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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case11 魔術師の館
538/677

#21

「それは・・・」

 倉田の質問に悠も圭もすぐに答えを出せないでいた。現状ではどんな回答をしても倉田を納得させる事は出来ないからである。しかし、黙ったままではこちらの状況は悪くなるばかりである。

「待ちなさい倉田君」

「またですか牧さん・・・」

 また牧が間に入った事に少し不満そうな倉田。

「君たちに事件解決を託しているからあまり私達から偉そうな事は言えない・・・だけど、倉田君の言っている事は皆で共有するべき情報ではないのかな?」

 牧は悠達の立場を理解しながらも情報共有として必要な情報ではないのかと告げる。彼の意見は正しい・・・何も間違っていない。それは2人も分かっている。しかし、それで2人が話すのを躊躇った理由を彼には想像が付かないだろう。

「余計な不信感を与えないため・・・それが僕たちがこの事を話すのを躊躇った理由です」

 状況が打開できない事に限界を悟った圭はついに自分たちが黙った理由を答えた。

「つまりだ・・・・コイツらは俺達を信用してないって事だ!!皆さんそれでこの言い分が信じられるか?」

 勝敗は明白であった。悠達以外は倉田の意見に同調した。その後、北島はロープで手を縛れれて2階の小部屋にまるで囚人のように押し込まれた。

「取り敢えずこれで安心して寝られるな」

 犯人を監禁した事で安心して高笑いしながら1階に降りる倉田に対して気分の良くない明日香は声を上げる。

「こんな監禁みたいな事して良いと思ってるんですか?倉田さんのやってるのは明らかに・・・」

「間宮さんはアイツらの味方なのかい?偉そうな事を言っておいて結局は犯人を庇うという馬鹿な真似をした奴らを信用しているのかい?」

「それは・・・」

 明日香は言えなかった本当はこんな男ではなく悠達の方の意見に賛同していると。しかし、今の空気はそれを言わせてもらえる雰囲気ではなかった。

「別に俺達もあの子をずっと監禁するつもりは無い。助けが来ればあの子も部屋から出すし、それに3食はちゃんと与える。ここから出た後の処理は警察に任せるがな」

「そんな・・・・」

「これで安心しただろう。もし、心配ならオレの部屋で一緒に?」

「やめてください!!」

 明日香は自分の肩に手を回して誘ってくる倉田の手を払い除けて叫んだ。

「おっとすまない」

「私も取り乱してすいません。私はこれで・・・」

 明日香は取り乱し大きな声を出した事を謝罪して倉田から離れようとした。

「1つ俺からのアドバイスだ。今後付き合う友人はしっかり考えた方が良い。あいう連中はしっかり縁を切った方が良い」

「お気遣いありがとうございます」



















「私の考えが甘かった・・・・」

 一方のこの状況に透は自身の失態が原因だと自身の行いを反省していた。

「そんな・・・透ちゃんは悪くないよ」

 咲は透の行いは悪くないと慰める。

「咲の言う通りよ。倉田があそこまで行動をするのは誰にも読めないわ・・・あんまり自分を責めないで」

 悠も咲と同じように透を諫める。

「ありがとう・・・」

 透も2人から言葉をもらって何時までも落ち込んでは入られないと立ち直る。

「改めて悠も圭も彼女が犯人じゃないと思ってるの?」

「ええ、あれだけですべての事件の犯人にするのは無理よ。そもそも彼女には動機も無いし・・・」

「そうね・・・・なら犯人は別に?」

「そう・・・今、安全だとあぐらをかいてる連中の中に居るわ」

 悠は北島は犯人でないとし、残った連中に犯人が居ると答える。

「ねぇ、圭ちゃんは?」

「トイレとか言って出て行ったわ」

 そんな時にドアが開いて明日香が入って来る。

「どうしたの明日香ちゃん?」

 3人は明日香の様子を見て違和感を覚えた。酷く落ち込んで友人である筈の3人の顔を一向に見ようともしない。

「明日香・・・何かあったの?」

 透が問いかけると明日香は下を向いたまま目に涙を溜めて溢れ出しそうであった。

「私・・・私・・・」

「ど!?・・・どうしたの?」

 明日香の突然の涙に同様する咲。

「兎に角、落ち着いて!!話はその後で良いわよ」

 透はまずは明日香を落ち着かせてその後に話を聞く事にした。

「大丈夫です・・・」

 明日香はまだ涙は流しているが気は落ち着いたので自身の落ち込んでいる理由を話した。

「酷い・・・酷すぎるよ」

「最低ね・・・」

 明日香が倉田から受けた内容を聞いて苦言を漏らす。一方の悠は何も言わなかったが表情はかなり怒りに満ちていた。

「悠や圭、透、咲ちゃん・・・・皆の事を悪く言われたのも悔しかった・・・でも!!・・・それ以上に自分の保身の為に自分の心に嘘を付いた事が・・・許せなくて」

 明日香の涙は友人を悪く言われた事よりも自分が嘘を付いてしまった事の罪悪感と悔しさが理由だった。彼女の本音を知った透と咲は何も掛ける言葉が見つからない。

「明日香・・・・」

 ここまで黙って聞いていた悠がついに口を開いて明日香に近付く。

「ありがとう明日香・・・・貴女が私達の事を大切にしてくれてる事に私は嬉しい。それに私は貴女のした事を恨んでも怒ってもいないわ。自分のした事をしっかり反省出来る人に悪い人はいないわ。私は貴女が友達になってくて本当に嬉しいわ。だから・・・もう泣かないで」

 悠は優しく語りかけて明日香の手を握った。彼女の温かい優しさに明日香は思わず彼女の胸に飛び込んで涙を流した。

次回の投稿は10月19日を予定しています

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