#7
2週間お待ちして申し訳ありません。
「では、依頼契約の方に入らせていただいてよろしいですか」
「はい」
雪子が答えると透は机の上に置かれていた1枚の用紙を私に手渡した。
この度、桜井様の依頼を実行することに致します。依頼を実行するに当たり再度確認していただきたいことがございます。これをお読みした上で下の署名欄サインして下さい。
●依頼実行中は依頼者に進行状況をお知らせする手紙を1週間に1回送っております。この資料も依頼中 終了後も処分せず保管して下さい。破棄した場合は粛正の対象となります。なお、依頼終了後にも依頼 終了をお知らせする手紙をお送りします。これが届いた時点で依頼が終了したと判断してください。こ ちらも上記と同じ扱いとなります。
●復讐はこちらの判断で行いますがその判断となる材料は相手に罪を犯したことに反省のが意思あるか罪を償う意思があるかで判断します。もし、ある場合は犯人に自首を勧めた後は警察などの法の裁きに全て 一任します。なお、そのような場合は復讐を行っていなのでこちらからの資料を処分しても構いませ ん。
この2つが依頼同意書に書かれていた。改めて言われるとやはり気持ちに変な感情が芽生える。
「では、依頼料ですが。今回の依頼にふさわしい額は100万円と私達は見込んでいます。これを1週間以内に指定の振り込み先に振り込んでください。1週間以内に振り込め出来ない場合は依頼拒否と判断いたします」
『100万?』
雪子は心の中で焦った。無論、そんな大金は全財産をはたいても出てこない。そもそも、未成年が出せる額では無いということが常識で分かるはずだ。
「勿論、あなたの疑問も最もですが、そのことに関しては彼から説明がありますので」
透は圭にこの依頼料の件に関する説明をさせた。
「まず、桜井さんは俺達のことを調べるにあたってうちの事務所が法外な依頼料を取るってことは知ってるね?」
「はい、勿論です」
一応、雪子は確認していた。この事務所があり得ない額を要求するとい噂がネット上にたくさん書かれていた。そこには過去に取られた額が書き込まれていたが中には何億という額を要求された例もあった。
「俺はお金というのは命の次に重いものだと思うんだ。君はそう思わないかい?例えば、大卒の若者が1000万というお金を手に入れるのにどれくらい掛かるか知ってるかい?死に物狂いで働いて30後半まで掛かるっていう統計があるんだ。それだけお金を稼ぐのは大変なことなんだ。ましてや、何千、何億となればさらに大変になる。そんなお金でも買えないものがあるのが人の命なんだ。それを奪うってことは言わば全てを失う覚悟でやることなんだ。勿論、人殺しをした人間がそれによって罰せられた時には二度と同じ生活できなくなるのは当然。そういったことを捨てる意思があるから人殺しをすると俺は思ってる。勿論、そんなことを考えずに殺す奴もいるけどね。いわば他人に復讐を依頼するのも同じようなことだと思って依頼料として依頼者が払えるであろう最高額を毎回提示してる訳だ」
それを聞いて雪子は一瞬考え始めた。彼の話を聞いてその理由は一理あると思ったが、あまりにも独善的で恐ろしい思想の内容でもある。でも、ここまで来て引き下がる訳にはいかなかった。でも、100万円はやっぱり無理である。
「そんな桜井さんの為にこんなプランもあります」
そうすると透が同じく机にあったタブレットを取り出し雪子に見せた。
「一括で払えないお客様の為に分割でお支払いするプランもあります。ただ最初に頭金として依頼料の10%、今回ですと10万円を1週間以内に振り込んでいただきます。その後の額を毎月分割して払っていただきます。分割で払う額は依頼終了後にこちらから提示します。これは払い終わるまで私達に振り込みをしていただきます。もし払えなくなっても私達はあらゆる手段を使って残り額を回収にいきます。最終的には力づくの手段になります。出来れば最後の方の事は私達としてもやりたくない方法なです。ですから、必ずあなた1人の力で全額払っていただきます」
