日を楽しむ為に

今日を惜しみ無く過ごす

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