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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case11 魔術師の館
521/675

#4

「あっ!三田さん」

 外に置いてある機材車の近くに来た圭は三田を発見した。彼は今回の撮影のカメラマンの1人である。業界で10年以上働いているが典型的な指示待ち人間であり、指示された事以外はやらないせいで気が利かないという事で評価はイマイチであるがディレクターである近田の大学の後輩である事から彼がディレクターをしている作品で起用されている。


 圭は三田に声を掛けるが彼は圭の顔を見ただけで声を掛ける事もなかった。

「あのう・・・」

 場に困った圭はもう1言三田に声を掛ける。

「閉めてくれる?」

 ようやく口を開いてくれた三田は彼は自身が持っていた車の鍵を圭に渡してそのまま逃げるように去って行った。

「な・・何なんだあの人?」

 一連の三田の行動に不信感を感じながら圭はボックスを置いて屋敷の中に戻った。

 











 休憩時間も終わり次の撮影が始まる。黒猫探偵の4人はそれぞれの仕事に就いていた。悠は監督である柴田のアシスタント。透はタイムキーパー。咲は現在はこの場所に居ないが特殊効果やCG等の映像処理のアドバイスとそれぞれの能力に合わせたものであった。一方のアシスタントと言うなの雑用係の圭は今度の仕事は照明係であった。幾ら器用な圭とはいえ未経験の専門的な事をやらされるのは正直荷が重い。先程は死体のエキストラ、今度は照明係・・・雑用と言えど度が過ぎている。

『重い・・・これは死ぬ・・・』

 圭は重い照明を高い位置で持っている状況に腕が限界近くになっていた。しかし、最初に近田からトッチたら罰金だと脅されているので絶対に落とせないのである。彼としては早く撮影が終わる事を祈って耐えていた。

「カット!!」

「チェックしますのでしばらくお待ち下さい。それまで休憩してもらって構いません」

 監督である柴田のカット!!という言葉の後に悠が撮影内容のチェックを行うのでそれまで休憩してくださいと指示する。圭も悠の声を聞いて助かったと思いながら照明を床に置く。

「お疲れ圭ちゃん」

 ひと息付く圭の横から咲が声を掛ける。

「危なく腕がもげる所だったぜ」

 照明の重さに愚痴を言いながら咲と談笑する。

「明日香ちゃん、舞衣子ちゃん」

 撮影された映像を確認し終えた監督の柴田が明日香と北島を呼ぶ。

「まずは明日香ちゃんなんだけどこの場面はセリフの間にワンテンポ空けるようにしてくれるかしら?」

「はい、わかりました」

「舞衣子ちゃんはこの場面は太陽の方を向く時は上目使いよりも見つめる形でしてもらえるかしら?」

「分かりました」

 的確な演技指導を行う監督の柴田だが実は今回の作品が彼女自身監督は初である。

 

 これまで脚本家として舞台やドラマや映画で多くの作品を世に送り出しておりどれも高い評価を得ている日本を代表する脚本家である。脚本家ながら実際の撮影の現場を見ることも多いので演技指導を行う事もこれまでもあった。そんな彼女の経歴は波乱万丈であった。かつては地方のしがないアナウンサーであったが1年発起で脚本家の勉強をして今の地位があるのである。女性の少ない業界だけあって不遇な時期もあったがそれを乗り越えて掴んだ現在の地位は世の女性達の憧れでもある。


「太陽は舞衣子ちゃんに見つめられるけど、そこは相手にしないで冷たい態度で」

「了解です」

 太陽と呼ばれたこの男優は共演者の1人である倉田太陽くらたたいようである。若い頃からドラマで主役を勤めてきたがここ最近は2番手、3番手という役柄が多く世間から落ちぶれているという評価されている事に本人も相当気にしている。しかし、こうなってしまったのにも本人に原因があり。彼は女癖が悪く、これまでも週刊誌やワイドショーを賑わせてきた。それが原因で彼と共演する女優が少なくなり、ある意味お騒がせ俳優とかしている。

「後は・・・よう子・・・!よう子はどこ?」

 柴田は次に広川に対して演技指導を行おうとしたが辺りを見渡しても彼女の姿が見えない。周りのスタッフに聞いても皆分からず戸惑っていた。

「ここにいますけど?」

 遠くの方から声がする方に全員の視線が集める方向には広川本人が何喰わぬく顔をして立っていた。

「何を勝手な行動をしているの!!」

 何も告げずに勝手に現場を離れていた広川に対して柴田はかなりお怒りであり現場の雰囲気は緊張が張り詰める。

「お手洗いですけど?何か問題ですか?」

「事前に言ってもらわないと困るわ!!貴女はこれまで何度この現場に居たのに分からないの?」

 まったく悪びれる様子を見せない広川の様子に柴田の語気がさらに強まる。

「申し訳ありませんでした。でも、私の演技は完璧ですから言うことは何もありませんよね?」

 強気な態度を変えない広川とそれを厳しい表情で睨み付ける2人は一瞬触発に近い状態であった。

「監督ここは・・・」

 悠はこの状況を立て直すべく柴田に耳打ちして一旦お開きにするよう促した。

「一旦解散します。次の撮影は1時間後に行います」

 柴田は悠の意見を聞き、一旦場を収めるべく撮影を打ち切った。柴田の発言を聞いて現場に居る演者やスタッフを含めてホッと胸を撫で下ろす。一方の広川は撮影打ち切りの声を聞いて誰に何も言うことなくその場をスタスタと歩いて消えて行った。

「クソが!!」

 圭の近くにいた近田が周りに聞こえない声で広川の態度に苦言を漏らした。

次回の投稿は7月15日を予定しています。

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