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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case16 彼女の選択
707/707

#1

お待たせしました。新章の開幕です。

「お待ちいたしておりました。どうぞお入りください」

 透に促されてソファーに座る2人の男女。今回の依頼人は自殺した息子の両親。両親は自殺の原因は息子の働いていた会社のブラック体質が原因ではないかと考え、会社のトップを復讐のターゲットとして彼らに依頼したのである。

「依頼書に書いてあった自殺の証拠というのを拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」

 透はあらかじめ両親から自殺原因の特定に繋がる証拠を持参するように要請した。両親は数枚の紙を差し出した。それは息子から両親に送られたラインや自殺した息子の携帯での会社のやり取りを抜き出した物だった。両親のやり取りでは「辞めたい」や「死にたい」という文言が書かれている。そして、会社のやり取りでは無理な残業や脅迫に近い命令やミスに対して厳しい罵倒が綴られていた。

「確かにこれを見れば会社が息子さんに心理的圧力を掛けていたという風に捉える事は可能ですね。ちなみに警察等に相談はしなかったのでしょうか?」

 悠は紙に目を通した上での本人の意見と共に警察等の行政機関への相談の有無を両親に確認する。両親曰く警察等には相談したが相手にされなかったと悔しい胸の内を漏らす。

「残念ですが、警察は録音等の証拠が無いと動きません。警察も起訴できるという確信もなく動いてしまうのは不起訴になる可能性が高いですから。その反面起訴になれば99.9%で有罪なるという極端な司法制度にこの国はなっています」

「ですが、皆さんなら可能ですよね?」

「ええ、ですが・・・私達も相手の方に落ち度が無いと判断した場合は行為を実施ない事もあります。さらに本人が罪を認めた場合には司法の判断に委ねます。その事はご理解していますね?」

「つまり引き受けていただくという事ですね?」

 悠の問いから両親は彼女たちが依頼を引き受ける意思があると確信して感謝の言葉を告げた。その後は圭からの依頼料の説明が行われる。

「今回は証拠の確保や潜入捜査等の危険が伴う事が多いので依頼料として2000万円を請求します」

 2000万という法外な依頼料に面食らった両親は思わずこんな質問をする。

「それを払えば本当に息子の無念が晴らせるのですか?」

「何を持って息子の無念が晴らされるのかは俺には分かりませんが、少なくともそちらの望むものが叶うように努力します。ただ、その結果が対象を殺す事になるか、警察と司法のお世話になるのかは分かりません」

 両親は最終的に依頼料を払う事を決めて契約をまとめた。

「それで・・・今回はどうする?」

「勿論、圭が潜入捜査してもらうわ」

「やっぱり、俺の役目か・・・」

 当然のように透から告げられて圭は分かってはいたがため息が漏れる。

「それにしても今回もかなり大物ね・・・」

 悠がボソッと呟いた今回のターゲットとなったのはH2コーポレーションの代表である柊宏。このH2コーポレーションはこの20年で大きく業績を伸ばした会社であり金融、医療、貿易、情報、IT産業と多角的に展開し、そのどれもが国内でのトップを走っており、日本だけでなく世界の大企業と勝負できる程の力を持つ会社と知られている。

「けど、この会社ってホワイト企業大賞とか取ってなかったか?」

「あれはネットでも色々と言われているみたいだよ。裏で買収したとか実際は違うとか沢山コメントされ

てた」

 会社の規模だけでなく職員の福利厚生の充実や勤務時間もかなり自由であり、ホワイト企業大賞複数回受賞しており職場環境も申し分ない。しかし、咲の指摘するようにネットではこの評価に対して一部で買収疑惑や実際は違うといった真偽不明の情報が幾つかある。世間ではそれらをデマと決めつけて相手にはしてない為に一般的な認識はすこぶる評判の良い会社である。

「一応、お父さんにも聞いてみたけど代表の柊宏は特に怪しい人物ではなかったみたいよ。ただ、彼の秘書の1人が会う度に代わって長続きしないのだけは気になっていたわ」

 透の父親である冴島久にもどんな人物か聞いたが、特に怪しい印象はなかった。しかし、彼から見ても引っ掛かる部分もあったという回答であった。

「咲はネットでH2カンパニーに関する噂がどういう物があるか調べてちょうだい。圭は入社までの2週間の間にマナー教育と秘書の研修をするわよ」

「何度もやっているのに研修はもう良いだろ・・・・それにマナー教育って何だよ・・・」

「何って貴方のマナー教育よ・・・前回も含めて貴方は色々な人に対して無礼な態度が多過ぎるわ。私もこれまで注意してきたけど改善されないようだから今回から実施することにしたのよ」

 透は圭に対してマナー教育を実施するに至った経緯を説明する。圭本人は不満だったが透の話を横で聞いている悠と咲は納得というような表情で聞いていた。

「安心しなさい。講師は私だから厳しくかつ優しく教えてあげるわ」

「お前のそういう言い方が信用ならないだよな・・・・」

「どういう意味かしら?」

 透が文句の止まらない圭に対してチラリと睨み付けると圭はそれ以上何も言わなかった。

「当然の判断よね・・・九十九君のせいでこれまでどれだけ迷惑を被ったか考えたら・・・」

「貴女も他人事じゃないわよ・・・悠も目に余る態度が大きいから私としては・・・・」

「分かっている・・・気を付けるから・・・」

 悠にも火の粉が飛ぼうとしていたので彼女もこれ以上余計な事は言わなかった。



次回の投稿は5月13日を予定しています。

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