「はい、分かりました」
もう、今さら後戻りできないし、その後の自分に訪れる困難も覚悟の上である。雪子はすぐに署名欄にサインをした。さらに依頼料の横に分割払いについて署名欄にもサインした。
「ありがとうございます。では、頭金を1週間以内に振り込み下さい。今日はこれで終了です。速やかにご退所ください、今日はありがとうございました」
そう言って透は雪子を玄関まで付き添い、手を振って見送った。
彼女が事務所を出て10分後、彼らは今後の捜査方法を決めていた。
「ふぅ~、それにしても悠どうするの今回は?」
透はまず所長の悠に尋ねる。
「まず、今回の事件はすでに半年以上経っていること。ただでさえ証拠が掴めないのに尚且つ犯人の可能性の人物が複数いる。今回はかなり時間が掛かると思うわ」
「それは、俺の推測も入ってるのか?」
「愚問ね、私が証拠も見つけて無いのにあなたの推測を推理加えたことが今まであったかしら?でも、九十九君。貴方は彼女の話を聞いた時に疑問に思うとこあったんじゃないかしら?」
悠がニヤケながら圭に質問する。
「ああ、俺が教員の人達に疑惑のある人がいるかと聞いた時に彼女が若干答えるのに時間が掛かった点が俺には少し疑問に思った。最初に透が質問した時は答えるのに時間掛かったけど恐らく自分が想像してなかったのと焦りと緊張からだと俺は考えたけど、俺の質問の時は明らかに何か隠してるような感じがしたんだ。もし、違うなら悠が学生を疑った時みたいに強く主張するはずだと思う。明らかに教員連中にやましいことをしている奴がいるってことだな」
「なるほど、確かに聞いてみるとそうね」
「さずが、圭ちゃん」
透と咲が納得する。続けて透が今回の作戦を考え始める。
「今回は圭の推測からして怪しい人間が多い学園内を重点的に調査する方が良いわね。ただ、どうやって中に入るかね」
「前のポルノ教師の時みたいにこっそり夜中に入れば良いんじゃないか?」
「バカ。前はそんなに風紀の良い学校じゃなかっただろう。だから、警備も緩かったし、何たって3人が学生に変装して侵入できるほどゆるゆるの警備体制じゃないか。今回の学校はそうはいかないんだよ?みんな見て」
そうすると咲は調査対象の学校の住所をスカイマップなるもので調べると学校近くの写真がそのまま現れる。そこには学校の正門前に監視カメラなるものが写っていた。さらにこの学校には警備員を配置しているという情報も出ている。
「これは厳しいわね。これほど警備だと九十九君みたいな怪しい人間はまず入れないわね」
「もしもし、お前の格好の方がよっぽど怪しいと思うが」
「警備員。良い手だわ」
「どうしたの透?」
透は何か作戦を思いついたらしい。
「今回は警備員として学校に潜入する手段でいきましょう。咲、この学校は警備員の求人は出てるの?」
「うん、調べてみる」
「でも、警備員なんてそんな大人数も雇ってくれないだろう。それに女性2人だとなおさら難しいだろう」
「それなら、大丈夫よ。警備員になるのは貴方だけだから。私達は別の方法を考えてるわ」
「結局、また面倒事は俺一人か・・・」
圭がため息をすると咲の大声が事務所に響く。
「ビンゴ!あったよ求人が。しかも驚け2人募集だぞ」
「さらに都合が良いわ」
透は髪を前に掻き分け少し笑みをこぼした。
「詳しくは今夜、クリスの店に行って話しましょう。それと悠あの2人にも連絡しておいて調べてもらいたいこともあるし、今回は彼らの力も必要になるわ」
透の言たいことをすぐに理解して悠は答える。
「分かったわ」
「よっしゃ、こっちも気合入れて調べるぞ」
「咲、1つ良いかしら?さっきの学園の悪霊の件を一応、調べてくれないかしら?」
「いいよ、どうしたの悠ちゃん?何か気になることでも?」
「お前が心霊に興味持つなんて、何かの心変わりか?」
「何でもないわ。ただ、少し事件と関わりがあると思っただけよ。それに貴方だけ良い格好するのが気に入らないだけよ」
「子供か!!お前は」
このセリフに他の2人は笑っていた。




