#5
今週は初の2話連続投稿です。なお、来週の投稿はお休みさせていただきます
5月17日(日)
遂にこの日が来た。雪子はクローゼットから今日着ていく服を選んでいた。最初は制服で行こうと思っていたが彼女の所属する部活は日曜に活動は無い。それなのに日曜に制服で出かけては家族に返って怪しまれると思った。そこで、家族には友達と遊びに行くという事にしておいた。2日前に告げると母は「分かったと」だけ答えた。今日着ていく服は春柄の襟付きシャツに黒のミニのフレアスカートを選んだ。これは彼女のお気に入りの服で普段友達と東京の中心に行く時しか着ないようにしている。スマートフォンの時間を確認して丁度出かける時間なので鞄を肩にかけ1階に降りた台所には母がいた。一応、「行ってきます」と言ったが何も返事は無かった。もう、半年以上続いてることなので慣れていたがやっぱり寂しいものである。
地下鉄を乗り継ぎ、12時55分に雪子は待ち合わせ場所の映画館に到着した。このは映画館は新宿歌舞伎町の治安改善や若者のための新たなスポットとなるべくオープンした場所で建物の上には人気怪獣映画の等身大の頭部が置かれている。雪子は館内に入り空いている椅子に座った丁度次の映画が始まる頃なのか皆シアターの方に進んでいく。
「どこにいるんだろう?」
こんな広い映画館、それに雪子以外にもたくさんの女性がいる中で彼らがどうやって接触してくるのだろうか。そう考えると13時を迎えていた。すると彼女のそばから
「桜井雪子さまですね?」
「ハイ」
いきなり耳元で名前が呼ばれ「ハイ」という声と同時に立ち上がった。振り返るとそこには年齢は彼女より若干上に見えるが未成年の女性が立っていた。オレンジの髪に伊達メガネ格好も黒のジャケットにダメージジーンズという出で立ちだった。
「お待ちしておりました。こちらへ」
そう言われて雪子は女性と共に映画館の外に出る『やっぱりこんなとこで打ち合わせな訳ないよね』
女性に付いて行くと雪子をタクシーの下へ連れて行く。
「これに乗るんですか?」
「はい」
そう言われ雪子は女性と共にタクシー乗り込んだ。タクシーを走らせて数分後、都市部から外れ小さなビルや住宅が立ち並ぶあたりにつれて来られた。
「着きました。ここをまっすぐ行って、古いポストがあります。それを右に行くとこの名前の建物がありますそこに行ってください」
「はい、あっ、そのお金は?」
「タクシー代は結構です。あなたには今から大事なことがありますから」
そう言って雪子は案内役と思われる女性と別れ、言われた通り進んでいく。雪子に言われた通り進んで行くとひときわ新しい建物が右手に現れた。他の建物と異色を放つ建物に近づくと紙に記されている通り『マジックキャッツ』と書かれている。
『まさか、ここが・・・』
雪子は一瞬考えながらもインターホンを押すと
「お待ちしてました。今開けます」という女性の声が聞こえた。その言葉の後すぐドアが開き1人の女性が現れる。
『まただ』雪子はそう思った。しっかりとした佇まいまいだが見た目は彼女より1つ上くらいの女性であった。
「どうぞ、中へ」
「はい」
女性に言われ雪子は中に入る。新しい建物らしく中は非常に綺麗であった。職員の椅子と机、何故か大きなテレビデッキ(しかも、かなり高いやつ)それに46インチの大型テレビに以前有名になった高級家具店のソファーが隣にあった。雪子はチラッと部屋内部を見た後彼女に指示され応接用のソファーに座らされた。それは先ほどのと違うが十分応接用として機能するものだった。小さな机の上には既に紅茶が用意されていた。反対側にも3つ用意されているが2つは紅茶だが1つは普通の日本茶だった。
「じゃあ、始めましょうか」
『始まる』そう思ったが向うのソファーにはあと1人余裕がある。
「圭、始めるわよ。それに咲、仕事中よテレビは消しておきなさい」
「へーい」少し分が悪いのか不貞腐れるような返事でテレビを消した。そして、圭と呼ばれた青年が空いているソファーに腰掛ける。
「はじめまして、桜井さん」
そう言うと少女は名刺を雪子に手渡した。彼女の衣装は白の半袖シャツにハーフパンツにスニーカーという姿だった。
『黒猫探偵社 会計 冴島透』
「はぁ」
『この名前どこかで』雪子は疑問に思い彼女に尋ねる。
「あの冴島って、あの冴島グループのことですよね?」
「ええ、まあ・・・」
そう言われると彼女は少し嫌な顔をされた。冴島グループは今や日本を代表する会社であり。彼らの手掛ける冴島リゾートは今までのホテル会社が取ってきた手法と違う斬新なビジネススタイルで一気に一流ホテルグループとなった。そのご子息がこんなとこで探偵?雪子はいっそ不思議な思いをした。すると横の青年がニタニタしながらなにか呟いた。
「流石は有名人、親不孝したとは言えやっぱり・・・・」
青年が次のセリフを言おうとした瞬間机の下から凄い音がした。よく見ると先ほどの女性が彼の足をおもいっきり踏んでいた。
「また、殴られたいの?」
「いや、すいませんでした」
圭は痛みをこらえながら答えた。すると透は足を離した。
「ごめんなさいね、次に私の左隣にいるのがこの事務所の所長の七宮悠さん」
そう言われると悠と呼ばれた彼女は軽く会釈した。雪子はつられて頭を下げた。彼女の服装が1番は不気味だった。黒い上着に制服に似たリボンをあしらった服を着て下は黒のスカートに二―ソックス、それにブーツ。そして、人形のような白い肌と黒い髪。この人がもしかしてと私は思った。
「そして、そこにいる残念男が副所長の九十九圭さんです」
「どうも、そこの残念男です」
彼は痛みが引いたのか私に頭を下げて言った。彼の服装は白にプリントが入ったシャツに長ズボンもスニーカーそして上に羽織っていたシャツを腰に巻いていた。
「そして、もう1人あそこにいるのが若葉咲さんです」
そう呼ばれると少女は私に「シクヨロ」と手を上げて声を掛けた。
さて自己紹介も終わり透は本題に入ろうとする。