#24
一方、ホテルの方では圭の揺さぶりで男が真実を話した。彼はあくまで命令されて連中と連絡を取っただけである。しかし、そうなると今度は誰が彼に命令して連中と連絡を取らせたのかである。これについては男の口からすぐ暴かれたら。彼に連絡先を教えてたのはこのホテルの警備部門の主任だった。新たな情報を知れた所で透から連絡が入る。それぞれの情報を交換し合う過程で透達が仕入れた情報を聞いて圭は思わず言葉が出なかった。彼にしてもそれは予想外な事実であったからであったからだ。その後、一旦休憩という事で3人は別室に待機した。そこで圭は透からの話をエレンとクランにも話した・・・
「それって本当なんですか・・・ヤマトが内通者なんて・・・」
エレンとクランは信じられないという表情を浮かべていた。まさか内通者が自分達のすぐ側にいた人間だと知ったらショックは大きい。
「いや・・・確定ではない」
「えっ!?」
「あくまでもヤマトも一介の連絡役に過ぎなかったかもしれない。事は単純な話じゃないさ」
圭は現段階でヤマトが首謀者と決めるのは早いと答える。
「とはいえ・・・2人は悪いが現状・・・アイツが怪しいのは紛れもない事実だ」
圭の重い言葉に2人の表情は曇る。本音としてはヤマトは内通者ではないと否定したい彼らではあるが面識の無い人間から出た名前に連絡を取っていたログの記録を辿るとヤマトの携帯電話にたどり着いたという事実・・・反論出来ない事実が並べられてしまった今の状況では何も言えない・・・
「とりあえず俺達の次の仕事はあの男に連中の連絡先を教えた警備部門の主任さんとお話だ」
2人の表情はまだ納得していないという感じではあったがこれ以上彼女達を納得させるのも時間の無駄だと考えた圭は次の仕事に移ろうとする。
「2人はどうする?」
圭は気落ちする2人に声を掛ける。
「行きます・・・そうでなければここに来た意味はありませんから!!」
エレンは圭に問われるとあっという間にいつもの調子を取り戻す。空元気で強がっている素振りではないと感じた圭は同行を許可した。
「すいません・・・僕は」
一方のクランの方はまだ整理が出来ていなと告げた。別にここでエレンのような態度が出来るのが正しいという訳ではない。彼のようにこの短時間で立ち直れないのが普通なのかもしれない。
「分かった・・・ただ、この場所から離れない方が良い。先の悠達の所もそうだが相手が見えないから何されるか分からないからな」
「分かりました」
クランを部屋に残して2人は先程居た場所に戻る。
「大丈夫なのか?」
道中圭はエレンに声を掛ける。
「心配ですか?大丈夫です・・・ヤマト程ではありませんが彼も私の従者です。並の警備員程度であれば敵ではありません」
エレンは心配ないという態度だが圭は少しだけ違う。彼が不安視しているのはクランの心持である。通常時であればエレンの言う通りかもしれないが今の状況ではそれが当てはまるかと言えば違うだろう。
「それにもしもの事が合ってもちゃんと手は打ってあります」
エレンは何故か少し笑みを浮かべながら答えた。この笑みが何を意味しているのか圭には分からなかった。単純に問題ありませんという意味では無いのは確かである。
部屋に到着するとそこには既にこのホテルの警備員主任が座っていた。これまでの2人とは違って落ち着いた姿勢で待っていた。
「すいませんね。お忙しい中で時間を取っていただいて」
「そう思うのであれば出来れば早く終わらせていただければと思います」
少し挑発的な態度を相手が取ってきた圭はまったく動じる素振りはない。
「そうですね・・・では、単刀直入に聞きます。貴方は内通者ですね」
「何の事でしょうか?そもそも主語が見えないので何の事かさっぱり・・・・」
「これは失礼・・・実は僕達はここ最近同社で起きているパーティーやレセプション等で起きた妨害の犯人を探しているんです」
「その内通者が私だと・・・フン・・・随分と面白い事を言うのだね君は・・・何か証拠があるのかね?」
警備主任はまったく圭の問いかけに動じる素振りは見せないで冷静に答える。
「そういえば、以前にここで行われたレセプションで食中毒事件が起きましたが、大丈夫でしたか?」
「どういう意味だ?まさか、その事件を私が引き起こしたとでも言いたいのか?」
「いいえ・・・そういえばあの時に外部の警備会社を雇ったらしいですね」
「ああ・・・そうだったな」
この話題を振ると警備主任の表情に少しばかり冷静さを失ったように見えた。
「実は僕の仲間の捜査でこの警備会社はダミー会社だったようです」
「どういう意味だ?」
「実はこの警備会社はダミーで実は裏社会の組織だったみたいです」
圭のこのセリフに警備主任は何も発さずに険しい表情をした。
「プロから見て何か彼らに違和感を感じませんでしたか?」
「いや・・・そんな事は・・・」
警備主任は苦し紛れに発する言葉・・・明らかに最初の冷静さは失われてきていた。
「見抜けないなんて変な話ですよね。分かってたんですよね?アイツらが闇社会のクズ共だって・・・」
「くっ!?・・・」
「まあ、それに気付けなかったのは良いですけ、問題は誰がこいつ等を派遣するように言ったのか・・・」
「俺がそいつ等を呼んだというのか?」
「いいえ、それは別の人間がしたと認めています」
「なら・・・関係は・・・」
「ただ、そいつはある人の指示でと言われています・・・・それが貴方なんですよ!!」
圭に連絡役に指示を出した人物と言われた警備主任さらに動揺する。動揺する彼の様子を圭は冷静に続ける。
「警備主任自らレセプションをぶち壊す様な真似するなんて・・・これが会社の上の人間にバレたらどうなるのかな・・・?クビや左遷で済めば良いけど・・・懲戒免職なんてされたらアンタ・・・もう終わりだぜ?今の日本に会社内部に迷惑かけるような妨害したクズなんて誰が雇うんだろうな・・」
圭の尋問に近い聴取のやり方につい警備主任は陥落し、彼の知っている事実を述べる。
「確かにあの下っ端に連絡先を寄越した私だ。だが・・・その連絡相手がどんな連中なのかは本当に知らなかった。あくまで上の命令で・・・」
警備主任は連絡先の相手は上から送られた物で自分はあくまで指示通りに動いたに過ぎないと言った。
「その上って言うのは誰の事だ・・・」
「ウチの会社の警備部の人間だ・・・誰だかは知らないが奴らの中に裏切り者がいる」
次回の投稿は3月13日を予定しています。




