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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case10 姿なき依頼者
503/675

#173

 ついに若葉の口から家に帰りたくないという言葉だけでなく父親から苛められているという言葉まで飛び出した。

「お父さんに苛められてるってどういうこと?」

 若葉の言葉の真意を聞くために透が質問する。

「お父さんは・・・私に暴力を振るうんだ。機嫌が悪いといつも蹴られ・・殴られ・・・」

 若葉は眼に涙を浮かべ言葉を詰まらせながら自分が受けてきた事を話した。彼女の辛さは3人にも十分伝わった。

「そうだったの・・・・」

「それだけじゃないでしょう?貴女の格好や匂い・・・それに今回の風邪も・・・」

 悠はそれだけでなくみすぼらしい格好や臭い匂い・・・そして今回の風邪で倒れた理由も父親からの苛めが原因ではないかと若葉に訊ねた。

「うん」

 悠の予想通りの回答が若葉から戻ってくる。これで完全に原田の所業が明らかになった。3人にとっては願ったり叶ったりの展開になったが、急な若葉の発言に今はそんな事を思える余裕は無かった。

「ちょっと透・・・」

 圭は透に小さな声で話しかける。

「どうするんだよ?」

「どうするって・・・・簡単に決められないわ」

 圭の言葉に対して戸惑いを見せる透。彼女も若葉の思いを受け入れるべきか悩んでいた。

「透はどうしたいの?」

 悩んでいる透に対して悠は透自身はどうしたいかと訊ねた。

「私は若葉の望を聞き入れてあげたいと思ってる」

 透としては若葉の思いを受け入れてあげたいと思っているようである。

「そう・・・透ならそういうと思ってたわ。ねぇ九十九君?」

「俺は2人がどう思うが若葉をお父さんの元に帰すのは反対だったけどな」

 圭は自分は最初から若葉を帰すつもりは無いと答えた。

「とはいえ、若葉の父親が何も行動を起こさないとは限らないわ」

 悠は若葉を事務所に留まらせるのは良いがその際に若葉の父親である原田が何も行動を起こさないとは限らないと忠告した。

「そこは分かってるわ。もしかするといずれ警察に届け出を出す可能性はあるわ」

「けどよ若葉を普段からパシリみたいに使う奴だからそんなに気にしていないかもしれないぜ」

 2人が危険性を考えている中で圭はそこまで気にしていなかった。とはいえ、圭が言っている内容も理解出来る。

「ねぇ、どうしたの?」

 自分を放って置かれていると察した若葉が3人に声を掛ける。

「ごめんなさい・・・良いわよウチに気が済むまで居ても」

「ありがとう」

 透が許可してくれた事に若葉は嬉しさのあまり感謝の言葉と共に彼女に抱きついた。

「ちょっと・・・若葉」

「あっ、ごめんなさい」

 透は若葉の抱き付きが思いの他に強かったのか痛いというような表現をすると若葉は謝罪した。2人の表情は明るく周りから見れば友達というよりも姉妹に見える程の微笑ましい光景であった。

「これは俺達が入る幕が無いな」

「そうね。まるで本当の姉妹みたいね」

 2人も透と若葉が姉妹のような関係に見えていた。

「それじゃあ若葉の部屋を用意しないとね」

「私に部屋をくれるの?」

「勿論よ。いつまでも私の部屋で寝かせる訳にはいかないでしょう」

「ありがとう」

 若葉は嬉しさのあまりに透を抱き締める力が入ってしまい、透から注意を受けた。



 その後、透と悠で事務所の2階にある空き部屋の掃除を開始した。

「九十九君は手伝わさせなくて良かったの?」

 悠は掃除をするメンバーに圭が入っていない事に透に聞いた。

「圭が掃除なんて命令したってやらないでしょう?」

「まあそうでしょうね」

 透は圭が命令しても掃除なんてやらないと答えると悠も納得していた。ちなみに圭は1階で若葉の話し相手になっていた。

「それよりもどうするのこの先?」

 悠は若葉を家で預かると決まったがこれから先はどうするのかと訊ねた。

「圭はああ言ってたけど若葉の父親が黙っているとは思えないわ。流石に2、3日以上も娘が帰って来ないと普通にいられないでしょう」

 透は若葉の父親である原田が黙っている訳ではないと思っており、それは悠も同じである。

「なら早いところ若葉に親権喪失の手続きをさせた方が良いじゃないの?」

「それは分かってる。だけど、少し待ってくれるかしら?」

 透はいずれ自分が時が来たら話すから待ってくれと悠に伝えると納得してくれた。










「名前なんて言うの?」

 一方の1階に残った圭は若葉から質問を受けていた。

「俺の名前は九十九圭だ」

「つくもけい?なんか難しそうな名前・・・・」

 圭の名前を聞いた若葉は難しそうだと感想を述べた。

「ははは・・・言われてみればそうか・・・」

 若葉の感想を聞いて圭は思わず苦笑いをする。

「だから透は圭って呼んでるの?」

「そういうこと」

 その後も2人で話を続けて会話も弾んで良い雰囲気になっていた。

「あのさあ若葉?」

「何?」

「若葉はこの家に住むつもりか?」

「うん」

「ずっとか?」

「うん」

 圭が幾つかここに住む事についての質問をすると若葉は間髪入れずに「うん」と答える。

「お父さんにさよならは言わなくて良いのか?」

次回の投稿は2月21日を予定しています。

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