誤算
「やべ、破れた」
回答用紙にペン先が埋まった感じがしてそのまま紙を破ってしまったらしい。
「こんなとこにちっちゃい穴がなぜにある」
小さく独り言を言いながら、これからどうするか考える。
「…」
ベストは新しい紙をもらうのだが、現状それはまずい。
なぜか、これがテストの回答用紙であり、始まってからすでに30分。半分過ぎている以上書き直す時間はない。
そうなるとここでの僕の対応策は、テープとかで補強する、なのだが。
「…景気良くいっちゃってるぅ」
2/3ほど切れている。離れていないが、ギリギリな状態でぺろーんとなっている。
…これ修復無理じゃね?
となると、このまま出す、だが。
「「…」」
担任の呆れ顔がそこにあった。
ダメな感じ?でも新しいのをくれる様子もないし、直せと?
「…いけるか?」
とりあえず破れた箇所を繋げるように置いてみる。そしてそこから考える。今この場で張り付けできるものとは?
「…」
机の中覗いたらカンニング扱いになるんじゃね?いや手だけを突っ込んで目当てのものを静かに出しt
「「…」」
あ、ダメな感じだ。あれ、完全に疑ってる。え、わざとじゃないよ?
「…」
どうしよう、いやどうしようもないじゃん。
時計を見る。もう時間が残っていない。どうする?
その時チャンスが来た!担任が僕の目線につられて時計の方を振り返った。
今だ、そう思い机に手を入れ探し始めるが。
…。
…テープなんか持ってきたことなんかないよ。
チャイムがなり後ろから用紙が回収されていく。
「なんで破れてんの?」
「…」
もっともな意見を言われても返答は出来なかった。机に手を入れた状態のまま、黙っていた。
「では、各自担当の掃除をして気をつけて帰るように。ただし松岡君は職員室にすぐ来い」
担任がそう言って教室を出ていった。
「ですよねー」
トボトボと廊下に向かって歩くため立とうとしたら
「カンニングにしてはあの答案用紙は謎だし」
そう言われた。
「…好きでああなったんじゃない。机に凹みがあってそこにシャーペンが引っ掛かった結果がアレだ」
そうそれだけなのに。
「2枚目もらってダメになった部分だけ書いて、あとで事情伝えればよくね?」
…ん?
「どうした?」
「え、書き直さなきゃ…」
「時間ないんだから、無理だろ」
「…」
職員室でカンニングを疑われてると思って事情を説明すると
「別に疑ってない。ただ二枚目をもらってそれに残りを書けばよかっただろ。本気で何を考えてるのかと思った。バカか?」
悟と同じことを言われたし、悟以上に口悪い。てか持ってきてよ。
「察したなら持ってきてくれてもよかったのでは?」
「なんでそんなことせにゃならん?どうするかは自分で決めろ。他力本願か?舐めてんのか?ガキが。高校生にもなって困ったら周りが助けてるくれるか甘えんな!高校生はもう大人だ、クソガk、大人だ」
…どこをどう言い返してやろうか。
「停学?」
「良い笑顔で聞いてきやがってんじゃねーぞ?んなわけあるか」
「そうだよね、テストの紙破ったならもらえば良いのにそこに頭が回らずくっつけようとしただけだもんね。うんうん、偉い偉い。頑張ったで賞をあげましょう」
担任とは違ういらっとさせてくれるな、悟くんよ。
「ほっとけ」
とりあえず終わったことを考えていたって意味がない。先のことを考えていこう、そう考える。テストが終わった、ということは気楽な日々が帰ってくる、ということだかr
「とはいえ、補習は避けられんやろな。休日出勤、お勤めご苦労様です!」
「え?」
「「…」」
見つめ合う二人。聞こえてはならない単語が聞こえたのだから、声のした方を見るのは間違ってはいないはずだ。
「補sh」「ふざけんな、冗談を言うのも大概にしr」
「回答半分で赤点免れると?」
被せた発言に被せて言うなよ、察しろよ、まじで。
「…」
「現実見ろよ?」
「…いやだ」
紙が破れたことで意識持ってかれてたけど、確かに回答半分ぐらいだったのを思い出したが、考えないようにしていたのに。
「まあしばらく放課後と週末の学校の滞在時間が増えるだけだし、部活動生はみんなやってることだし、これもまた一種の学園生活の醍醐味じゃないか!ばーか」
「ばかはいらなくない?なんで人を傷つけることをわざわざ言うの?ひどいよ、ばかー」
「…いややった行為はばかだし、間違ってないかと?」
「「…」」
ですよねー。
「えー前やったテストの成績が悪かったやつらで今日から2週間補習します。最終日にもう一度テストをしてダメだったらまた2週間、の繰り返しにならないよう励め!めんどくさい」
他のクラスメイトの成績低い輩が自習室という学校にあることを初めてしった教室に集められて、補習初日を迎える。
「「…」」
他のクラスの顔はまったくわからんが、不思議と仲間意識ができるのは、自然の流れだろう。
2週間頑張ってこの教室とおさらばするよう頑張ろう。
「「…」」
うん、頑張ろう。
「なんか、言えよ」
「…いえ、大丈夫です。ごめんなさい」
「目を見て言えよ。言いたいことあるなら、言えよ!」
何故か怒って言ってくる生徒。いろんなクラスの生徒がいるなか同じクラスの生徒もいるわけで。
「…あー、うん。なんかごめんね。逆に、ごめんなさい」
「そういうのやめて。同情はしないで!」
悲しそうな表情の悟君。
「ガチな人には、何も言えないよ。なんかいろいろ言ってごめんね。頑張ろうね」
「そうだよ、がんろうね。二人とも。うん、がんばろう!」
木島さん…いやなんも言えね。
「うん、そうだね」
机の傷が月日を
幾年かの思い出を残し
過去が今なお残る机
明日の自分へ
今日もまた一つ傷を残す